第13話 決意と軍師

リビウス・ドラグニアが消えてから1日経った。しかし、勇者 逹富愛はいまだに自室で考え事をしていた。


(リビウスさんは何故突然消えたのか。)


幾ら考えても分からない事を、私は考えていた。リビウスさんが消えた理由。それは状況から考えて、能力による攻撃を受けたのだろう。しかし、それはどんな能力か。どこかに飛ばされただけで、まだ生きてるのか。それとも、死んでしまっているのか。生存に対する希望と、それとは逆の大きな感情が脳の中で入り乱れる。

いや、本当は分かっていた。理解しているのに、認めたく無かった。リビウスさんはあの時、誰かの能力によって殺され・・・


「報告し・・す!魔王の・・・奇襲を・・」


王の部屋から聞こえて来た報告の声で、私の負の考えは途切れた。少し離れた所にある部屋にも届いてしまうほどの大声である。私はドアに耳を貼り付け、報告を聞き逃さない様にする。


「第四軍隊が、突如消滅しました!」


今日の朝出発した精鋭200名が、、、消滅? まさか、リビウスさんの様に? またもや嫌な考えが蘇る。だが、もしかしたらリビウスさんを消した敵が分かるかもしれない。もう1度報告に聞き耳を立てる。


「敵の数は?」


「王直属の精鋭勇者200名は、魔王軍のたった1人の人間によって消息を絶ちました。恐らくは能力者かと。」


!? 魔王軍は全員が魔物で構成されており、人間はいないはず。そこに人間がいたとすると・・・。


「山内君と陰地君。」


勇者側に来なかった2人の名前が浮かぶ。彼らの能力は知らないが、魔王軍にいる人間は彼らしかいないはずだ。リビウスさんの事はあまり知らないし、何時間も話した訳では無い。しかし彼の優しさは、私の心を動かすのに充分な理由になった。


(魔王軍を全滅させて、リビウスさんの仇を取る!)


そう決めた私の部屋の扉を、誰かが叩いた。ドアを開けると、そこにいたのは王だった。彼は私の顔を見て申し訳なさそうに告げる。


「君、軍師やってくれない?」

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