第7話 ピンクとブルー

校門を越え、新しい制服に身を包んだ生徒達が足早に並木道を越え、煉瓦造りの校舎へと入っていきます。


私は昨日から自分の教室となった扉を開け、中へ入ると、すでに沢山の生徒さん達がおられ、各々で楽しそうに雑談されている姿がみられます。


ざわざわ

「おはようございます。」

教室の入り口で挨拶をしてから自分の席へ向かいます。

ざわざわざわ


何か皆さんからの視線を感じるんですが気のせいですよね?


「アリスちゃんおはよう。」

「おはよう、ココリナちゃん。」

席につくとココリナちゃんが笑顔で挨拶してくださいました。


「あの、アリスちゃん。」(ボソっ)

「ん?」

私にだけ聞こえるようにこそっと話掛けてきて。

「なんだか昨日の事が噂になっているみたいなの。」(ボソっ)


昨日の事というのは、おそらく帰りの出来事だと思うけど・・。

「イリア様の事?」(ボソっ)

「その事もなんだけど・・・」


「あの突然すみません、リリアナと言います。アリス様、昨日はありがとうございました。」ぺこり

「私はカトレアと言います。昨日はありがとうございました。」ぺこり

お礼を言ってこられたのは昨日の帰りに出会った二人組の女の子。同じクラスだったのですね。

怪我をしていた子がリリアナさんで、もうひとりの子がカトレアさんと言うそうです。


「えっと、そんなわざわざお礼をしてくださるような事はしてないんだけれど・・、それより『様』付けはしなくていいよ。」

昨日ちゃんとお礼をしていただいているから、改めてしていただく事もないんだけど、それよりなぜ『様』付け?


「あっ、いえ、アリス様はその・・貴族様ではございませんか?」

あぁ、そういえばココリナちゃんにも昨日誤解されたんだっけ。


「えっと、紛らわしくてごめんなさい、貴族様ではないんです。」ペコリ

「「「「「「「 えっ? 」」」」」」」

「へ?」

何!今教室中から反応されたんですが!


「あの〜、もしかして皆さんも誤解されていましたか?」

そ〜っと教室内を見渡しながら尋ねてみますと。

皆さんが頷いておられます。あぁ、やはり誤解されてました・・・。


「アリス様はご貴族様ではないのですか?」

皆さんの代表としてリリアナさんが再び尋ねられると。


「はい、昨日ココリナちゃんにもお答えしたのですが、名前の事は私何も知らずに、お母さんの名前をそのまま使っていただけで、どこにでもいる普通の平民なんです。」

平凡顏の私が貴族様なわけないじゃないですか。


「でっ、ですが、昨日も帰りは馬車でお迎えが来られていたようですし。」

「今日も馬車れ来られたのをお見かけしたのですが。」

「私もお見かけしましたわ。」

ざわざわ ざわざわ


「こほん、馬車のお迎えは育てていただいたご両親が、私の事を心配してくださって、ご好意でお受けさせていただいているんです。」

よし、嘘は言っていません。


「それに、その・・・私の怪我を治してくださった・・・。」

リリアナさんとカトレアさんが一度お互いを見つめ、振り向きながら私に言ってこられます。

「あぁ、癒しの奇跡の事?あれぐらい誰でも出来るから、そんなに珍しくもないんじゃ?」


「「「「「「「 いやいやいや、普通出来ないから!! 」」」」」」」


「へ?」


「あの、アリスちゃん。もしかして傷を治せる事って、簡単に誰でもできるとか思ってる?」

「出来ないの?」


((((((( この娘、天然さんだ!! )))))))


「うん、アリスちゃんは今日も通常運転だね。」

どういう事?

癒しの奇跡ならお姉様や、巫女の人たち、それに侍女のエレノアさんも普通に使ってたんだけど・・・。


「ごらんの通り、アリスちゃんはこんな娘なので、皆さん暖かく見守ってあげてください。」ペコリ

「いきなりなに言うのココリナちゃん!?」


「「「「「「「 は〜い。 」」」」」」」」


「えっ!なに?私の知らない所で話が進んでいくんだけど!」

「アリスちゃんはそのままでいいんだよ。」

なぜか私の頭をやさしくなでてくれます。

ココリナちゃんが遠くへいっちゃうよぉぉ〜〜。おいていかないでぇ〜。




ガラガラ!

なぜか教室内が一つにまとまった(?)とき、勢い良く扉が開きイリア様+取り巻きお二人が入って来られました。


一瞬教室内が静まりかえりますが。

「おはようございます。イリア様」

ニコリと私の方から笑顔でご挨拶します。


イリア様は私の前に来られて

「平民の分際でいい気にならないで!ふんっ!」

そう言い放つと私の後ろの席に座られます。


ん〜、なんだか難しい方ですね。




「あの、アリス様、宜しければ今日お昼をご一緒してよろしいでしょうか?」

リリアナさんが私をお昼に誘ってくださいます。これはお友達になれる予感がしますよ!


「ココリナちゃんも一緒でいいですか?」

「「はい、もちろん!」」

「あと、様はやめていただけると嬉しいのですが・・・。」

私は別に貴族様じゃないですからね〜、偉い人じゃないんですよ〜。


「わかりました。えっと、それじゃアリス・・さん・・。」

「はい、よろしくおねがいしますね、リリアナさん、カトレアさん。

「「 こちらこそよろしくお願いします。 」」


ミリィ、またお友達が出来たよ!

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