第9話 魔王たる所以

「ん〜。うまい!美味しいプリンを買って来て、敵の主戦力の1人も倒してくるなんて、3人共お手柄だね!」


「有難きお言葉。」


魔王軍ナンバー1とナンバー2が、プリンを食べながら軽い会話をしている。魔王の方から一緒に食べようと誘って来たのだった。フロウさんは常にニコニコしていて、なぜ多くの者を従わせていられるのか気になりだした。

プリンを食べ終え、ドルゲフさんに場内を案内してもらう。彼には世話になりっぱなしだ。王の側近が、わざわざ新入りの案内をするのもおかしい気がしたが・・・・。


「この世界はおかしいか?」


突然投げかけられた質問に、僕達は対応できなかった。正直な話、おかしいと思っている。元いた世界では、世界を征服できる力を持っていたとしてもそれを実行する者はいないだろう。しかしこの世界では、あんなに優しそうな人が軍を率いて平和を壊そうとしているのだ。結局質問には答えられず、代わりに口から出たのは自分の疑問だった。


「なんであんなに優しそうなフロウさんが魔王をしてるんですか?」


この質問に、ドルゲフさんは少し驚いた顔をした。しかしすぐに元の真顔に戻り、フロウ・デザールについて語りだした、


「・・奴はもともと、私と同期の魔物だった。共に軍に入隊し、異形の者の国を守っていた。しかしある日、予想外の事で奴は変わってしまう。」


「?」


「能力の発現だ。私とやつは、後天的に能力者となったのだ。私の能力は他人を強化する物だったが、奴の能力は他人を簡単に傷つける事の出来る強力な物でな。」


「フロウさんの能力っていったい・・・,」


「奴の能力は「万物の長」。奴自身が秘密を教えた者を、目を離さない限り自在に操る事ができる。」


【魔王の部屋】


「勇者軍の捕虜1名、連れてまいりました。」


「ご苦労様。」


連れてこられた男性は、屈強な体から目に見えそうな程の国王への忠誠心が感じられる。いかにも勇者、という感じの人間だった。


「お前が魔王 フロウ・デザールか。俺に何をするつもりだ? 言っておくが、私は国のためにいかなる拷問にも・・・。」


「拷問? ハハハ。そんな事はしないよ。だって君は、これから自殺するんだからね。」


「自殺?俺はそんな事はしない。」


「最近捕虜の数が増えて来ちゃってね。こうして少しずつ減らして楽しんでるんだよ。それはそうと。私は今年で1253歳になるんだがね、恥ずかしい事につい300年前におねしょをしてしまったんだ。」


(こいつはなんの話をしている?論点が全く・・・)


彼の意識はここで途切れた。


「それじゃあ、自殺してみようか。」


目の前に投げられた刀を手に取り、彼は自分の命に終止符を打った。

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