第11話 side:A 亡霊たち
水谷さんに呼ばれ、僕らは刑務所にいた。
警察病院に案内され、僕らが見たのは、意識を失った、眺野さんだった。
「どういうことだ!」
「分かりません・・・・今日、看守さんが見たら、意識がなかったと・・・・」
水谷さんも、僕たちも動揺した。
きくと今朝方、看守が彼の牢屋を覗いたらぐったりしていたと、どんなに声をかけても反応がないらしい、脈も心臓も正常に動いているのに、意識だけがないのだ。
「・・・・どうして」
「・・・・・・脳に異常は?」
「ありません、眠っているだけ・・・・と・・・でも、反応しなさすぎると・・・・」
身体に異常はない、数値的には眠っているだけ、だが、痛みを与えても、ゆすっても起きないという
「きく・・・・」
「・・・・・・っ!」
今まで黙っていた、きくが突如顔を動かし、俺の後ろを見ていた。
「きく?」
「・・・・・・待て・・・・・待て!!」
そういって、俺を押しのけ、どこかへと走って行った。
「おい!きく!!」
追いかけるもどうしてか、追いつけないのだ。
きくには人には見えていない物が見えている、奇行に思われるだろうが、彼には本当に何かが見えている。
どんなものが見えているかは、詳しく教えてくれないだが、彼は、今、何かを見ているのだろう、俺は走った。
警察の人達をかき分けて、ロビーまで来たとき、俺はきくを見失った。
「きく?きく!!」
いない、どこにも、きくの姿が見えないのだ、
「きく――――!!」
彼の名前を呼んでも、それに対する返事は、俺の耳に届くことはなかった。
俺は追いかけた。
警察病院で見たのは、灰色の眺野氏の幼い姿だった。
写真で見た彼が、倒れて眠ってしまっている、眺野氏の隣に立っていた。
最初は死んでしまったのかと思ったが、どうやら違うようだ、一瞬、見えなくなって、探すと朝日の後ろに立っていた。
そのまま俺に背を向けて、廊下を走り出した。
「・・・待て・・・・・待て!!」
幼い眺野氏を追いかけた。
すると、どんどん世界は灰色へと変わっていく、何を考えているのか分からない
おれは、昨日きいた話を整理しながら彼を追いかけた。
「盗聴・・・・?」
「ああ、教室から、いくつか出てきた、これについて知っていることはないか?」
「・・・・・・・・俺はない」
「おれも・・・」
「・・・・・・・」
男子陣は知らないらしいが、女性陣の何人かは口を閉ざしていた。
「何か知っているのか?」
「いや・・・それかどうかは分からないけど・・・私の友達の友達が・・・なんか、先生で遊ぼうとしているって言うのを聞いた事がある・・・・」
「なに・・・・」
「まじで!」
「具体的なことは知らないんですけど・・・・」
「その先生は、わかる?」
「い、いえ・・・・教えてはくれませんでした・・・」
まぁ、そう簡単に教えてくれるはずもないかと思った。
正直、こっちはどうでもよかった。
「では、谷真音に関することで何か、問題はありませんでしたか?」
「問題・・・・?」
重要なのはこっちだ、彼女に関すると言ったがなんでもいい
「彼女に限らず、なにか、問題になりそうなこととか無かったか?」
そう聞くと、皆考えるそぶりを見せた、その数秒後、一人の男性が何かを思いついたように声を出した。
「あ!」
「なんだよ・・・・」
「ほら!あれは?」
「あれ・・・・?」
「ほら、あったじゃん!!」
三年生には通じる物らしいあれとはなんなのだろうか、とりあえず出てくるまで、待つことにした。
「ほら、あのうわさ!」
「ああ・・・・あれか・・・でも・・・」
「うわさ?」
「なんだそれは?」
「関係ないと思いますよ・・・」
「なんでもいい、言え」
言いずらそうな顔をして、重い口を開いた。
「実は、ある先生が、特定の生徒を贔屓しているという噂があったんです」
「ほう」
「ええ、それで、なんどか、先生に注意されてたとか・・・」
「それは、誰ですか?」
「・・・・・」
朝日がそう言うと皆言いずらそうな顔をした。
「その・・・・花隅先生です」
「・・・・・・花隅って・・・・被害者の」
「・・・・・」
「ええ、だから、・・・・」
花隅先生、第二の殺人の被害者で首を切られ死亡していた人物、だが、もし、それが偽物だったら、盗聴器の事を知っていたら、彼の特定の生徒のなかに谷真音がいたら、事件の全貌が見えてきた。
それを伝えようと思っていた時に、これだ、どうしてだ、眺野氏
もう少し待ってくれていたら、景色はいつの間にか、ボロボロの学校に代わっていた。
彼に追いついた場所は、彼らが最後に発見された場所
「眺野さん・・・」
小さな少年はうずくまり涙を流している、あの日の再現を見ているようだ
「まだ、証拠が不十分だが、犯人の大方の見当はついた、ここから、皆を開放してやれる」
少年はこちらを見ない、聞こえていないのだろうか?
