第8話 騎士の名は

「・・・・そして少女の祈りに、豊穣の女神ミラ様がお答になった事で、干上がった大地に緑の恵みを取り戻すことができたのです。」


本日の午前中の授業はレガリアの歴史に関する事、スチュワートでは実習ばかりではなく、将来貴族様のお屋敷にお仕える場合に必要な一般教養も、必須学科となっているんです。

優秀な執事や侍女さんは、貴族様のお子様への教育も求められるんです!


カラン、カラン、カラン


午前の授業終了を知らせるの鐘の音を、待機されている先生が鳴らしながら廊下を歩かれています。


「それじゃ午前の授業はここまでとします。午後からは3人から5人程度のグループに分かれ、簡単な実践形式のロールプレイングを行いますので、グループを作れる方はお友達と相談しておいてください。」


「「「「「はい、ありがとうございました。」」」」」

生徒の皆さんが一斉に席から立ち上がり、先生にお礼のあいさをします。

学園では礼儀作法や感謝の気持ちを表すことは、もっとも重要視されているんです。


ん~、午後からは実習ですか、どんな事をするんだろう?ちょっとわくわくします。

「アリスちゃんお昼にしよう。」

「うん、そうだね。」


「アリスさん、ココリナさんご一緒させていただきますね。」

「リリアナさん、カトレアさんいらっしゃい。」

約束通りお二人がお弁当を持っていらっしゃいました。


「ん~、4人だとどうやったら食べやすいかなぁ。」

そう思って考えていると。

「お二人の机をくっつけて、私達は椅子だけ持ってくる、というのはどうでしょうか?」

おぉ、それだとそんなに手間がかからないですね。


「そうですね、いい考えだと思います。」

「それじゃ私達は自分の椅子を取ってまいりますね。」

「えぇ、お手間を取らせてごめんなさい。」

「「いえいえ」」


お二人が椅子を取りに行ってくださっている間に、机をくっつけて準備をしておきます。




「アリスさんのお弁当ってとてもおいしそうですね。」

お弁当を食べながら他愛もない話をしていると、リリアナさんがそう言ってこられました。

「ありがとうございます。毎日おし・・、お屋敷の料理長さん作ってくださっているんです。」

「えっ!?料理長さん・・がですか?」

「アリスさんのお母様はお料理はなされないのですか?」

カトレアさんも疑問に思ったのか一緒に聞いてこられます。


「あっ、それは・・・。」

「私の両親は6年前に亡くなっていて、今は私を育ててくださったご両親のお屋敷にお世話になっているんです。」

ココリナちゃんが気遣ってくれたみたいだけど、気にしなくても大丈夫だよ。


「あっ、ごめんなさい!私失礼な事を聞いてしまって。」

「私も、ごめんなさいアリスさん。」

「気にしないでください、大丈夫ですから。育ててくださっているご両親には本当に大事にしていただいているので、今は幸せなんですよ。

だからこの話はここまで。ココリナちゃんも気遣ってくれてありがとう。」

ニコリと笑顔で返しておきます。


「それより、午後からの授業の事なんだけど。」

両親の事で気を使わせてはいけないから、サクッと話を切り替えちゃいます。


「グループのことですよね?」

「ええ、もし皆さんが良ければご一緒しませんか?」

「もちろん、私たちの方こそお願いします。」

やっぱり友達っていいですね。


「それで先生のお話では5人程度までとの事でしたので、できればあと1人お誘いしたい方がおられるのですが。」

ずっと気になっていた方がおられるので、思い切って切り出したのですが。


「アリスさんがお誘いしたい方がおられるのでしたら、私は歓迎いたしますよ。」

「ありがとうございますリリアナさん。」

「私も大丈夫です。」

「それでアリスちゃんがお誘いしたい方って、もしかしてパフィオさんじゃないの?」

「はい。」

やはりココリナちゃんには分かっちゃいましたか。


昨日イリア様に叩かれそうになった時に、助けていただいた方のお名前がパフィオさんと言うんです。

休憩時間の時にチラチラと見ていると、誰ともお話をされている感じがしないから気になっていたんです。


「昨日は私も知り合いの方が誰もいなくて、お話出来る方が居なかったんです・・・。

あの時、ココリコちゃんが話しかけて下さらなかったら、今でも一人だったかもと思ってしまって。」


「アリスさんはお優しい方なんですね。」

「えっ?そんなんじゃないですよぉ。ただ一人は寂しいかなって思っただけで。」

「ふふふ、照れている所が可愛いですわよ。」

「ん〜、もうぉ」

リリアナさんってちょっと意地悪ですよぉ。

他の二人もなにか笑ってるし・・・。


「私ちょっと話してきますね!」

「はい、いってらっしゃいませ。」




「すみませんパフィオさん。すこしお話よろしいでしょうか?」

「・・はい、なんでしょうか?」


「私、アリスといいます。昨日は危ないところありがとうございました。」ペコリ

まずは昨日のお礼をしておきます。パフィオさんがいなければ叩かれていたはずなので。


「気にしないでください、たまたま近くに居ただけですから。」

ニコリを笑顔を返してくださいました、昨日は騎士様のような凛々しい感じだったんですが、普段は

柔らかい雰囲気が漂っています。


「それで差し出がましいのですが、午後の授業で行うグループ実習の件で、私たち今4人なんですが、もし宜しければご一緒にできればと思いまして。」


「あぁ、グループの。」

「はい、いかがでしょうか?」


「・・・ありがとうございます。私でよければよろこんで。」

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