第9話




彼女の唇に吸い込まれる僕。


彼女の唇までの距離数ミリ。



ハイ、一旦停止。





僕の中のセオリー。


【男は女性をエスコートしてなんぼ!】w



そこはほらっ、朝からエロ一色な僕でも、セオリーを貫くでしょっ。



少し焦らされた彼女の唇が、ピクンと震える。



……君はどう出る?




交接したいといきなり宣言しちゃう君を少し虐めたくなったのはホント。


Mに見られるけど、実はSな僕。


その口から卑猥な言葉とかガンガン言わせちゃいたい!w


言わないとオアズケしちゃうよ!www





そんな状況に痺れをきらせた彼女が、僕の背中に回している手に少しだけ力を込めた。



それでもその距離を縮めない僕。


いくら朝からムラムラエロ全力投球な僕でも、譲らないよ?




『どうしたの?』


鬼畜な言葉を吐いた僕への彼女の反応は如何に?





『……シテ下サイ。』


意外に素直。w



『何を?』


更に焦らす。


虐める。


ちゃんと言うまで焦らしまくるよ?www





『私ノ唇ニ……触レテ下サイ。』


『触れて欲しいの? じゃあ、触れてごらん?』




彼女が僕の唇を捕らえた。


……よくできました。




僕は彼女の唇に、彼女へのご褒美とばかりに、何度も触れる優しいキスを落とす。


聴覚にも感じさせるように、わざと音が出るように何度も何度も。




僕は少し顔を離して彼女の顔を見る。






目がトロォンて!


潤ませながら、トロォンてなったその目と、高揚した頬が僕を煽る。





神様、もう辛抱堪りませんっ!


いいですか!?


もう頂きますでいいですか!?


彼女の白いふわふわのワンピースをはだけさせて、全身舐め回して、バッコンバッコン致したいですっ!




更に深い口付けをしようと顔を近づけたところで、僕の記憶が途絶えた……。







■■■■■






気がつくと病室。




何よこのよくあるパターン!


いい所で目覚めるとか、小説あるある的なオチッ!


これからあの可愛い彼女を身ぐるみ剥がして、全身舐め回して……




『!? 若造! 目ぇ覚めたか!? 3日も眠ったまんまで心配したぞっ!』



僕の頭のエロ妄想を遮断して、オッチャンの声が響く。



『3日?』



ほんの数時間の出来事が、目が覚めたら3日?



現実と僕の空想世界には、時間軸のズレがあるらしい。




『若造には悪かったがな、携帯で会社の番号探して状況説明しといた。』



すまなそうな顔をしながら、頭をポリポリかくオッチャン。



『わざわざありがとうございます。 寧ろ連絡してもらって良かったです。 オッチャンには、ホント迷惑かけてすみません。』



『なぁに! 困った時はお互い様だ! ガハハハハ!』


店によく来る、身元も知らない僕にこんなにも優しくしてくれるのは、オッチャンが博愛この上ないからだろう。


ホント、オッチャンCOOLだぜっ!






■■■■■






オッチャンが仕事に戻り、病室には僕1人。



彼女の事を思い出していた。






僕が造り出した世界って、さっきは高熱で意識飛んで行けたんだよね?


また行くにはどうしたらよいものか……。


流石に毎回高熱は勘弁していただきたし。w



彼女虐めてないで、その辺の重要事項確認が先だったと反省する僕。




『また彼女に逢いたいなぁ。』



『……ホントデスカ!?』




呟いた僕の言葉に、頭の中で返事が返ってきた。



『さっきの彼女? ごめん……名前まだ聞いてなかった。』


『【クロエ】デス 。』


『クロエちゃん?』


『違イマス。【クロエ】デス。』


『いや、だからクロエちゃ……』


『【クロエ】デス!』




……【ちゃん】は付けるなと。w



『クロエ?』


『……ハイ。』



ちょっと僕、年甲斐もなくキュンッてなったんだけど!


可愛いなぁ~。



きっとクロエは伏せ目がちに、照れながら『ハイ。』とか返事しちゃったに違いない。



『見エルノデスカ!?』



ハイ、図星www





『今の僕には、君……クロエは見えないよ。僕の勘。』


『……。』



頬っぺたプゥ~のパターンだこれ。w




と、それはさておき、


『クロエに聞きたい事があるんだけどさ、さっきの僕の世界って、どうやったら行けるの?』


『私ニハワカリマセン。 タダ、前ニ会ッタ人間ハ【変性意識】ガ何ダカ……言ッテイマシタ。』




変性意識?


トランス状態を作るって事か。



だとすると、【寝入りばな】なら……。





『何となくわかった気がする。 ありがとうクロエ。』


『私ニハ、サッパリデシタガ……【変性意識】トイウ言葉ダケデ理解シタノデスカ? 貴方ハ、ヤハリ成ルベクシテ【ダイクロイックアイ】ニナッタ方ナノデスネ。』


『クロエさ……。』


『ハイ?』


『僕は貴方じゃなくて、【櫂(かい)】って名前があるんだけど?』


『……櫂サン。』


『違う。 櫂。』


『櫂サン。』


『ち・が・う。 櫂。』


『櫂。』


『よくできました。w』




僕はぶっちゃけ、可愛いクロエに愛しさを感じ始めていた。



いきなり交接したいとぶちかますクロエは、【僕】が好きなのか【ダイクロイックアイの僕】が好きなのかは、まだわからないけれど。




























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