第9話 side:A 生存者たち
異様な写真、それは
外傷もなく、気づつけられたと言えば首についている、手の後だけだが、そのほかは何の傷もない、パッと見てもただ、眠っているようにしか見えない
「死体だけど、きれいだね」
「ああ・・・・異様だ」
「毒の種類はなんだった?」
「ニコチンだ」
「え・・・ニコチンって、死ぬに至るほど強いの・・・・!」
「タバコみたいに管理された物なら、多少の依存性は出るが大したものじゃない、だが、量を守らずに口にしたら、死に至る、危険なものだ、守ってさえいればおっさんの気分転換品にはちょうどいいんだよ・・・・」
「へー・・・・」
「こんなこと言ったら、たばこ廃止が強まるだろうが、一部が守っていないだけでたいていの人は規則を守っているんだから許してやれよって、吸うなというなら、そもそもつっくている国に言えって言うんだ・・・・」
「おまえねぇ~・・・・」
「だが、ニコチンなら誰だって手に入る、溶液にして、コップに塗ったという事になる」
「最初から二人を狙ったのかな・・・?」
「いや・・・ほかのコップからは微量の睡眠薬が検出されている、誰でもよかったと考えた方がいいだろう」
「でも・・・眺野さんのコップからは検出されなかったんだよね」
「ああ、彼は一度、コップに水を入れて、濯いだらしい、だから、消えてしまったのだろう」
「よくできたね・・・」
「癖という奴だろうな、いつもしていることをやった、無意識に一度流そうと考えた、だから、犯人に頭を殴られたのだろう・・・」
「そんな被害にあってるのに犯人だなんて・・・やっぱり変だ!」
「ああ、だから、会いに行くんだろう、生存者たちに」
俺たちが向かっているのは、とある家、安道 勝弘、眺野先輩で、生き残った一人だ
今は犯罪カウンセラーと犯罪心理学の教授になっている
彼の自宅は故郷より離れてしまっているがそんなに遠くはない大学の近くの一軒家に住んでいる、チャイムを鳴らすと奥さんらしき人が入れてくれた
「すみません、お忙しい中、話を聞かせてくださって・・・」
「いや、構わない、この事件の真相が知れるのならいくらでも・・・」
そういって、客間の迎えの椅子に座ったのは、眼鏡をかけた初老の男性、彼があの事件を生き残り、安道先輩だ
「なぜ、カウンセラーを・・・・?」
朝日がそう聞いた、いきなり事件の事を聞くのはさすがに気が引けたのだろうか、彼は肩の力を抜いて話し始めた。
「ああ・・・まぁ、あまり、かっこいい理由ではないんだよ・・・・」
「え」
「あの事件があったから、他の人に同じ思いをさせないようにとか、まったくそんなんじゃあないんだ、犯罪心理学の学者もしているからな・・・・ただ、あの時の犯人の心理状態を知りたくて・・・・・いや、あの時の自分では気づけない物に気付きたくて・・・・」
「そうだったんですか・・・・」
「ああ、眺野君は、犯人ではない・・・彼はずっと、私達といたのだから・・・・」
「何か、気になるようなことは、ありませんでしたか?」
朝日がそう聞くと少し考えるようにして、話を続けた。
「ああ・・・・一つだけ、気になることがあった。木村が死ぬ直前に家庭科室の窓を見て、どうしてと口にしたのだ・・・・それがなんだったのか、わたしにはわからない・・・もしかしたら、眺野君が何か聞いているのかもしれない・・・」
「なに・・・!」
「そ、そんなこと一言も!」
「そうなのか・・・・彼はまだ、貴方たちを信じてはいないのだね・・・」
その発言に驚くしかなかった。
人のよさそうにしていた彼は俺たちの事を信用してくれていなかったと、彼が語った事件に不自然なところはなかった、なるほど、彼は数個の真実を隠して話したようだ。
「そんな・・・」
「まぁ、仕方ないか・・・・」