「もうすこし、待て欲しい、必ず、見つけてみせる、貴方の苦しみも、彼らの悲しみも全部、犯人にぶつけてやる・・・・」
彼は、あの事件の日で、時が止まってしまっている。
身体と心の時間ずれが、彼の中で起こっている、この現象がその証拠なのだろう、
俺は後ろを振り返る、そこに見えたのは、死して行ってしまった彼の仲間たちだ。
「・・・・・お前たちを殺した男を、必ず、この場に引きずり出して合わせてやるよ」
不安そうな顔をしている、彼らにそう告げてやる、
すると、世界は切り替わった。
おれは、校庭に立っていた、そして、携帯を取出し、木島たちに連絡を取った。
「ああ、頼んだ、見つかりそうか?」
『ああ・・・今、何とか探している・・・・なぁ、本当に可能なのか・・・・・』
「ああ、死体の確認など、普通では無理だろう?彼らは医者でも警察でもないのだから」
『・・・・・』
「納得させてやる、まぁ、見つかればいいんだがな・・・・」
『・・・・・必ず、みつける・・・・』
そう言って、木島は電話切った。
着信履歴を見ると、朝日から何度も連絡が来ていた。
「おお・・・・朝日」
『おまえ!!どこに行ってたんだよ!!』
「ああ、悪い、起草高校の校庭にいる」
『はぁ!?どうやって、そんなとこまで行ったんだよ!!お前何!?ホントに超能力者なの!!?』
「あああー!!もう、うるさい!!さっさと迎えに来い!!まだ調べたいことがあるんだ!!」
そう言って携帯をぶった切ってやった。
数十分後、ようやく、朝日は迎えにきた。
旅館に帰って、遺留品、遺留物のリストと現場写真を眺める。
玄関のカギは、彼らが発見された最後の場所の机の上に置いてあった。
真っ二つ二つに壊れた鍵、床で寝ていた彼らは、最後までそれに気づけなかったのも仕方がない
「・・・・・」
「なぁ・・・おふろ、いこーよ!!」
「もうちょっとな・・・」
リストの中には、が愚性が持っていて当たり前の物は全部あった、が、一つだけない物がある、谷真音の私物が足りない気がした。
「・・・・・・」
彼らの私物は職員室の前に乱雑に置き去りにされていた。
そりゃそうだろう、死体を見た後、逃げ回ったりしていたんだ、持ち物など気にしている暇などなかっただろう、だとすれば、犯人が何かを盗むのも楽だっただろう、
やはり、異常なほど彼女に執着している犯人
「でもさぁ、裏口とかあったのに、何で使わなかったんだろう?」
「裏口という選択肢が頭になかったんだろう」
「えー」
「それがあると認識していても、普段使わない物がそう思いつくわけがない、もし思いついたとしても、犯人はそれを阻止しただろう・・・」
「ああ・・・・なんていうか、もっと冷静になれれば、こんなに犠牲は出なかったのかな・・・・」
「・・・・あのなぁ、同じ状況でお前にそれができるのか?」
「・でき・・・・・・・ないかもしれない・・・」
「そう言う事だ・・・」
どれだけ冷静になったところで、やはり焦りが出る、人が死んでいるという恐怖も重なって、ホントの意味での冷静というものになれる奴はそうは居ない、それは、大人であろうとこどもであろうと変わらないのだから、
「なぁ・・・・」
「なんだよ・・・・集中させろよ!」
「許せないな・・・」
それは、ホントに朝日だっただろうか
アイツからは、想像もできないほどの嫌悪の言葉だった。
「・・・・・当たり前だろう、人を殺してんだ、許されていいわけがない・・・」
「だよな・・・・でも、死んでなくてよかったな・・・」
「・・・・・朝日・・・?」
「だって、死んでたら、捕まえられなかっただろ、だから、生きててよかったなって・・・・」
「・・・・死んだとしても、地獄を見ることになっただろうがな・・・・」
「・・・・・・」
罪を自覚させる、それが俺たちの役目になるだろう
二度とぬぐえない罪を教えてやらねばならない、それを彼らは望んでいるはずだ、
再び、証拠品たちに目をやろうと思った時だった。
木島から連絡があった。
見つかったという知らせだった。
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