第7話 2人に永遠の幸せを

  勢いよく校舎から飛び出し、自転車を全速力で走らせものの数分で病院へと到着した。

  病院の駐輪場に投げ捨てるかのように自転車を置き、 ICU『集中治療室』へと駆けていった。

  そこには棗くんと向日葵のお父さんが手を組んで祈りながら座っていた。僕は空かさず、向日葵の状態を聞いた。

  「向日葵は、どうなんですか?」

  「急に容体が・・・もう・・・」

  「そんな・・・諦めないでください!彼女は絶対に亡くなったりしませんから!」

  僕は弱気な向日葵のお父さんに声をかけ、向日葵の無事を祈った。

  医者が出てくるまでの数分間は治療室の赤いランプはすごく狂気満ちていて、外から聞こえる雨の音は緊迫感を演じていた。この独特の空気に押しつぶされるかと思った。

  「大丈夫です。後は回復を待つだけですよ。」

  その言葉を聞いた瞬間、僕と向日葵のお父さんは喜びを隠せなかった。

  この間の辛く、気持ちの重くなる数分間は初めてのことだった。

 

  無事に治療を終えた向日葵の元へと駆け寄り意識が戻るのを待った。

  「向日葵・・・もう大丈夫だからね・・・」

  僕は必死に向日葵に話しかけていた。

  すると、向日葵のまぶたが動き、ゆっくりと目を覚ました。

「あれ、お父さん・・・?」

「おはよ。目が覚めたかい?」

「あれ、蒼太くんは?」

「大丈夫一緒だよ。お父さんはナースさんを呼んでいくるからね。」

 向日葵のお父さんは涙を流しながら病室を後にした。

「蒼太くん。どうして泣いてるの?私はこうやって生きてるよ。」

 そう微笑みを浮かべながら僕に訴えかけてきた。

「なんで、そんなに冷静なんだよ!僕は向日葵になにも、勇気をあげることすらできなかった。あの小説を読んでやっと気づいたそんな僕に1つの罵声もないんだよ・・・」

「それはね、蒼太くんのことが好きだからに決まってるでしょ」

 向日葵は一筋の涙を流しながら、微笑んで答えてくれた。僕はあまりの嬉しさに声を上げることが出来なかった。

「あの小説、読んでくれたんだね。ありがとう〜。で、もう一つの紙はもう記入したかな?」

「えっ?あっ・・・まだ書いてないや・・・また向日葵が元気な姿で退院したら書くよ。」

 向日葵との何気ない、いや側から見たらとんでもない話をしているとナースさんを連れて向日葵のお父さんが入ってきた。


「高階さん、大丈夫ですか?」

「はい、絶好調です。」

 目覚めたばかりの向日葵が微笑みながら答えていた。

「でも、大きな治療の後ですからゆっくりお休みになってください。」

「僕もちょっとだけ休んでくるよ。それじゃあ、後はお願いします。」

 ナースさんに便乗するかのように僕もこの病室にいる全員に告げ、病室を後にした。


 時間はもう朝方の4時くらいを示していた。すでに少し、日が昇り初めて病院をを少しながら照らしていた。

 僕は疲れを癒すために側にあったソファ目がけて歩いて行った。

 置かれていた妙に硬いソファに腰掛けて少しの間、仮眠を取ることにした。


 薄暗い病院に太陽の日差しが差し昇る頃、僕は目を覚ました。

 硬いソファのせいか首が痛い。首に手をやりながら一息ついて病院の外に出た。

 硬ばった体を澄んだ空気が包みこんでいき、少し上を見上げてみるととても綺麗な青空が広がっていた。

 僕はそっと深呼吸をして向日葵の病室へと戻った。


 重たい病室の扉を開けて中に入るとそこにはすっかり元気を取り戻した向日葵が元気にお父さんと会話をしていた。

 入った瞬間、向日葵は僕の事に気付き話しかけてきた。

「あ、蒼太くん!おはよ!」

「おはよ。」

「あれ?元気ないね。」

「ついさっきまで手術をしていたのにそこまで元気な向日葵の方がすごいと思うよ。」

「ずっと寝ててもみんな心配するだけでしょ。」

「た、確かに・・・」

 向日葵に確かにとしか答えられないような正論を言われ、成す術を無くしてしまった。

 すると後ろからまた扉を開ける音が聞こえた。

「もう元気みたいですね。この調子ならもう2、3日したら退院出来るって先生も言っていましたよ。」

「ほんとですか?」

 ナースさんと向日葵のやりとりを見て、少しこの空気から救われたと1人で感心してしまった。

「でも、はしゃぎすぎたらまた、体調を崩したら意味がないからね。安静にね。」

「はいっ!」

 向日葵の元気な返事を聞くのは久しぶりかもしれない・・・


 数日が経ち、向日葵の退院の日になった。

「退院おめでとうございます!」

 外の空気を向日葵は思いっきり吸い込んで深呼吸をしていた。

「よし!また小説をしないと。」

「だめっ!」

 向日葵の発言にみんなで笑いながら車で向日葵のお母さんの所へと向かった。

 いつも通りの元気な向日葵の姿に僕達はホッとした気持ちになった。


 しかし、いざお墓に着いてみるとみんな悲しい顔になってしまっていた。

「さぁ、またお母さんに笑顔を見せてあげよ。」

「うん・・・」

 夏の日と同じ励まし方でお父さんはみんなを励まし、また車に戻って向日葵の家へと一緒に帰った。

「ねえねえ、せっかくだしみんなで写真撮ろうよ。」

 向日葵が無邪気に提案を持ちかけてくる。

 勿論、断る理由なんか無く、みんなで写真を撮ることになった。

「はい、いくよ〜」

 綺麗なシャッター音が鳴り響いた。その写真の4人は輝く太陽にも負けない笑顔であふれていた・・・

 このひと時の事は誰も忘れない出来事で、心に染みる思い出になった。



 そして月日は流れ、とある8月・・・

 2人は思い出のヒマワリ畑にいた。

「やっぱり、いつ見ても綺麗だね。」

「うん、そうだね。」

「私ね、蒼太くんに言わないといけない事があるんだ。」

「なに?」

「ありがとう!蒼太くんのことこれかもずっと好きだよ!」

「僕もだよ。ありがとう」

 この言葉は僕にとってかけがえのないものになった。


 現在、向日葵は小説家になって小説界に大きな影響を与えていた。

 蒼太は向日葵のマネージャーとなり編集部になるために勉強中です。


 そして言い忘れていた事が。この2人には大切なもので繋がっています。

 それは彼女からの送り物である文学。これは蒼太にとっても向日葵自身にとっても大切なものであり、これが消滅しない限り2人は離れる事はないでしょう。

 永遠に・・・

 

 著者 清水 蒼太

  清水 向日葵

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彼女からの送り物 きたばぁ @1115

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