side:B

第2話 side:B 悪夢の始まり

囚人は夢を見る。

それしかやることがなかった。

学校でみんなと仲がよさそうに微笑む彼女、そのあとすぐに死んでしまった彼女の顔が目の前に現れる。


「―――っ!」


悪夢だった。

だってそうだ、一度に何人もの人が死んだ、目の前で知らぬうちに、一番助けたかった人も死んでしまった、訳の分からないうちに僕は囚人にされた


「眺野、面会だ」


「・・・・・」


看守の人がそう言う、僕に会いに来る人などもういないはずだ、今更来たところで何の意味もないのに、手錠を掛けられ看守さんに導かれるままに面会室へと連れて行かれる、ガラス窓一枚隔てた、部屋に見知らぬ二人の男の人が座っていた。


「・・・・・・?」


「眺野さんですね、私はこういうものです。」


僕に見えるように名刺を見せてくれる。


「探偵さん?」


「はい、こっちは助手みたいなものなので気にしないで、ください」


「・・・・・・僕に何か?」


「あなたが犯人とされている、事件について調べてほしいと、貴方の後輩の一人から、真相を見つけてほしいと・・・」


「・・・・・そんな・・・」


「あなたの分かる範囲でいいので、事件の日、何があったのか教えてください」


信じていいのか、分からなかったでも、どうせ何も変わらないだろう話しても何の意味もない


「・・・・」


「言っておきますけど、俺はその辺の奴らの結論は聞かないタイプです、間違っているかもわからない結論をあたかも真実のように語る奴らは大っ嫌いなので・・・信用しろとはいいませんし、いりません、俺は、真相を見たいだけです。記憶があいまいな部分もあるでしょうが、わかる範囲でいいので教えてください」


