第12話 最強幹部会

腹一杯の僕は、城の中でも特に広い部屋「会議室」にいた。


「 どうしてこうなった・・・」


元の世界でも何度か聞いた言葉を口にしてみる。いや、本当は理由なんて分かっている。勇者軍に激怒して、敵の小隊を壊滅させたからだ。異世界に転送されてから2日で、僕は結構な手柄を立ててしまっていた。幾ら能力が強いからって、もう少し大人しくしとけば良かった。後悔先に立たずというやつを実感した。

そんな思いにふけっていると、次々に(多分)偉い魔物が部屋に入って来た。彼らは慣れた感じで机の周りにある椅子に座る。全員が椅子に座った所で、フロウさんが入って来た。ドルゲフさんは椅子の最前列に座っている。あれ?


(僕は座れないの?)


気がつくと、10あった椅子は全て埋まっている。みんなの視線が痛いほどに感じられる。注目を浴びるのは苦手だってのに。みんなの前の、ひときわ大きな椅子に座るフロウさんが手招きをしている。おいおい、勘弁してくれ。


「諸君! 今回この場に集まってもらったのは、ここにいるヤマウチ君を紹介するためだ! 彼はたったの2日間で敵軍師の首を取り、勇者の小隊を1人で撃退した。この功績を讃え、彼をこの軍の宰相にする事を私が決定した!」


って、独断で決定したの?こういうのってみんなで話し合ってから決めるもんじゃ無いの?僕と同じ様な意見の野次が周りからも・・・上がらなかった。椅子に座ったいかにも歴戦の猛者という感じの彼らは、まるで眠っているかの様に黙っていた。結局僕はこの会議で宰相として紹介され、ずっと戸惑ったままだった。

会議が終わってから話しかけてくれるのは、やっぱりドルゲフさんだった。異世界に来てからずっと彼の顔を見ている気がする。まあ、嫌いじゃ無いから良いんだけど。


「やあ、ヤマウチ君。さっきは災難だったな。」


「はい、いきなりの事だったんでびっくりしましたよ。でも、思ったより皆さん反論しませんでしたね。」


「反論?ああ、皆しないのでは無く、できないのさ。全員、フロウの能力を知っているからな。奴の能力は記憶にまで干渉する。奴のオモチャにならないために、どんな我儘や思いつきにも目をつむっているのさ。まあ、今回の決定に私は賛成だがね。」


ドルゲフさんに褒められたけど、僕は喜んでいられなかった。魔王の我儘に目をつむってるってことは、心の中ではどう思っているか分からないという事だ。背中に冷たい、嫌な感じが走る。こうして僕はめでたい事に、恐ろしい彼らの上にたったのだった。

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