第8話 side:B 終わりの陽

二年A組の教室で、僕らは留まっていた。


「・・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・・」


みんな、会話さえしなかった。

みんな、死んでしまった、僕らが少し離れた隙に、

なぜこんなことができる?ホントに犯人は人間なのか?もしかして、僕らを襲っているのは

超生物とか漫画に出てくるようなモンスターたちなのでは?そうなったらもう、僕らではどうすることもできないじゃないか

そう考えていた時、安道先輩と木村先輩が僕らに近づいてきた。


「谷、眺野君」


「君らが見つけたというものを教えてほしい」


「・・・・・・」


「・・・・覚悟があっての事なのね・・・まぁ、遅かったかもしれないけど・・・」


僕は何も言えなかったが、谷先輩は二人の顔を見て、僕の方を見た、僕は彼女に任せた

僕はポケットから、折り手紙を谷先輩に渡した、谷先輩はそれを二人に見せた


「これは・・・・!」


「なるほど・・・・」


安道先輩は驚き、木村先輩は何かに納得してた。

おそらく、谷先輩が公にできないという理由が分かったのだろう


「これでは・・・まるで!!」


「ああ、俺たちはこれの見せしめか、鬱憤晴らしにつき合わされたという事だ・・・」


「最悪ね・・・ほんと・・・」


「・・・・・・」


単なる自分勝手な理由でみんな殺された、ここまで来たらもう、そうとしか考えられなかった。

彼らが死んだことに何の意味もないだなんて、こんな事、現実に会っていい事なのか?


「やっぱり、僕ら以外の誰かがいるんでしょうか・・・」


「・・・それについては、分からない、だが、犯人は俺たちの行動を読んでいる、俺たちはずっと、どこからか、監視されているのかもしれない・・・」


「・・・・・そんな・・・」


先輩たちと真剣な話をしていた時だった。


「あのー・・・・」


久世さんが僕らに声をかけてきた。


「どうした?」


「いや・・・・のど・・・乾きません・・・?家庭科室に行って、水か何か、飲みに行きませんか・・・・?」


確かに閉じ込められてから、何も口にしていない事に気がついた。

後輩からの提案、だが、出て大丈夫なのだろうかと不安になっていたが。


「そうだな・・・落ち着くためにも、一息入れたいな」


「ああ・・・走り回ってるし、何か口にしたいな・・・」


「私も・・・何かのみたい」


みんな、ここまで極限状態だったからその欲求を自覚した時点で遅かった。

僕もそういえばと思って何かのみたいと思ってしまった。

はぐれなければ、襲われないはずだとおもい、皆で家庭科室へと足を向けた。


「・・・・・・」


「木村先輩・・・?」


向かう途中で急に後ろをじっと見だした、木村先輩に声をかけた。


「ああ・・・・視線を感じてな・・・・気のせいかもしれないが・・・・なんとなく、嫌なものを感じて・・・・」


「・・・・・・」


木村先輩のみていた方を見るが人がいるような様子はなかった。


「気のせいだろう・・・・警戒は怠れないが、はぐれるわけには行かないからな・・・」


そう言って、みんなの後を追った、木村先輩は回を降りるごとに後ろを警戒した、僕も周囲を警戒して、先輩たちと家庭科室へと向かった。

水谷さんが鍵を開け、中へと入る、誰も入ってこないように内側から鍵をかけた。


食器棚からいくつかコップを出して、皆に行き渡るように渡した。

それぞれ、好きな場所の水道から水をコップに入れた、僕はつい癖で一回入れて、それを流してから、コップに水を溜めた。


「いただきます」


こっそり出た言葉を合図にみんなで水を一気飲みした、自覚してはいたが冷たく、味のない水が今は心地よく、のどに潤いが戻るのが自分でもわかるほど、おいしかった。


「うっ!!」


「ぐっ!?」


だが、それは急に襲ってきた。


「木村君!?」


「久世ちゃん!?」


木村先輩と久世さんが急に喉を抑えて苦しみ始めたのだ、行くが荒くなり、顔色がどんどん悪くなる、木村先輩は後ろにあった水道に向かった、口の中に入った何かを出そうとしたのだろう。


「久世ちゃん!!」


「久世さん!!」


その声に振り返った、久世さんはその場に倒れてしまっていた、苦しいのかピクピクと体が痙攣した後、動かなくなった口には白い泡がついていた。


「・・・・ぁ・・・・あ・・・・・いやああああああああああああ――――――――っ!!」


「木村!!しっかりしろ!」


「ぐぅ・・・・おえ・・・・・がっ・・・・・・・ぁ・・・・・っ!!」


安道先輩が呼び掛ける、何とか意識を保っていた、木村先輩は顔あげ、水道側の窓を凝視した。


「ど・・・う・・・・・し・・・・て・・・・・」


「木村?」


「水谷さん!!待って!!」


水谷さんは家庭科室を出て行ってしまいそうだったのを谷先輩が抑えている


「安道先輩!!水谷さんの方をお願いします!!」


「だ、だが・・・!」


「いいから、行って!!」


「あ、ああ・・・」


二人を安道先輩に任せた、僕では二人を守れる気がしないから

木村先輩は地面に座り込んでもう、動くこともできなくなっていた


「木村先輩!!先輩!!しっかしりてください!!」


「ちょ・・・・うの・・・・・・みん・・・・なを・・・・まもれ・・・・・!!」


「でも!!先輩が・・・・・!!」


「俺は・・・・もう・・・・むりだ・・・・・」


かすれた声で言う、先輩はもう、頼りになったあの面影はない、息をしてもどこからか漏れているようにどんどんしぼんで行くようなそんな変化を彼の肩にかけた手から感じていた。


