第5話 side:A 現場

警察署へ行き、受付で名刺を差し出しながらこの人いるかと聞いた。


「木島に何かご用でしょうか?」


「ああ、とある事件について聞きたいことがある、繋いでもらえるか?」


「木島はいま・・・」


「オレに何か、用か?」


受付の人が何かを言いかけた時、後ろから声を掛けられる、振り返ると黒いスーツに身を包んだ顔つきが明らかに刑事向きじゃない人が立っていた。


「木島夏男だな?」


「ああ」


「起草高等学校の事件について、聴きたいことがある」


「ほーう、オタク、何者?」


「しがない探偵だ、火里という警官を知っているだろうか?」


「・・・ああ、その事件で親身してくれた人だ」


「その人から、あんたに聞いた方がいいだろうと・・・」


「・・・・・・なぜその事件を?」


「依頼でな、真相を探してほしいと」


「・・・いいだろう、ちょいとついて来い」


恐ろしいにらみ合いと探り合いの末、木島がそう言って、後ろを振り返って歩き出した、俺たちは彼の後を追って歩き始める。


「オタクら、車持ってる?」


「ああ、こいつのだがあるぞ」


「ちょ・・・」


「なら・・・学校に行っててくれ、後から行く」


そう言って木島は戻って行ってしまった。

戸惑いながらもオ俺たちは学校へと向かった。


起草高等学校きそうこうとうがっこう私立の学校、この辺りではそれなりの成績で通っている、校舎はそこまで大きくはないが、広そうな体育館に広い運動場が特徴的な場所だ、校舎の窓からはきっと、周りの田んぼや稲穂が見えて時期が来ればそれなにり見栄えがあっただろう。

しばらく待っていると黒塗りの車が到着する、扉が開き、そこから出てきたのは木島と見知らぬ初老のスーツの男だった。


「その人は?」


「ああ、こちらは隣道広となり みちひろ警部だ、俺の先輩でもう、定年退職された方だが、この事件を今でも調査している人だ」


「・・・ずいぶんと、気前がいいな」


「ああ、まぁな、正直、もう俺たちじゃあ、どうしようもねぇんだよ、証拠は確かにある、だが、納得ができねぇ、アイツが犯人だなんて、納得ができねぇんだよ!だが、もう俺たちじゃあ、新しい事を見つけられない、だから、あんたに縋ろうかと思ってな・・・悔しいがな」


「・・・いいのですか?もし、真犯人がいたら・・・」


「ああ、そうなったときのために覚悟はしてる、だが、オレは奴がやったという納得か、本当の犯人がやったという納得がしてぇんだよ!そのためなら階級なんかどうでもいいんだよ・・」


彼らは彼らなりに必死で捜査をした、だが、その結果は納得できるようなものではなかったと語る、そうなるとこの事件の犯人は相当頭がいいのだろうか?


「お前たちの期待に添えるかは分からないが、努力しよう」


俺たちは惨劇が起きた、現場へと入っていた。


「生き残った、安道、水谷が言うには、体育祭の片づけを終わらせて、帰ろうとしたら玄関が閉まっていたらしい、で、最初の被害者、遠藤と神崎がその鍵を取りに行って、帰ってこないのを不審に思っていると花隅という先生が来て、林という生徒と一緒に探しに行ってくれたらしい」


「が、二人とも帰ってこず、職員室で死んでいた・・・」


「ああ、残っていた教師二人が席を外して誰もいない隙に・・・」


現場はそのまま、死体があった場所には、おびただしい血が残っていた。


「うわぁ・・・・・」


「・・・・・・・・」


「胸を一突きで、刺され二人とも死んでいたらしい」


「一撃か?」


「ああ、心臓は逸れてたが肺を、ショック死ってやつだな」


「・・・・っ・・・・」


その時、一瞬だけ、黒田が別のところを見たのに気づいた。


「きく?」


「っ・・・ああ、いや、なんでもない・・・」


声をかけるとそれに一瞬だけ肩を跳ねさせ、首を振る。

だが、オレにはわかった、俺はこいつを超能力者じゃあないかと疑っているんだ。

奴は時たま、ああやって別の場所を見つめると気があるんだ、きっと、俺らには見えない何かを見ているんだと思っている。

木島たちには見られていなかったようで次の現場へと案内される


「で、二年の教室、ここで、遠藤と神崎を探しに行った、花隅先生と林が死んでいたんだ」


「二人とも胸を刺されてか?」


「いや、林は胸だったが、花隅、教師の方は首を切られていた」


「・・・さすがに大人一人をやるのに胸を刺すことはできなかったのか・・・」


「よく、首を切れたな、相当な手練れか?」


「分からん前から切られているから後ろからやられたんだろうと推測されているがな」


「・・・・・・」


また、別の場所を見て、すぐに逸らした。

その次は、被害者たちが集まった図書室へ行き、ここから、四人が探索に出たと言っていた。


「眺野、谷、犬飼、塩田という教師を入れた、四人が二人ずつに別れ、玄関のカギを探すために探索に行ったらしい、三十分後帰ってきたのは、眺野と谷の両名だけだったらしい」


