第3話 精霊時々お母さん

サロンに移動し、ミリィと2人でソファーに座っていると、ぽつぽつとガラスの窓に雨粒が落ちてきました。

「降ってきたね。」

「うん、降ってきたね・・・」

ミリィは疑ってなかったって感じみたいだけど、私はちょっと信じれない気持ちでいっぱいです。


「便利よね、精霊が色々教えてくれるなんて。」

徐々に雨が激しくなりかけている窓の外を見ながらミリィがそう呟いてきました。


セリカお母さんは、時々巫女のお仕事をお手伝いしていたぐらい、精霊と相性が良かったらしいんです。その御陰おかげで私も精霊さんと相性がいいんじゃないかって、言われています。


「でもお姉様みたいに『言霊』が使えないんだよ?『言霊』が使えないと簡単な傷を治したり、汚れを落とすぐらいしか出来ないし。」

「それだけ出来れば十分じゃない。姉様もアリスが成長すればもっと精霊の力を借りることが出来る、って言ってたじゃない。」

確かにお姉様からそう言われてはいるんですが、便利な力ならやっぱり強いほうがいいじゃないですか。


「そもそも王族の私を差し置いて、私より精霊との相性が良いってどうなのよ。男性の兄様は別にして、姉様は精霊と相性がいいのに、精霊の気配すら感じない私って王女としての立場がないじゃない。」

精霊さんは主に女性と相性が良いって言われているんです。ミリィもお姉様と同じく聖女様の血を引いているんだけど、精霊さんとはあまり相性がよくないみたいなんです。


「神殿の巫女様から聞いたんだけど、精霊との相性はいかに自然を感じられるかどうかだって言ってたよ、あまり意味が分からないんだけど。私の場合はお母さんの血のおかげ・・・だと思うけど。」

「まぁ、アリスはあの『セリカ伝説』を作った人の娘だからね。」

「え〜っと、伝説ってただの噂話じゃない・・・かなぁ・・・。」

お母さんはなんというか、まぁいろいろ常識が効かない人だった・・・らしい。


「噂ねぇ・・・、母様と父様が喧嘩したとき、怒ったセリカさんが王様である父様の顔をひっぱたいたとか。」

「そ、そんな事、いくらお母さんでもするわけないじゃない・・・。」


「隣国と戦争状態になった時、たった一週間で戦いを終わらせたとか。」

「無理だから!それただの噂だから!」


「周りが必死で止めようとしている中、『女神の領域』に一人で乗り込んで行ったとか。」

「さすがにそれは・・・無いと思うけど・・・。」


「本業は侍女!巫女はアルバイト!って言ってたった一人で『豊穣の儀式』を成功させたとか。」

「え〜と・・・それはお爺様にお願いされたから・・・」


「しかも干上がった大地を、たった一度の儀式で緑あふれる地にを蘇らせたとか、どんなチートですか?」

「・・・・・、なんか色々ごめんなさい。」


ミリィが最後に言った事は、レガリアの北部にある領地の話で、当時干上がってしまった大地を臨時の豊穣の儀式により、雨を降らせ、作物の採れる地に戻したそうなんです。

お礼として、今でも領地の侯爵様が、毎年とれた美味しい果物をくださるんです、私宛に。


そんな数々の噂をまとめて『セリカ伝説』と言われ、侍女さん達の間で語り継がれているそうです。

多分勝手に話が大きくなってるだけだと思うんですけど・・・。

お母さん普通の侍女だよね!いったいお城で何やってたんですか!


「私も姉様みたいにセリカさんに『言霊』の事、教わりたかったなぁ」

「今からでも一緒にお姉様に教えて貰えばいいじゃないの?」

「姉様じゃなくてセリカさんがいいの!伝説の英雄セリカさんだよ?」

ミリィの中でお母さんが伝説の英雄になってるよ・・・。


「それに姉様アリスには優しいけど、私には厳しいのよ!ダンスの練習で転びそうになったら容赦なくお尻叩くし、バイオリンの練習の時は弾けるまで何度も同じところをやらされるし!」

「それはミリィが普段練習をサボるから・・・。」

「姉様は鬼だよ鬼!」

「あらあら、なんの話しをしてるのかしら?」

「ひっ!」


そこに笑顔いっぱいのティアお姉様がいました・・・。

ミリィがちょっと怯えてるよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る