第2話 晴れのち雨

「お母様が入学式見に来るって本当なの!?」

「そう言って昨日、ノルンと当日着ていく衣装を探してたわよ。」

ノルンさんはお母様の専属の侍女であり、お城の侍女長をされている方なんです。


「でもお母様が来たら大騒ぎにならない?」

「まぁ普通なるわよね、それに護衛の騎士も大勢付き添うだろうし。」

なんと言ってもお母様はこの国の王妃様ですからね、ちょっと出かけるだけで大変な騒ぎになってしまうんです。


この間お母様が王立孤児院の視察に行かれた時、私とミリィも一緒に行ったのですが、ものすごい数の護衛の騎士さん付いてこられたんですよ。

しかもミリィと間違えられてるみたいで、私に女性の騎士さんがずっと付いてくるから、「ミリィは向こうにいますよ」って言ったら、なぜか笑顔で返されてしまいました。

お揃いのワンピースを着ていたから、間違えられただけだと思うけど。


「王族でもない私のために見に来られたなんて知れたら・・・。」

「翌日の王国新聞に『王妃様の隠し子現る!』なんて一面に出でるかもね。まぁそれはそれで面白そうだけど。」

王国新聞は、レガリア国内での事故や事件の話、貴族様のホットなニュースなんかを取りげて、面白おかしく記事にしている、国民に大変人気の娯楽ニュースペーパーなんです。

貴族様のニュースと言っても、どなたがご結婚されたとか、伯爵様の領地で温泉施設がオープンしたとかばかりで、悪いニュースは犯罪に繋がる可能性があるからって、規制は掛かっているんです、だからミリィの言うような内容は、実際には載らないんですけどね。


「お母様にお断りできないかなぁ。」

「ん~、姉様なら止めれるかもしれないけど・・・無理じゃないかなぁ。(というか逆効果になりそう)」


ミリィが言ったお姉様とはティアラ・レーネス・レガリア第一王女様、私たちより4つ年上の優しいお姉ちゃん、小さい頃セリカお母さんから精霊さんとお話をする『言霊』を教わっていたそうで、今はお母さんから習った『言霊』を私に教えてくれる先生でもあるんです。ちっとも上手くなりませんが・・・。ぐすん


「うん、ちょっとお姉様に相談してみる。」

「あっ、待ってアリス」

お姉様のところに行こうして立ち上がる私を、ミリィが慌てて止めてきます。


「姉様、今はまだ神殿に行ってる時間だよ。」

「・・・あぁそうだった。」


神殿とはお城の敷地内にあるんだけど、そこには国の『豊穣の儀式』をされる巫女様達がおられるんです。

一ヶ月に1度、神殿の近くにある『女神の神域』と呼ばれる場所で8人の巫女様が、レガリア王国の豊穣をお祈りされているんです。

これをしないと、いずれ国中の作物が採れなくなってしまうらしく、とっても大事な儀式として代々受け継がれているんだそうです。


その中でもお姉様の役目は聖女として巫女様達の先頭に立ち、毎月『女神の神域』で『豊穣の儀式』をされているんです。

何と言ってもレガリア王家は代々聖女様の血を受け継いでいるんです!


「神殿かぁ、私達、神殿には近づいたらダメって言われてるからなぁ、しかたがないから夜にでも話しをしてみるね。」

神殿の近くは神聖な場所だから近づいたらダメって言われてるんです。

『女神の神域』は昔、豊穣の女神ミラ様がご降臨されたと言われている、神聖な場所ですから。


「じゃその時私も一緒に付いて行ってあげるわ。一人じゃ姉様に何されるかわからないし。」

ミリィが何を心配してるのか分からないけれど、ありがたく行為を受け取っておきます。

「うん、ありがとう。」



ミリィと来週からの学園の話や、お母様をどう説得するかの話をお茶を飲みながら相談してたんですが、私に誰かが囁きかけてきます。

実は私は精霊と相性が良いらしく、時々こうやって何か起こる時には囁きかけてくるんです。今回も・・・。


「・・・・・・」

「どうしたのアリス?」

急に黙り込んだ私を不審に思ったのかミリィが話かけてきました。


「たぶん、雨が降るらしいよ。」

と精霊さんがそう言っている気がしたので、何気につぶやいてしましました。

「雨?」

そう言ってミリィが空を見上げたから私もつられて見上げてみると・・・うん、いいお天気だね。


「もう降りそうなの?」

空を見上げていたミリィが私の顔をみて聞いてきますが、どうなんだろ?


「そう教えてくれている気がするんだけど・・・、なんか自信ないなぁ」

この青空を見てると、どうも雨が降りそうには見えないんだけど。


「とりあえず片付けてお城の中に入ろう、アリスがそう聞いたのなら降るんでしょ。」

そういうとミリィが立ち上がり、侍女さん達がテーブルを片付けてくださいます。


「あっ、私もお手伝いします。」

これも侍女をになるための練習です!

そういって立ち上がるとエレノアさんに、「このカップ高いんですよ?」っと笑顔で言われ断られてしまいました。


私立派な侍女になれるのかなぁ・・・。

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