むかしばなし

@hybrid

第1話 Antibody Dependent Enhancement

あるところに、おとこのこと、おとうさんと、おかあさんがすんでいました。


おとこのこのおうちは、とてもおおきくて、しかもたくさんのかべにたくさんのとびらがありました。


なんでたくさんのとびらがあるのかって?


それは、おとこのこのおとうさんとおかあさんがおもいついたのです。


「僕達の家は大きい。だから扉が1つしかないんじゃあ、あの子も不便だろう。家の裏手の方角に用事があって扉が正面にしかないんじゃあ遠回りするしかない」


「そうね。家の正面以外にも側面、底面、上面にも扉を付ければ、あの子も家への出入りが楽になるはずよ」


おとうさんとおかあさんはそういって、おうちにたくさんのとびらをつけてくれたのです。


こうえんでおともだちとあそんだあとに、おうちにかえるときは、こうえんにちかいとびらにむかいます。


おみせでおかあさんとおかいものをしたあとに、おうちにかえるときは、おみせにちかいとびらにむかいます。


ようちえんからおうちにかえってくるときは、ようちえんにちかいとびらに、ようちえんのくるまがおくってくれます。


あるとき、おかあさんがおとこのこにいいました。


「ママとパパはお家に”悪い人”が入ってこないようにおうちの周りを見回っているの。でも、ママとパパが見ていないうちにお家に”悪い人”が来るかもしれないの。その時は、扉を開けちゃだめよ。お外からママとパパ以外の人の声がしたら絶対に開けちゃだめよ。」


「わかった。だけど、”わるいひと”ってだあれ?」


「お家の中に勝手に入ってきて、おもちゃも、おやつも、悪いときはパパもママもなんでも持って行っちゃうのよ。泥棒っていうの」


「パパとママはどろぼうをみつけたら、どうするの?」


「ママ達は泥棒をやっつけることが出来るの。だから安心してね」


おとこのこのおうちは、どろぼうがはいってこれないように、おとうさんとおかあさんにまもられていたのでした。


たまにどろぼうがやってきても、おとうさんとおかあさんが見つけて、やっつけてくれます。


「誰だお前は。さては泥棒じゃないのか。僕は泥棒に家に入らせるようなやわな父親じゃないぞ」


「私達の家に泥棒は入れないわ。もし入ろうとするなら警察を呼びますからね」


そうどろぼうをしかりつけると、おとうさんはどろぼうをかえりうち。


おかあさんはけいさつをよんで、どろぼうをたいじします。


もしどろぼうがおとうさんとおかあさんにみつからなくても、


「まいったナァ、このいえのとびらをあけられそうなかぎはないぞ」


といって、かえっていくのでした。


おとこのこは、おとうさんとおかあさんにみまもられているとしんじて、まいにちあんしんしておそとであそんだり、かいものについていったり、ようちえんにいきます。


でも、あるひかわったことがおきました。


おとこのこがおうちにかえると、なんとおとうさんでも、おかあさんでもないひとがいたのです。


「おじさん、だあれ?おうちにはぼくと、おとうさんとおかあさんしかはいれないんだよ」


「おじさんはね、おとうさんのおともだちなんだ。だからおうちにいれてもらったんだよ。おじさんはおとうさんから、ぼくのおもちゃをもっていってもいいよっていわれているから、これからぼくのおもちゃをもっていっちゃうよ」


おじさんは、おとこのこのだいじなおもちゃをもっていこうとしています。


「だめだよ。そのおもちゃがないと、ぼくはなにをしてあそべばいいの」


「まだぼくにはおやつも、おとうさんもおかあさんもあるじゃないか。それさえあればへいきさ。でも、またおうちにあそびにくるときはまたなにかもっていっちゃうかもね」


どろぼうは、おとこのこのおもちゃをもっていってしまいました。


おとこのこは、わんわんなきながら、おとうさんとおかあさんがかえってくるのをただまっていました。

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