第13話 side:A 推理
彼は、話し始めた。
未来のある生徒を、ともに見守っていたはずの同僚を殺したという、男の話し。
「まぁ、大したことはありません、難しいトリックなどもありはしない、ただ単純に捕まえて、殺しただけの話です」
「では、一番初めから、行きましょう、まず、最初に死んだ、二年の遠藤氏と一年の神崎氏の行動は、職員室に鍵を取りに行ったが、帰ってこなかった、ええ、そうでしょうね、職員室を出てすぐ、花隅先生、貴方に殺されたんだから・・・、目の前に現れて、口を押えて殺すだけ、殺した後は、近くの指導室にでも置いておけばいいだけ、そのあと、何事もなく、皆さんの前に現れ、殺した二人を心配そぶりをして、皆から離れればいいんだから・・・」
「・・・・・・そんな・・」
当時どんなふうに現れたのかは知らないが、友達を殺した相手が何の不審な様子もなしに目の前に現れていたのだから、ショックは大きいだろうと思う。
「ですが!そのあと!!花隅先生は!!」
「ええ、死体となっていますが、あれは違う人です、まぁ、一人でもどっちでもよかったんですよ、貴方たちに自分が死んだと思い込ませられるなら、なんだって、生徒一人がついてきたが、それも好都合だった。
気絶でもさせて発見場所の教室で殺害の後、職員室に誰もいないのを見計らって、先に殺した二人を移動、それと同時に自分も死んだふりの準備をする、貴方たちが発見した時には、彼でしたがそのあと起き上がり、身代わりを運び込んだんです」
「身代わり・・・・?」
「ええ、隣町にいた、とあるホームレスが一人行方不明なんだそうです、身代わりの死体は、その人です、事前に睡眠薬か何かで眠らせておいて、教室に運び込んだ後、自分の身に着けている物を着せて、首を切って殺したんです」
別人が先生に成りすまされていた、その言葉にみんな、動揺し何も言えなかった。
ああ、正直、私も信じたくないです。
「でも・・・花隅先生って・・・断定されて・・・・」
「ええ、まぁ、金でも渡して、自分の部屋に一日居させたんでしょう、貴方たちに顔が見られなかったのが彼にとっての不幸中の幸いというわけです、身内が誰もいなかったようなので、これは後から分かったことですがね・・・とにかく、それで、皆さんに自分が死んだという事を思い込ませた彼は、生徒用のカギと玄関のカギを奪って、貴方たちの友達、クラスメイトを殺していったんです」
簡単なように言うが、用意周到すぎる、一体の死体を自分で準備していたのだから、ここまでのことを計画的かそうでないかにしても、ひどいと私は思うのだ。
「ちょ・・・ちょっと・・・待ってください・・・そうなると、彼は、ずっと、学校の中にいたという事ですか・・・・?」
「ええ」
「・・・・我々の行動はどうやって・・・・知ったのでしょうか?」
一番の疑問、狙ったように殺されていった生徒教師たち
人の行動を予想するだなんて、まず無理な話、だから、我々は探したのだ。
「ええ、いくら校舎という狭い空間にいるからと行って、居場所までの特定なんぞ、どだい無理な話です、しかし、それを確定させるものが彼にはあったんですよ、木島さん、あれを・・・」
きくの合図で鑑識さんたちが長方形の机をきくの前にだしその上に、黒い塊、白いコンセントなどを広げてみせた。
「それは・・・・?」
「盗聴器です」
「は?」
「え・・・盗聴器・・・・?」
「なぜ・・・そんなものが・・・・」
三人は動揺した、その数も異常だが当時学生でここに通っていた彼らにとってはショックが大きいのだろうが事実だ、現にこの近くをたまたま通った盗聴マニアが何人もここで電波を拾ったと証言している、それを真似て自分もしかけたという奴らもいたが、御用となったので今は気にしないでおこう。
「彼は、ある生徒に異常なほど執着していた。その生徒を追いかけるために盗聴器を至る所に仕掛けていたんです。」
「ある・・・生徒・・・?」
「・・・・・」
「まさか・・・・」
「ええ、谷さんです」
きくが、彼女の名前を言ったとき、かすかに男の肩がはねた。
「二年生の生徒、惜しくも最後に命を落としてしまった、少女です。
盗聴器のもともとの役割は、彼女を監視する事だった、それが功を奏し、あなた方がどこに行き、どこに留まっていたのか、丸わかりだったのです。」
「でも・・・それなら、僕は、いつでも殺せたはずです、なのに、なぜ、僕は生きているんですか!」