「ああ・・・、大人に寄って集って、犯人扱いされたんだ、致し方ないだろうな・・・・」
高校生のころに着いた心の傷が彼にそうさせているのだろう
信用できない、信用するに値する人はだれか、彼は見きわめている、暗闇の牢獄で彼はじっと何かを見据えている。
「あなた方が見つけた品は、貴方たちが眠ってしまった後になくなっていたんですよね・・・・」
「ああ、写真は私が持っていた、手紙は眺野君が持っていたよ、だが、目を覚ましたらそれらがなかった・・・・」
「谷真音、の現場写真を見ました。あれは不可思議です、今のあなたには何か分かりますか?」
「・・・・・・ああ、彼女の死体はとてもきれいだ、初めて目撃した時、眺野君が泣いていたから、死んでしまったのだと察しがついた事を覚えている・・・・あれは、犯罪心理学で見ても、おそらく、谷に・・・・深い愛情のような物を持っていたのでは・・・・ないだろうか・・・・」
「愛情?殺しているのに?」
「ああ・・・不可解だが、少なからず、谷に対して好意を抱いている人物だと思っている・・・」
「心当たりは・・・・?」
「・・・・・眺野君は、少なからず、谷の事が好きだったのではないだろうかね・・・・」
「へー・・・・・え!!」
「疑われる要素があると・・・・」
「まぁ、だが、犯人のような異常じゃない、憧れにも似たものだったはずだ・・・だから、ありえない・・・」
犯人と眺野は同じ少女に好意を持っていた。
皆の居場所をどうやって知ったのか、なぜ、証拠品を奪えたのか、調べる必要がある
「貴重なお話、ありがとうございます、」
「いや、いいさ、その代り、どうか、真犯人を見つけてくれないか、眺野君のためにも、死んでしまったみんなのためにも・・・・」
「ええ、そのつもりです」
収穫は少ないが、犯人の影が少しだけ見えてきた気がする
次に会いに行ったのは、弁護士をしている、眺野、安道の後輩の水谷 菫に会いに来た。
「貴方たちですか・・・あの事件の事を聞きたがっているという人は・・・」
「はい・・・」
「忙しい中申し訳ない、だが、聴きたいのだ、あの日の事を今のあなたが見て、なにか、発見はないか・・・?」
彼女は俺たちを訝しげに見つめる
不審を抱かれるのはわかっていたが、そんな事を気にしている暇はないので、質問をする。
「・・・・・眺野先輩は犯人じゃない・・・学校の中で私達に見つからないようにどうやって、皆を殺したのか、居場所をどうやって割り出したのかが、いまだにわからない」
「安道氏は、犯人は谷真音に好意を持っているのかもしれないと言っていた。」
二人そろって眺野は、犯人ではないという、ここで、安道氏から聞いた事をぶつけてみる
「え・・・?」
「谷真音は、そんなに好かれる人物だったのか・・・?」
「なぜ、そんなことを・・・?」
まぁ、きゅにこんなことを聞かれたら困るのはわかっている、だが、実際どうなのだろうか知りたかった。
「いや、そんなに、好かれる要因があるような人物だったのかと思ってな、男から聞くと良いところしか聞けないから、女のあんたなら、脚色なしで聞けそうだったからな」
「・・・・・・谷先輩は・・・・確かにみんなに好かれるような人でした、後輩の私たちの事をよく気遣ってくれました、でも、女性としては、ちょっと勇敢過ぎるところもあったと思います、あの日だって、彼女は積極的に探索などに行っていましたから・・・・私たちはそれで疑ってしまったこともありました・・・でも、いい人で・・・女子からも男子からも好かれる人でしたよ」
「なるほど・・・・」
好意を持たれる、憧れられる先輩、生きていたら、誰か知らに告白されたのかもしれない
みんなから惜しまれる少女は、無残にも首を絞められなくなってしまった。