「それを聞いたみんなで一階へ行ったら・・・」


「首をつられて死んでいたそうだ・・・」


「塩田という教師は女だったのか?」


「ああ、抵抗もできなかったんだろうな、首を絞められて気絶させられた後に・・・」


「・・・・なるほど」


「生徒一人じゃあ、助けられずにか・・・」


「彼女らは何か持っていたか?」


「いや、何も持っていなかった、何の成果も得られなかったんだろうな・・・」


「・・・・そうか」


「よし、次だ」


そう言って、木島は教室を出て行く、隣と朝日も出てから俺も出て行こうとしたとき、急に後ろから首を引っ張られた。


「―――っ!!」


床に倒れ、息が苦しくなる、首を巻きつけるものを外そうと手を掛け、右目を開いた時、その塊は居た、泣いているのか笑っているのか、分からないがただずっと苦しい、タスケテを繰り替えしていた。


「はっなせっ!!オレに触るな!!」


そいつは聞かず、顔を俺に近づける


「おい!!やめろ!離れろ!!」


―苦しいタスケテ苦しいタスケテ苦しいタスケテ苦しいタスケテ苦しい――――


「―――っ!」


そいつと目があった、その瞬間、世界が一瞬にして変わった。

教室は血塗られ、灰色の世界が広がる、体は動かせられない、ただ見えるのは、誰かが座らされ首にロープを掛けられているという場面だった。


「・・・・・だれ?」


俺の見えている目線では顔が見えないが、誰かが動いている、足がチラリと見えた、だが、色のない世界では定かで色の判別はできない、人の大きさも顔もどんな人物かなどはわからないだが黒く汚らしい黒い灰が人間の形を成しているだけだった。


「だれだ・・・・?」


首にロープを掛けられた人の首にしっかりと巻きつけた後、垂れている方のロープを引っ張って、上へと上げた、制服ではないから塩田先生なのだろう、女の人の首つり死体が完成した。


ーいやだ・・・・死にたくない・・・タスケテ・・・・-


流れ込んでくる声はその悲しさを伝えようとする、だが、体は動かすことができず、ついにロープを持ったさっきの奴がこちらに近づき、首にロープが巻きつけられる


「だれなんだ・・・・お前は・・・だれだ・・・」


ーしにたくない・・・・-


そう声が聞こえて途絶えた、そのあと首が締まる感覚が伝わってきて、そこで意識は途絶えた。


「なぁ、きく!・・・・あれ・・・・?」


きくに聴きたいことがあって振り返ったとき、彼は後ろ居なかった、先ほどまでいた、一年の教室に入ると部屋の真ん中で倒れている、きくがいた。


「きく・・・?おい・・・・おい!!きく!・・・・きく!!」


うつろな目で意識のない彼の身体を揺さぶる。


「きく!・・・きく!!」


「あっ・・・・!」


ようやく、目を覚ましたきくは首に手で触ってから、あたりを見渡す、平気そうにしているが息は荒い。


「大丈夫か・・・・」


「ああ・・・すまない・・・ただのめまいだ・・・」


「ホントかよ・・・お前の特殊能力でも、発動したの?」


「なんだそれ・・・」


「で、何が見えたんだ?」


「・・・・・・・」


そう聞いても、彼は言ってくれない、だが、彼は僕らには見えない何かを見ているのは確かだった。


「おい・・・犯人でも見えたか?」


「いや・・・そんなものは見えない・・・・見えたのは罪の重さだけだ」


「罪の・・・・重さ?」


「・・・なんでもない、次に行くぞ」


答えをくれず、話しをぶった切って、足りあがるもふらりとバランスを崩しそうになる、それを見てあわてて支えてやる。


「おい!・・・・ホントに大丈夫かよ・・・・」


「・・・・ああ、すまない」


「何してんだよ、あんたら」


「来ないと思ったら、何かあったのかい?」


「いや・・・なんでもない、気にしないでくれ」


俺たちが来るのが遅いから引き返してきたのだろう、少し苛立った様子の木島と何か発見したのかと聞く、隣さんへの返事はいつもの素っ気ない言葉だった。

なんでもないようにこの部屋を出て行った。


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