と眺野氏が言った。
最もだ、彼も探索やら何やらでみんなから離れていた。
「ええ、ですが、貴方の同行者は、いつも、谷さんでした、よね?」
「え、ええ・・・・」
「誰からも好意を寄せられる少女だった、彼女もみんなのために動かなければと思っていた。だから、貴方とよく行動をしていた、だから、貴方は、獲物から自然と外れていたんです」
「え・・・」
「犯人が最も手に入れたい少女、彼女もまた、貴方と居ることで獲物から外されることとなった、そうでしょう?先生・・・・」
きくがそう尋ねた。
男はかぶっていた帽子を深くして顔を隠した。
「だから・・・私は、その人じゃないって、言っているじゃあないですか・・・谷真音、なんて少女・・・」
きくがにやりと笑った。
周りのみんなも驚いている、ああ、ここまで読んでいる方ならきっと、わかっていただいていると思います。
「おや?よくお名前をご存じで」
「・・・は?なにを・・・・・」
「よく、谷さんの下の名前が、真音だと、分かりましたね」
「――っ、な、なにを・・・君が、さっき・・・・・っ!!」
「おや!オレ、彼女の名前、言いましたっけ?なぁ、朝日?」
「いや、彼女とは言ったが、まこと、とは、一言も言ってないな・・・・それに、女の子でまことという名前なんて、早々に出てくる名前じゃあないだろう?」
「そ、そんなはずは!!」
だまし討ちにはなるが、これが一番手っ取り早いのだ。
彼が、花隅みつるであるという、証明をするには、これが一番早い。
「そんな・・・・」
「こんなことがあっていい事なのか・・・・!!」
「うそ・・・・どうして・・・先生・・・・・」
三人は動揺し、自然とそう言った。
当然だ、たった数年と言えど、自分たちに学問を教え、未来を望んでくれていたはずの人なのだから、信じたくない、そう思うのはきっと、この場の誰よりも思っている事だったろう。
「違う、私は知らない!!第一、新聞やテレビでやっていたじゃあないか!!そ、それを思い出して!!」
「確かに一理ある、しかし、この十年以上も昔の事件を思い出して、被害者の名前をぴたりと当てるのは些か、納得がいきませんな」
「わ、分からないじゃあないか!事件の特集とかでやっていたのを見たかもしれないだろう?」
そう言って、悪あがきをする、谷みつるという男、いや、書いている私も不愉快だ、先生(仮)と書こう、先生(仮)は、焦っているようで、何とか追及を逃れようと頭を動かしているようだった。
「わ、私は、彼らも、しらない、私は、この事件に何の関係もない!!」
「まだいうか・・・・」
「やれやれ、どういい逃れようと分かってんですよ、あなたの胸ポケットに、今もあるんでしょう、彼女の写真が・・・」
「―――っ!!」
「なに!!」
「おい!」
木島刑事の合図に数人が先生(仮)に近づき、ボディーチェックをしていく、すると内ポケットから、一枚の紙が出てきた。
それは、一人の少女だけを残して、すべての人の顔が削られた写真だった。
「あ!!」
「それは!!」
「あの時、みつけた写真・・・・・!!」
彼らには、見覚えがあったのだろう、本来証拠として、彼らの手元にあったはずの物なのだから。
「捨てられるはずがないでしょうね、貴方に、その写真を処分するという選択ができるはずがないのだから・・・・」
「こ、これは・・・・・」
「ほう、まだ、言い訳されると・・」
「ああ・・・言わせてもらおう、これは拾ったんだ、河原に堕ちているのを拾って・・・落とし主を・・・・ずっと・・・・さがして・・・・」
言い訳がどんどん苦しくなっていっている、まぁ、ここまでそろえばまず無理なはずだ。
というか、もう、あきらめろと思っていた所だ。
「もうあきらめたら、どうなんですか?どんなに言い訳したって、疑いを深くするだけですよ・・・・・というか、こんな茶番、いつまで続ける気だよ・・・・」
「なっ!!なんだと!!ふざけるな!人の人生をなんだと思っているんだ!!私のはずがないのに、わたしを犯人として、捕まえようとしているのだぞ!!、私は、わたしじゃない!ワタシは何の関係もない!!私は、ただ、真音を愛していただけだ!!」
その一言が体育館に響いた。
決定的で最低、最悪な一言が・・・・。
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