「・・・・・・」


真剣な顔でその人は言った。

だから、話した、いや、話そう、僕が見たあの日の悪夢をどうか知ってほしい、そして、彼らを助けてほしい


「あれは、高校二年の体育祭が終わって、僕はそれの委員で片付けのために遅くまで残っていたんです」


あの日、体育祭が終わり、委員だった、僕たちは遅くまで残っていた。

田舎の高校だから生徒も二クラスに分けられるくらいしかいないので、委員も男子一人、女子一人の体育委員が二人ずつ残っていた。


「よーし、終わっていいぞ、鞄持って帰る用意しろー」


火村先生の掛け声で、僕らは各自の教室に戻って、荷物を取り入った、一階の玄関で三年一年もそろって、玄関から出ようとした。


「あれ?・・・」


「どうしたの?」


小林先輩がドアをガチャガチャしていたのを谷先輩が気づいて、近寄った。


「開かない!・・・開かないの!」


「貸してみろ・・・・ぬっ!!ほんとだ・・・開かない・・」


「えー、もう、誰よ、私たちがまだいるって言うのに閉めたの~!?」


小林先輩と同じクラスの安道先輩が確かめるが玄関は開かなかった。


「はぁー・・・仕方ない、職員室に鍵を取りに行ってくるよ、先生たちもいるかもしれないし」


「あ!、先輩、オレも付いて行きます!」


そう言いだしたのは僕と同級生で違うクラスの遠藤だった、その彼についていくと言ったのは一年の神崎君だった。


「そうだな一人は危ないし、二人で行ってくるよ」


「じゃあ、行ってきまーす!」


二人はそう言って、玄関から職員室のある方へと行ってしまった、だが、彼らが帰ってくることは無かった。

三十分くらい待っても彼らが帰ってこないことを不審に思い始めていた時だった。


「あれ?おまえら、何やっているんだ?」


そこに通りかかったのは、一年の担任の花隅先生が声をかけてきた。


「あ、先生、実は・・・」


これまでの経緯を花隅先生に話した。


「なるほど・・・確かに遅いな・・・よし、俺が見てこよう!」


「あ、なら、私も付いて行っていいですか?」


花隅先生が身に行ってくれると言ってくれた、遠藤と同じクラスの林さんがそれについていくと言い出して玄関から離れて行った。

それから、五分十分、と時間が過ぎた、だが二人は一向に帰ってくる気配がなかった。


「・・・遅い!いくらなんでも遅すぎる・・・」


「ねぇ・・みんなで見に行った方が・・・いいんじゃないですか?」


そう言いだしたのは水谷さんと彼女と同じクラスの細田君だった。


「そうだな・・・いくらなんでも、遅すぎる・・・ふざけているにしても先生までも帰ってこないのは変だ、見に行こう」


三年の木村先輩の一声でみんな、職員室へと向かったのだ、その途中の廊下で塩田先生と猫背先生に会った。


「おまえら、また、帰ってなかったのか?」


「何しているんの、もう、帰らないと・・・」


「先生、それが・・・」


木村先輩と同じクラスの谷先輩が先生たちに玄関があかないことを言って、生徒二人と花隅先生と生徒一人が帰ってこないことを言う


「え・・・遠藤君と神崎君に渡したはずなんだけど・・・」


「花隅先生と林は見ていないぞ」


「え・・・・」


先生たちが言うには、玄関があかないと神崎君と遠藤君は言いに来たらしい、玄関の鍵を渡して、職員室を出て行ったらしい、だが、僕らのもとにいない、花隅先生と林さんはもしかしたらそれを探しに行ったのかもしれない、そう思って僕らは四人を探すため別れて探していた、その時だった。


「きゃあああああああああああああああああ――――――――――――っ!!!」


「え、なんだ!?」


「今の声・・・塩田先生だ!!」


僕らは、声の聞こえた方へと走った。

すると、職員室の前で腰を抜かしている塩田先生と、その隣で唖然としている猫背先生がいた。


「先生、どうしたんですか!!」


「――――っ!!あ、安藤君・・・あれ・・・・」


「え・・・・」


「ひっ!!」


「な、なんで・・・・」


「・・・・うそだ・・・」


その光景は地獄だった。

職員室の机たちに囲まれるように床に転がり、胸にナイフが刺さった、遠藤先輩と神崎の無残な姿だった。


「だれが・・・・こんなことを・・・・」


「ひどい・・・」


「け、警察に・・・警察にでんわを・・・・」


塩田先生は動揺しながらも、学校の備え付けの受話器を手に取ったのだが


「あれ・・・つ、つながらない・・・なんで・・・」


「え・・・」


僕はその電話を塩田先生から取って耳にあてた、ツーツーとしか言わなかった。


「ねぇ・・・電話線・・・切られてるわよ・・・」


谷先輩がそう言って電話の線を持ち上げてみせてくれた、死体を避けてすべての電話を調べたが同じように切られていた。


「そんな・・・」


谷先輩は冷静に遠藤と神崎の顔にタオルをかぶせて、手を合わせた。


「谷先輩・・・」


「とにかく冷静に行動しないと・・・犯人の思惑にはまってしまう・・・」


谷先輩は、そう言ってくれたから僕も冷静になれた、だが、そのすぐ後にまた、叫び声が聞こえてきた。


「イヤアアアアアアアアア――――――っ!!」


「なにっ!?」


「・・・・水谷さん!!」


細田君がそう言って、別に分かれて探していた班の方へと走った、僕らもその後を追って走って行った二年B組の神崎のクラスの教室の前に水谷さん、久世さん、木村さんが、唖然と立ち尽くしていた。


「木村!!」


「あ・・・安藤・・・あ、あれ・・・」


「―――っ!!そんな・・・」


「・・・は、林さん・・・・」


僕と同じクラスの犬飼さんはその場に崩れ落ちた。

林さんの死体の横には大人の死体もあった、林さんは胸を、大人の死体、おそらく花隅先生は首を切られ死んでいた。


「いったい誰が・・・・」


「ひどい・・・」


花隅先生と一瞬見分けられなかったのは顔が机で見えなかったから、でも服装で彼だと分かったのだ、みんな立て続けに死体を見てしまったがために混乱をする


「だれよ!!誰がやったのよ!!こんなひどいこと!」


「俺たちなわけないだろう、さっきまで下にいたんだぞ!!」


「じゃあ、誰のせいだと!」


「落ち着け・・・取り合えず、ここから離れよう・・・」


木村さんのその声は届かず、皆、恐怖に支配されていく。


「落ち着いて!!」


そう声を荒げたのは谷先輩だった。


「とりあえず、大人数でいてもなところで安全な場所を創りましょう、先生たちと居ても大丈夫な場所に移動して、一旦落ち着こう!」


「はぁ?いくら先輩だからって言っても、こんな状況でどう落ち着けって言うのよ!!、何でそんな風に落ち着いていられるのよ!?」


犬飼さんが谷先輩に反論した。


「あんた頭おかしいんじゃない!?人が死んでるのよ!何が落ち着けよ!!まさか・・・あんたが殺したとか?」


「――っ!犬飼さん!!」


「やめろ!谷の言う通りだ・・・こんな状況で喧嘩なんかしてバラバラになったら、犯人の思うつぼだ・・・一旦落ち着こう・・・・」


「・・・・・」


後から来た、塩田先生が学校の鍵の束を持ってきてくれて、僕らは図書室を安全な場所にするため入って行った。



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