第19話 危険な社交界

音楽隊の代役も無事終わり、会場内を見渡すけれどミリィもお兄様達も姿が見られません。

お兄様はおそらく生徒会のお仕事があるんでしょう、よし、やはりココリナちゃんのいる控え室に行こう。もしかしたらミリィもいるかもしれないし。


向かう先も決まり、ココリナちゃんの様子を伺うべく控え室に向かおうとしたとき、私の前に突然2人組の男性生徒囲まれてしまいました。


「お嬢さん、宜ければ私達と食事をしながらお話でもしませんか?」

ん〜、ナンパさんかなぁ、私より可愛い子なんてたくさんおられるんですが。


「申し訳ございません、少し疲れてしまったので控え室へ戻るところなんです。」

当たり障りのないよう、言葉を選び丁重にお断りします。


「それでしたら私達がご案内しますのでどうぞこちらに。」

いやいや、一人でいけますから。むしろ邪魔です、どこかへ行ってください。


「いえ、一人で大丈夫ですので、私などに構わずパーティーをお楽しみください。」

精一杯の笑顔でお誘いを再度断ります。


「そう言わずに、さぁ」

「えっ、ちょっと・・。」

だから、いらないと断っているのに強引につれていかれます。

何を考えているんでしょうか全く!


「あの、ですから一人で行けますから、ちょっと!」

あれ?何かおかしい気がするんですが、控え室そっちじゃないですよね?

「控え室はそちらはじゃないですよ。」


「こちらの部屋の方が人が少なくて休めるんですよ。大丈夫ですから」

何がどう大丈夫なんですか!流石に身の危険を感じてきましたよ。


「もう、離してください!」

まだ、周りに人がいるところでちょっと大きめに声を張り上げましたから、何人か生徒さんがこちらを見ています。

どうですか、これでもまだ強引に連れ出そうできますか?


流石に周りの目線を感じたのかわざと大きめに声を張り上げ

「せっかく控え室に連れて行ってあげるだけだから、そんな声をださなくてもいいじゃないか、これじゃまるで私達が悪者みたいだ。はは。」

何が『はは』ですか!キザなポーズで周りに聞かせるように言ってるけど、強引に連れていくだけで悪者じゃないですか!


するともう一人の男性が私にだけ聞こえるよう耳元で「黙ってろ、ガキが調子にのってるんじゃねぇ」と。


あっ、この人達アブナイ人だ。


ん〜、いちお逃げ出せる手段があるから、それほど切羽詰ってはいないんだけど、それをここで使うのはちょっとなぁ。


私が何も喋らないのを怖がっていると思ったのか、再び強引に連れて行かれそうになったとき、現れたのはミリィでもお兄様でもなく・・・、だれ?


「先輩方、そちらは控え室じゃないですよ。」

「その子と先輩方じゃ顔がつりあわないですよ?」

誰だろうこの人達。

目の前にあわられたのは同じ年くらいの2人の男の方。

そういえば昔似たような事があった気がするんですが、いつだったかなぁ。


「なんだ、1年坊主が邪魔すんじゃねぇ」

セオリー通り三流役者のようなセリフを口にだして威嚇しています。


この後の展開がわかるので、やめておいた方がいいんじゃないですか?


「その子は知り合いなんで、返してもらいますよ先輩。」

そういって私を助け出そうとしてくださるんですが、がっちり腕をつかまれてしまっているのでってあれ?

もう一人の方が掴まれている男性の手を素早く払いのけていて、あさり私は助け出されました。

見事な連携です。


「てめぇ」

頭にきたのか一人の男性が、助けてくださった男性に殴りかかろうとしたところ、別の男性が止めに入ります。

ここは貴族様が通われる学校ですからね、学園内の喧嘩沙汰は禁則事項になっているんです。


「やめておけ。」

「ちっ!」

「小娘が調子乗ってんじゃねぇぞ。」

ドスの効いた低い声で威嚇しながら近くにあったグラスを取り、中身を私に被せてきます。


まぁ、貴族様の立場もありますから、飲み物をかけられるぐらい、甘んじて受けましょう。

そう思い身構えるも、助けてくださった男の方が素早く私の盾になり、すべて自身が被られてしまいました。


「あぁ、ごめんなさい、お洋服が。」

なんで庇うんですか!?私一人慌てているんですが、男の方は大丈夫だからって、私と2人組の男性の間に入り通せんぼをしてくれるんです。


汚れた男の子の姿に満足したのか「いくぞ」と捨て台詞もなく2人組の男性はどこかへ行ってしまわれました。

クリーニング代だけでも置いていけ!貴族様の洋服は高いんだぞ!


「ありがとうございます。でもお洋服を汚してしまって・・・。」

「たいした事はないから、気にしないで。」

自身の事より笑顔で私の事を気遣ってくださいます。

お気持ちがすごくうれしいのですが、今は申し訳ない気持ちがいっぱいでそれどころではありません。


「それより大丈夫?」

「はい、私は大丈夫ですので、とにかくお洋服のシミを取りますのでどこか控え室に。」

一人オロオロしていた時現れた人物は・・・。


もうこれ以上ややこしくしないでください。

悪役令嬢ことイリア様でした。

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