第2話
(……さて上の方も今回の事を評価してくれるだろうし、また出世するための手柄を立てる事が出来たわけだ)
「あ~、ハチェット君。1人で気持ち悪く笑っている所で悪いが、夫妻の検死結果の報告に入ってもいいかね」
「ん、気にしないで説明していいですよ、先生」
ハチェットに『先生』と呼ばれた女性解剖医は義足である左脚で床をコツコツと叩き、やれやれ、といった感じで掻きながら説明を始める。
「夫妻の死亡原因は複数の銃弾を打ち込まれた事によるものだ。まあ、見れば分かる事だがね」
「『見れば分かる』……確認は重要ですよ。何事においても」
「確かに。だが君がここに来たのは確認のためだろうが、それはこの事件をもう少し広い視点で見た場合に見える事柄の確認に来たんだろう?」
解剖医とハチェットは互いに見やる。とそこへドアを勢い良く開けてカナタが入ってきた。
「うーす、ハチェット。頼まれてきたフライドチキン、バレルで買ってきたけど」
「お、サンキュー」
「私もちょうどお腹が減っていた所でね、いくつか頂くよ」
「……ここで食うのか」
カナタは死体の前でチキンを頬張るハチェットと解剖医を見やる。
「流石にこんな所で食べるのは不謹慎じゃないかな~……って僕は思うんだけどさ」
2人を見るカナタの視線は非難の色を帯びていた。と、ハチェットが口を開く。
「お前も食べていいぞ」
「食べるよ」
あらためて、解剖医は医療用の杖を持っていない右手でチキンをつかみ、説明を始めた。
「ここ数ヶ月の事だがクエード夫妻と似たような殺害方法を取られた一家が運ばれてくる。……何人くらいだと思うかね」
「あ~……10人くらい?」
「50人以上、だろ? 事件自体の件数はクエード夫妻の事件も含めればこれで10件目だ」
「流石、君はよく調べてるなハチェット君」
「僕は別に不勉強な訳じゃないから。今この事実を初めて知った訳だし」
カナタの言い訳を流し、解剖医は説明を続ける。
「これは鑑識からの報告なんだが、現場に残された銃弾の旋条痕を調べると。最初の3件はそれぞれ全て違う銃を使っているようだが、4件目からは同じ銃を使うようになったようだね」
「最初は足が付きにくくするためか、それとも捜査を撹乱するためか。、銃を換えていたが途中で面倒くさくなったんだろうな……」
「3日坊主だな~」
と、薄暗い解剖室の中で何かが振動する音が響く。ハチェットはすぐさまコートの胸ポケットから素早くスマートフォンを取り出し応答する。
「ああ、ハチェットだ。ん? おお、そうかそうか。分かった、すぐに向かう」
「何だって?」
「病院からだ。ダニー少年が目を覚ましたそうだ」
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