第2話 影
初夏の暑さが体に染み渡る
3時限目は国語だ
暑さのせいなのかそもそも内容が難しいのか
さっぱり頭に入ってこない
斜め後ろに目を向ける
聖はさも当たり前かのように携帯をいじっている
今日はまだ見つかっていないようだ
その時俺の視線のせいかそれとも先生の観察力のおかげかは分からないがいつものように見つかる
「おい!!名取お前また携帯触ってるな!!」
聖の体がビクッと震え上がる
「さ、触ってませんよ!」
「じゃあその手に持っているものはなんだ!見せてみろ!」
「あーこれはですね教養を付けるための道具といいますかそのー俺の勉強法にとりいれられて...」
「うるさい言い訳ばかり言うな!!放課後職員室に来るように!」
先生の怒鳴り声が教室中に鳴り響く
ほんと毎回地震起きるんじゃねぇのってほどうるさい
「はいはい」
名取が呟く
「はいは1回だろと何度いったら分かるんだ!」
この怒っている時間を頼むから授業に使ってくれという視線が他の生徒たちから向けられる
「やれやれ」
自分にしか聞こえない声でつぶやく
「暑い」
公務員の田辺義昭(たなべよしあき)は学校の花に水をやり終えた所だ
今年で59歳の田辺はこの学校でも長く世話になっている方だ
若い頃教員の夢を諦めた それでも学校という場所で働きたかった
最初はこの仕事が嫌いだった
ただ歳をとる度にこの仕事にやりがいを感じている
来年で退職の田辺は精一杯職をまっとうしているところだ
田辺は学校の裏口に目を向ける
(人?それも何人も?)
心の中でつぶやく
おそらく10人以上はいると思われる
不審な気持ちを浮かべながらも田辺はゆっくりと歩を進める
距離が15mと言ったところで声をかける
「あのー!そこから学校に入るのは控えていただきませんかー!回れば校門があるので!
そこか...」
田辺は気づく彼らに気づく
田辺は腰を抜かす彼らは近づく
ゆっくりとまるで獲物を舐め回すかのような
「やめ...やめろ...やめろー!!」
それにしても初夏だと言うのに今日は暑すぎやしないか…
真矢は思う
夏は嫌いじゃない
だが今日はなんだか気味の悪い風が吹いている
(勘違いかな)
奴らが近づいていることにも気付かず
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