第16話背負う力
いつもどこかから見ててくれる俺の仲間の声援は頼もしかった。
ジャクバルトさんとの交渉が終わったあと、太陽が地平線から顔を出し始めた。
朝までに帰ることはできなかった。仕方ないか。彼らは強かった。
変身……いや、仮面をはずし、マントの内ポケットに入っている小さな鈴を取り出す。鈴はかなり汚れた銀色だが、この古い感じが結構気に入っている。
りん、りぃぃぃん
小さな鈴のどこからそんな大きな音が出るのか、というくらい高らかに音を奏でた。
鈴の余韻を楽しんでいると、ヒュイーッと口笛のような鳴き声が聞こえた。
鳴き声の主は『天ノ鳥通信』を発行している、天ノ鳥のものだ。
「ファミくん!」
「ピラク、お疲れ様」
俺のこの鈴で呼び出せるのは、ピラクという名の天ノ鳥だ。
「ファミくん、みんな、心配していると聞きましたよ」
ピラクは言った。俺は今マントで全身を覆っているので、傷は見えていない。だから、今はそれなりに心配されないだろう。
「悪いんだけど、しばらく帰れないかもしれないんだ。それを伝えておいてほしいんだけど、場所は明かさないでほしいんだ。じゃあ……」
そういって紙にメッセージを書いて、ピラクに渡す。
「これ、うちに持ってってくれる?今すぐ。代金は、今度で」
「わっかりました!」
ピラクは元気に返事をして、またヒュイーッと去っていった。
「じゃあ、ジャクバルトさん、よろしくお願いしますね」
仮面をまたつけながらいい、南アーチから里を出て行く。
正直、今すぐ意識が飛んでもおかしくないほど、ダメージを負っている。でも、ここで倒れるわけにはいけない。この問題を最後まで背負う義務が俺にはあるから。
再びザルンに向かうべく、最初に通った道を逆走。まだ夜が明けたばかりとはいえ、誰かに見つかるのは嫌だから、誰もいないようなルートを辿る。
体内時計で10分後、ザルンについた。
あの公園に、きっといるはず。
公園に向かうと、やっぱりラクターさんはいた。
「ラクターさん」
丸くなってロクくんと眠っていたらしいラクターさんは、耳をぴくりと動かした。
「……ファミくん……?」
そんなラクターさんに、俺はそっと耳打ちした。
「できる限り、早くファクタに来てくださいね。仲間は僕にまかせてください。……正午には来てくださいね」
一応同じようなことを書いた紙を置いておく。
そっとその場から離れ、もう一度、ピラクを呼び出す。
「ごめんピラク、大丈夫?」
「はい、大丈夫です! 今度はどうしたのですか?」
「この紙を、ファクタに住んでた風狼さんたちに配ってほしいんだ」
「任せてください!」
ヒュイーッ
ピラクが飛んでいったのを見届けると、俺は森に入った。
木々を飛び移り、雑草を掻き分け、川を越え。どれだけ急いでも、いつも20分はかかるこの場所は、俺の土地である。
正確に言うと、カイナにいちゃんから引き継いだ土地。
「お疲れ様、ファミくん」
「いや、実はまだ終わってはいないんだよね、ルーフィン」
白猫で、右前足の先と左耳とその周辺が薄い茶色になっている彼女は、本当に、カトルナさんにそっくりだ。
「また、お姉ちゃんにそっくりだ、とか思ったでしょ」
「あ……ごめん」
「いいよ。…よく言われるから」
ルーフィンは、カトルナさんの妹だ。
(つづく)
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