第6話 敵の情勢①

目が覚ますと、全てが焼け、あちこちから黒煙が上がる世界にいた。肌に食い込む様なこの砂利の上には、私「達富愛(たつとみあい)」・「池田春樹(いけだはるき)」・「川本真大(かわもとまお)」・「安達美雨(あだちみう)」・「松本睿奈(まつもとえいな)」の5人が座り込んでいる。わけが分からない。昨日私は、あの不思議な部屋の寝袋で寝たはずだ。いや、あの不思議な部屋では何が起こっても不思議では無い。私はとりあえず落ち着こうとした。すると、、、


ジャリッ


鎧を着ていて金の短髪。男らしい戦士が近づいて来た。私達は怖れ、身構える。そんな険悪な雰囲気に気付いたのか、男は優しい声で私達に声をかけた。


「あなた達が、異世界から来たという勇者ですね?私はあなた達を迎えに来た「リビウス・ドラグニア」という者です。話は伺っておりますので、城まで付いて来てください。」


見た感じ悪い人では無い。気は抜けないが、ここがどこなのかも分からない以上、私達はリビウスさんに付いていくしか無かった。城への道中、周りにあるのは焼けた家と空き地だけで、人の気配はどこにも感じられなかった。

城は大きく、白いレンガでできていたが、やはり黒い焦げ跡を隠しきれず、戦争の劣勢を物語っていた。城の中は見た目通り広かったが、立派な床はほとんど負傷者で埋まっていた。怪我人の間を抜け、国王のもとへ向かう間、リビウスさんは詳しい自己紹介をしてくれた。


「改めて自己紹介をしておこう。さっきも言ったが、私の名前は「リビウス・ドラグニア」。リビウスと呼んでくれて構わない。能力は持っていないが、王に認めていただき、軍師として働いている。現在王は、病気で衰弱しておられるが、新しい勇者が来ると聞いて喜んでおられたよ。」


話を聞く限り私達は歓迎されているらしいが、本心は分からない。油断させておいて部屋に入った瞬間・・・なんて事もあるかも知れない。そんなことを考えている内に、王の部屋の扉に着いたらしい。その部屋は陽の光も届かない、薄暗い廊下の突き当たりにあった。リビウスさんがドアを開けたので、警戒しながら中に入る。しかし、その警戒はすぐに解かれた。さっきまでの廊下とは違い、部屋の端まで日が入る大きな窓と、その下にあるベッド。ただのそれだけしか無い部屋に、この国の王はいた。病気で弱り切った体を布団に入れ、寝転んだまま私達に微笑む。その姿は、私達の力を一気に抜いてしまった。

リビウスさんが王に挨拶をする前に、私の後ろから松本さんが歩き出した。真っ直ぐ進み、王の横で止まる。誰も、何も言う暇も無く、松本さんは王の前に手をかざした。


「健生の旋律(けんせいのしらべ)」


王は能力によって光に包まれ、目を開いたまま喋らなくなってしまった。

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