第4話 初めてのおつかい
この人(?)は何を言っているんだろう?あの案内人とは違って、僕達に死ねと言うのか?小さな恐怖と不安が生まれる。魔王様はさっきから笑顔のまま何も言わない。きっと、僕達の考えがまとまるのを待っていてくれているんだろう。
• • •
「プリン」
「え?」
魔王はいきなり口を開いた。どうやら僕達を待っていたのでは無く、話し出すタイミングを伺っていたらしい。
「プリン」
もう一度言われた。本格的に意味がわからない。こいつは何を言ってるんだ?側近はさっきから目を瞑ったまま何も言わない。長い沈黙の時間が流れた。なん分くらい経っただろう。いや、変な緊張感があったから、あまり時間は経っていないかもしれないが。
スッ。
ドルゲフが動いた。取り出したのは・・・地図。魔王はこの行動を読んでいたかの様に、ニコニコ顔で地面にスタンばっている。
「良いかい?現在地はここ。この森を抜けると私の城がある。しかし、君達にはその逆。北側にある勇者の拠点方向に行ってほしい。」
「それは、僕達に戦ってこい。と言う事ですか?」
「いやいや、確かに戦場に行ってこいとは言ったが、少し違うんだよ。君達には戦場の更に先。勇者側領土最前線の町【シャロンド】に向かってほしい。そこには危険に晒されながらも、勇者のために美味しいプリンを作り続ける店があるらしい。その評判は魔王の耳にも届く程でねえ〜。」
「もしかして・・・。」
「君達にはそれを買って来てほしい。」
相変わらずの素敵な笑顔だった。
フロウさんは、「2人だけで戦場の近くを抜けるのも不安だろう。」と言う事で、僕達にドルゲフさんをつけてくれた。今は、戦場近くの山の中腹あたりをこっそり歩いている。ドルゲフさんは怖いけど優しい人(?)で、何が起こるか分からないから常にバリアを張っておけ。と言ってくれた。陰地君は、体の周りの重力を外側に向けておけば、何者も寄せ付けないバリアを作ることができる。僕は、陰地君による重力攻撃も消滅させれるらしい。つまり、僕は他人による能力攻撃も防ぐ事が出来るのだ。
能力について考えていると、ドルゲフさんは急に立ち止まった。ちょうど、木々の間から戦場を見下ろせる場所である。
「どうやらここで、デザール様への手土産が手に入る様だ。」
意味が分からない。ここから見える物といえば、生い茂る森と、魔王軍と戦っている勇者くらいである。ん?勇者側に1人だけ、周りよりも遥かに派手な鎧を身に纏い、白い馬に乗り、周りに号令をかけている者がいる。
「あれは勇者側の軍師だ。武力に長け、頭も切れる故、相当手強い相手だが、お前達の能力ならば楽に打ち取れる。奴の首を持って帰れば、お前達にも大量の報酬が入るだろう。」
報酬。元々それが目当てでこちらに来たのだ。その為に敵を葬るなど、今の僕からすれば簡単な事だった。陰地君は乗り気では無かったが、少し話をすると力を貸してくれるという事になった。この子も人に流されるタイプらしい。
「だけど、この距離では能力を使っても届きませんし、たった3人であの大軍に向かって行くのも・・・。」
「安心しろ。私の能力でお前達を強化し、リスクを負わずに奴を打ち取る。」
そう言うとドルゲフさんは、僕達の後ろに回り、背中に手を置いた。目を見開き、彼は叫ぶ。
「怒号(どごう)!!!」
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