今まで道具を使って殺されていた者たちとは違い、彼女は犯人自身の手で殺されている、なるほど、好意を持たれていたと思って間違いないようだ
「あなたは、手紙の内容を見なかったのですか?」
「ええ、あの頃の私にはそれを聞きに行く勇気は、ありませんでした・・・・あとから聞いて、驚きました・・・・聞かなくてよかったと思いましたけど・・・聞いておけばよかったとも・・・おもいました・・・」
「拾った写真を見たときどう思いました?」
「あの頃は、気持ちが悪いとただそれだけでした・・・でも、今なら・・・・あれは、谷先輩はストーカーされていたのではないかと思っています・・・・」
「ほう、学校の関係者の中にいるとでも・・・?」
「それは・・・・分かりません・・・・」
「いや、貴重な意見ありがとうございます、弁護頑張ってください」
「新しい、証拠が見つからない以上、眺野先輩をあそこから出してあげることはできません・・・・」
「・・・・・お任せください、必ずや、彼を救ってみせます」
彼女は今、眺野の弁護をしている、冤罪だと必死に訴えている、だが、新しい証拠も何も出てこないのでどうすることもできずに止まってしまっているのだ。
彼女にお願いして面会の許可をお願いした、再び眺野さんがいる、刑務所へと足を踏む入れた。
「やぁ、探偵さん、なにか分かりましたか?」
彼はなんでもないような顔でガラスの向こうから言う。
「眺野さん・・・・あなた、僕らに話してない事がありますね・・・・」
「何のことですか?」
「木村氏が最後に何か、貴方に言いませんでしたか?」
「ああ・・・・それですか・・・・」
「木村氏は最後に何かを見たと、安道氏が言っていたぞ・・・」
「先輩たちから話を聞いたんですか・・・・」
「ええ、現場にも行って、刑事さんたちからも話を聞きました、お願いです、話してください!!」
朝日は信じてほしいと言うように彼に詰め寄った。
一瞬俺の眼は、灰色の世界を捕えた、それを自覚した瞬間、世界は切り替わる
灰色の世界、目の前のガラスの壁はなくなり、鉄ので仕切られている。
その向こうに少年の姿がそこにあった。
「・・・・・眺野・・・・さん・・・・?」
「ああ・・・あなたも、この世界を観れるんだね」
「なぜ・・・あなたまで・・・・」
おれしか見えないと思っていた世界を彼は見ることができるようだ、俺は驚いたが彼は大したリアクションを取らなかった。
「そうか・・・なら、貴方だけに話すよ」
「え・・・・」
「木村先輩は、最後に言った、誰かまではわからないし、瀕死の状態だったから聞き取れなかったけど・・・・しんでないと言ったんだ、そして、僕は頭を殴られた後、犯人の足を見た、室内なのにスニーカーを履いていた、先生の中でスニーカーを室内用に使っている人はいたけど、少なくとも僕の知っているスニーカーではなかったと記憶している、木村先輩の最後の言葉を合わせても、あり得る話なのかもしれない・・・・」
「それらは・・・警察には・・・・?」
何故そんな大事な証言を今言うのか、そしてそれをちゃんと口にしたのか聞いた。
「言ったよ、でも、信じてもらえなかった、子供の戯言だとみんなの証言もぜんぶ、取り下げられた・・・・言う必要など、今までなかったのさ」
「・・・・・・ッ」
急に景色は戻った、朝日は心配そうな顔で俺を見ていた、ふと向こう側を見ると眺野さんが部屋を出て行こうとしていた。
「眺野さん!!」
そう呼びかけるとこちらを向いて、何かを伝えようと口を動かして笑った。
「・・・・・きく・・・?」
「・・・・・朝日、絶対に暴くぞ・・・・」
「・・・おう!」
彼が最後に行ったのは、頼んだよだった。
俺たちは面会室を出て、再び現場の旅館へと戻って行った。
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