「ちょう・・・・の・・・・しんで・・・・ない・・・・」


「え・・・・」


「・・・・・・人・・・・しんで・・・・・ない・・・・みん・・・・・なを・・・・・・・・ま・・・・・・もれ・・・・・」


ところどころ、息が抜けて聞こえなかった。


「先輩・・・?なんです!?何が言いたいんですか!!だれが、死んでないんですか!!先輩!!」


「・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・みんなを・・・・・・・・つれて・・・・にげろ!!」


そう言って先輩は僕の手を振り払って、扉の方へと思いっきり押し出された。

その力は弱っていても年上なんだと思わせる物だった、水道に背を預け、僕の方を見て何かを伝えようと口を動かして、止まった。


「      いやだあああああああああああああああああああああああああああああ!!」


初めて叫んだ、僕は叫んだ

どうしてだ、何でだ、なぜみんなが死ななければならないんだ、何も悪い事なんてしてないのに、どうして、どうしてこんなことができる?

皆の未来を奪った奴は人間じゃない、こんなことができる奴はもう、同じ人じゃない

誰でも構わない、僕は犯人を許さない

そんな怒りが心を支配していた、だが、木村先輩の言葉がそれを止めた。


「・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・」


顔を上げれば、優し顔で眠ってしまった先輩が見えた、僕は立ち上がった。

もう、誰も、犠牲にさせない、これ以上誰かを失いたくない、大切な人たちを失いたくない。


「きゃああああああ!!」


その時、声が聞こえた。

僕はそっちへと走った、途中でロッカーの中からほうきを取り出して、向かった。

もう誰も襲わせはしない、走った間に合ってほしくて、走った、戦わせてほしいって、はしった。普段は何でもない廊下が今はゲームのダンジョンのような回廊に思えてきた、

たどり着いたのは、さっきまでいた、二年の僕のクラスの教室だった。

扉を開けた。


そこにはなんともない三人がいた。


「・・・・・・今の・・・・ひめいは・・・?」


「水谷が、俺たちに驚いてな・・・・」


どうやら違ったらしい、一気に走って来たから疲れがどっと襲ってきた。


「・・・・・・驚かせないでください・・・・」


「スマン・・・・・・・・・?」


急に安道先輩が膝をついた。


「え・・・」


「安道くん・・・・?」


「先輩?」


先輩二人が急に床に膝をつき、意識が混同していた。


「あ・・・・れ・・・・・・」


「ね・・・・むい・・・・・」


そう言って二人は倒れてしまった。

よく見ると水谷さんも目を閉じていた。

二人も眠ってしまった、どうしたというのか、僕にはわからなかった。


「先輩!?先輩!!どうしたんですか!!水谷さんも!!」


皆を起こそうと揺らしたが起きる様子がなかった。

嫌な予感がして、必死に起こそうとしただが、僕は自分の後ろに人の気配を感じた。


「―――――――っ!・・・・・ぐっ!!」


後ろを振り返ろうとした瞬間に頭を衝撃が襲った。

その場に倒れてしまう、意識が切れる直前、犯人は谷先輩の方へと向かっていた。


「・・・・・や・・・・・め・・・・・ろ・・・・・・」


僕はそう言って、暗闇に堕ちてしまった。


次に目を覚ました時、美しい朝の光が瞳に入った。

あの出来事がすべて夢だったような心地で、僕は仰向けからうつ伏せになって起きようとした。


「・・・・・谷・・・・先輩・・・・?」


目の前に谷先輩が写った。

彼女も眠っているようだと思った。


「谷先輩・・・・・谷先輩・・・?谷先輩・・・・っ!!」


起きてもらおうと呼びかけた、でも彼女は起きなかった。

恐る恐る彼女の手に触った。

冷たかった。

まるで氷を触っているような冷たさだった。

頭が痛い、なぜ、どうして、あれは夢のはずじゃあ・・・。


「先輩・・・・・そんな・・・・・ぼくは・・・・」


夢じゃない、全部現実だ、目の前にまるで眠っているような美しい彼女はもう、話さない、何も言ってくれない、僕は、守れなかった。


「僕は・・・・・あなたの事・・・・・・」


それ以上、言葉を紡げなかった。

悔しくて、悲しくて、どうして自分は生きているのか、なぜ彼女が死んでしまったのか

訳が分からないまま、僕は嗚咽を漏らした。


ようやく学校に人が来て職員室の死体を見たのか、警察が来た。

そのサイレンで水谷さん、安道先輩が起きた。

彼らは生きていた事に、よかったと三人で言い合った、だが《ルビを入力…ルビを入力…》嬉しさはなかった。

それから数か月後、僕は犯人として捕まった。

そして、僕の前にしがない探偵と名乗る人が現れた。




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