第17話俺の務め

みんなが平和に暮らせるなら、俺の何かが失われてもかまわない。



 カトルナさんの妹、ルーフィンは『五大星花』の『セイシン』、『草』の星力持ちである。

 何で俺の周りには星力持ちがこんなにいるのか……。カイナにいちゃんといい、ルーフィンといい……。ま、誰がどんな魔力を持っていたとしてもあんまり関係ないけど。

 で、なぜ俺がここに来たかというと……、

「食料を持っていくんでしょ」

そのとおり、……って

「なぜわかる!?」

「何でもお見通しよ」

ルーフィンが当ててしまったのでいう必要も無いが、俺はここに食料を取りに来た。ラクターに、「復興にも協力する」と言ったからには、ある程度の食料は用意しておかなければならないからな。

 そして、この土地では、ルーフィンにいろんな物を育ててもらっている。なんといっても彼女は、『星深』で、大地のスペシャリスト。この結構広い土地いっぱいでも、彼女だけでも何でもできてしまうのだ。

 「今日は、全部一箱ずつ持っていくよ」

「言うと思って、もう用意してるわよ」

ルーフィンの指すほうを見ると、箱がトロッコに20個ばかり積んである。本当に、何でもお見通し、か……。

 じゃあ、マントの下の傷も、見抜かれているのだろうか。

 「……どうしたの?」

「いや、何でもないよ」

俺はそう答えると、多少回復した魔力を使って氷のレールをファクタに向かって敷く。レールはきらきらと光の粉をまいて現れる。

 トロッコをレールの上に動かし、後ろから押す。

 すると、トロッコは氷の上をきれいに滑り始めた。

 しばしトロッコを見守ったあと、俺は、

「ありがとう。じゃ、またあとで」

とルーフィンに礼を言って、消えつつあるトロッコのレールを追いかけた。

 そして、再びファクタにつくと、まずは食料を里の中央に運び込む。

 ジャクバルトさんたちは里の片付けをしていた。

「ジャクバルトさん。お疲れ様です」

「ああ。もうすぐ正午だろう」

「はい。もうそろそろくると思います」

俺はそういって周りを見る。里はだいぶ片付いて、戦闘の跡がすっかりなくなっている。

 しだいに風邪の匂いが濃くなってきた。風系の魔力もかすかだが感じ取れる。すぐそこに、風狼がいる証。

 太陽がほとんど真上に来たかなと思ったとき、ラクターさんがファクタに来た。

 「ほ、本当に、やっと……」

放雷熊が襲ってこないからなのか、少し涙目になってつぶやいた。

「ありがとう、ファミくん。もう、なんとお礼を言ったらいいか……」

お礼を言うのはまだ早いと思うんだけどな。

 「お……、お前、ラクターか!?」

反対側、北アーチから入ってきた風狼たちのうちの誰かが、声をあげた。

「ジギィ……久しぶり、だな」

どうやら風狼の長らしいジギィさんとラクターさんは喜びで飛び上がった。

 「お母さん!」

「ロクっ!」

よかった、親子がみんな無事で。

 俺は、そっと里から抜け出した。

 外から、里の中を見る。

 ジャクバルトさんと、ジギィさんが、握手を交わしている。交渉が、うまくいったのかな。

 しばらく見ていると、急にジャクバルトさんとラクターさんがきょろきょろし始めた。どうやら、俺を探しているらしい。

 でも、ヒーローは目立ちすぎちゃいけないんだ。

 俺は、その場から動く。

 帰ろう。まだこれからが大変だけど、きっとうまくいく。あのふたりなら、必ず。

 ペンダントは、もう、割れてしまう。


(つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る