第4話 爆走!お姉様!

「お姉様、お仕事は終わられたんですか?」

ティアラお姉様は普段お仕事として、神殿で巫女をされているの方々に『言霊』の講習をされており、皆さんと日々修行と言霊の勉強をされてるそうなんです。


『言霊』とは、お姉様が言うには精霊さん「お花を咲かして」と、普通に言っても当然聞いてくれません。そこで『言霊』という名の歌で精霊さんにお願いするんだそうです、楽しい音楽や綺麗な歌声が精霊さんは大好きですから。

私はその『言霊』がまだ使えなくて、時々お姉様に教えて頂いてるんですが今だに上手く出来ないんです。


「ええ、今日は外で講習をしていたんだけど、急な雨で巫女のみんなも濡れてしまって、数日後に『豊穣の儀式』を控えているから、体調のことも考えてね、今日は早く切り上げたのよ。」


「お姉様も濡れてしまわれたのですよね?大丈夫ですか?」

良く見るとお衣装や髪が少し濡れている気がします。

「タオルで少し拭いたんだけれど、今から着替えに行くところよ。」


「それじゃ早く着替えに行ってください!姉様に何かあれば大変ですから。」

それまで黙っていたミリィが、両手を胸の前に合わせて、お姉様を見上げるように語りかけてます。

「ありがとうミリィ、心配してくれて。」

「もちろんでございますわ!」

いやいや、ミリィ普段そんな喋り方しないでしょ・・・・。


「それじゃちょっと着替えてくるわね」

「はい!いってらっしゃいませ。」

お姉様はそのままサロンの扉の前まで行かれると、クルッと振り向かれ

「ミリィ、アリス、着替え終わったらお茶に付き合って貰えるかしら?お友達から美味しいクッキーをいただいたから一緒にいただきましょ。」

「はい、お姉様」

「えっ!、あ、はい・・・。」


「そうそう、さっき言ってた鬼がどうのって話しも聞かせてね。うふふ。」

「「!!」」


「・・・二人とも逃げちゃダメよ。」

そう言ってお姉様が部屋から出て行かれました。


扉が閉まるとミリィが、「どうしよ〜〜〜〜〜!!」、と言って頭を抱えてソファーに埋もれてています。


「だ、大丈夫だよ思うよ、お姉様優しいから」

「アリスは姉様の事分かってないよぉ〜、巫女やってるからって騙されちゃだめだよ!姉様武術もすごいんだよ!槍持たせたら騎士団長と互角なんだよ!あぁ〜」


ミリィがそこまで怖がるのも、以前二人でこっそりお城を抜け出した事があるんですが、初めて見る街並みに浮かれて歩き回っていたらいたら、見事に迷子になってしまったんです。


帰り道がわからず、私は泣いてしまい二人揃って彷徨さまよっていたら、たまたま出会った同じ年ぐらいの二人組の男の子が、お城まで送ってくくれたんです。

でもお城では当然大騒ぎ、お父様に怒られ、お母様に怒られ、お姉様にも怒られで、めったに泣かないミリィも、私の隣で必死で涙を我慢していたんですから、それ以来ミリィはお姉様がちょっとだけ苦手になったみたいです。


今は怖がっているけれど、二人とも普段はすごく仲がいいんですよ、お姉様が私にドレスを着せたがる時なんて、二人は息ピッタリなんで・・・・・・いえ、ごめんなさい。なんでもないです。


「アリスも責任とって一緒に来てよね。」

「私も呼ばれたから一緒には行くけど、怒ったお姉様は止められないよ?」

「・・・よし、逃げよう!」

何を決意したのかミリィが逃げ出そうとした時、お姉様の侍女さんが来られ、お姉様からお茶の準備が出来たからと迎えに来られたのでした。

お姉様には私達の行動パターンが全てバレてるようです。



私達は侍女さんの後に続き、お姉様の寝室に入っていくと、そこには普段見ないような色鮮やかな衣装の数々が並んでいました。


「二人共、こちらにいらっしゃい。」

そう言ってニコニコ笑顔のお姉様が手間なきしています。

先ほどまで怖がっていたミリィはみるみる笑顔になり、逆に私は思わず一歩さがっちゃいました。


「姉様この衣装って!」

「可愛いでしょ?遠くの地方や国から集めてみたのよ。」

ミリィが並べられている衣装に飛びつき、目をキラキラさせています。

さっきまで怖がっていたのは何だったのよ!


ミリィのはしゃぎっぷりと、色とりどりの衣装に、さらに一歩思わず下がってしまうと、誰かに背中がぶつかってしまいました。


「うふふ、どこに行くのかなぁ。」

「!」

なぜかお姉様の声が頭の上から聞こえてきます。

なんで!?さっきまで私の前にいたよね!!


ガシッっと両肩を掴まれ、そのまま部屋の中央に連れて行かれます。

「お、お姉様・・・えっあ、あのお茶は・・・。」

「うふふ、もちろん頂くわ。でもさっきまで2人でお茶をしてたんでしょ?少し時間を空けた方がいいかと思ってね。」

お姉様、すごい笑顔が逆に怖いです!!


そう言えば、前にミリィが言っていました・・・

姉様だいまおう からは逃げられない・・・。いやいやいや、お姉様は大魔王じゃないから!


そんな私の心の葛藤を知らず、ミリィは大はしゃぎです。

「姉様姉様、これがいいです!」


そう言って一着の衣装を私たちに見せてきます。

その衣装は白くモフモフ上着に尻尾らしき物が付いたスカート、分厚い手袋になぜか肉球が付いており、カチューシャには尖った耳まで付いています。

あっちょっと可愛いかも。

ミリィがその衣装を着た姿を想像して、思わず笑顔になっちゃいました。


「いいわね、それじゃお着替えしましょうか、ア・リ・ス。」

「・・・ですよねぇ。」

ええ、分かってましたよ。

なんていうか、お姉様は私に可愛い(変わった?)衣装を着せるのが大好きなんです。

ミリィもそれに賛同しちゃって、その時の二人はとても気弱な私に止める事ができません・・・。



その後、いつの間にか侍女さんズも加わり、夕食の時間だと呼びに来られるまで、お姉様達の着せ替え人形となってました・・・。

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