第5話クリス様降臨なのじゃ!
次に目覚めたのは、上下左右どこを見ても真っ白な世界だった。
とりあえず、体を動かしてみる事にしよう。
正拳突き!ふん!からの~回し蹴り!おりゃ!
「ふむ、初めてのVR空間だが驚く程に普段通りだな。」
目の前が薄く光、人の輪郭が浮かび上がってくる。
「ジャーン!皆の女神!クリス様降臨なのじゃ!」
光が収まると、そこには白いワンピースのような服を着て、金髪を肩まで伸ばした、青目のかわいいロリっ娘が、右手左手を指までまっすぐ伸ばし、右斜め上に掲げていた。シャキーン!というやつである。
「おお、君はクリスっていうのか!撫で撫でしてあげよう。ほら、撫で撫で~」
いきなり撫でてしまったが、本人が目を細めて気持ち良さそうにしているので、OKとしておこう、っていうかツルーン・ペターン・ストーンなのでジュニアはおっきしないから、大丈夫だ問題ない。
「にゃ~ん、気持ちいいのじゃ~.....ハッ!そうでは無い!これからキャラクター作成に移るからのう、にゃ~....ええい!撫でるでないわ!」
え?でも手を放したら残念そうにしてるよね?もう一回いっとく?撫で撫で~。
「にゅふふ~のふ~....これ!話が進まぬでは無いか!惜しいが止めよ!」
ふむ、仕方ないなここは一旦仕切り直すことにしよう。
「それじゃクリス、よろしく頼むよ。俺はユートだ」
両手を腰に当てて、無い胸を張りながら、ドヤ顔のロリっ娘が話し始める。
「任されたのじゃユート!それでは始めるぞ!まずは、外見の設定からじゃな」
「デフォルトで良いよ。特に弄りたい所も無いし、種族もヒューマンでいくからな。VR空間の中だけイケメンにして、親しくなった友人と会った時に、ギャップでがっかりさせたく無いしな」
え?何?何なのそのウンザリした顔は....そんなに俺は残念な顔してるっけ?
「世の中の9割が嫉妬マスクになるようなイケメンの癖に、この発言とは恐れ入ったのじゃ.....自覚して無いだけに、こやつに関わる女人には同情の余地ありじゃのう、これは参ったのじゃ」
何かブツブツ言ってるがスルーしておこう。うむ、その方が精神的にもいいんじゃないかな?
「次は種族じゃな。先ほどヒューマンで良いと言っておったが、それで良いのじゃな?」
「ああ、かまわないよ。尖った性能もいいけど、俺は種族に関しては、平凡平均が基本でね」
ちなみに、種族はヒューマン・エルフ・ドワーフ・獣人各種・ドラゴニアン・巨人族・神族・魔族・フェアリーが選択可能だ。
他にも、ファンタジー物には付き物の種族が存在するが、残りはNPC限定でプレイヤーは選択する事が出来ないようになっている。
ただし、要望が多かったり、今後の展開上解放してもいいかな?って思ったら種族変更アイテムや第2陣以降で選択可能になるかもね?とは社長の言葉である。
「その顔して、その絶妙なボディバランスで、平凡平均とかのう....まあいいのじゃ。次は初期パラメーターのボーナスポイントの振り分けなのじゃ!」
ユート(天城 勇人) 20歳
種族 ヒューマン
LV 1 職業 なし
HP 150
MP 100
力 10
体力 10
敏捷 9
知力 9
魔力 10
運
「10ポイントあるのじゃ、ステータスは1ポイントで1、HPとMPは1ポイントで10増やす事が出来るのじゃ。運は後で別の判定があるからスルー推奨なのじゃ」
ふむ、パラメーターは大切だが、俺が最も重視している物はHPである。とにかく、死なない事が重要だ。死ななければどうとでもなる、が俺のゲーム内での口癖だ。
だから当然こうなるわけだ。
ユート(天城 勇人) 20歳
種族 ヒューマン
LV 1 職業 なし
HP 250
MP 100
力 10
体力 10
敏捷 9
知力 9
魔力 10
運
「HP極振りなのじゃ~、ちなみに現在設定が終了しているプレイヤーの中ではユートだけなのじゃ、30万人いるのにユートだけなのじゃ」
それはそうだろう。事前調査では、最大HP増加アイテムが最も入手し易く、プレイの初期段階では攻撃力の高いモンスターは少な目である。
更に、回復アイテムの種類も潤沢にあるから、使用後のクールタイムを気にする必要が無いし、初心者用の回復薬が大量に配られる予定だからだ。
それに、スタートダッシュを決めるなら、効率的な経験値稼ぎの為にも、攻撃力は必須である。
となれば、力なり魔力なりにポイントを振らないわけにはいくまい。
「大丈夫だ、問題無い」
「全然大丈夫じゃ無い気がする返事なのじゃ~。でも、この選択もユートの個性というやつなのじゃろう?それに、発表していない要素もあるのじゃ!楽しみになってきたのじゃ~」
む?発表していない要素だと?選択を誤ったかもしれん。だが、それが良いと言った戦人もいるのだ、俺は公開しても後悔だけはしないぞ。
「次は運なのじゃ!が~んばるのじゃ~!」
前屈みになって、左手を左頬に当て、右手は右斜め下に伸ばす....あざとい!でも、カワイイ!
ポン!という効果音と共に、目の前に野球ボールサイズの10面ダイスが2つ現れて、空中でクルクルと回転している。
「0から9までの目が入ったダイスが2つあるのじゃ、赤が10の位、青が1の位なのじゃ!両方とも0の目が出たら100なのじゃ、0だけは無いから安心するのじゃ!」
いや、1とか出たら十分悲惨だろ、考えるだけでも恐ろしい。
「うんめ~のダイスロール!心して押すのじゃ!」
俺に向かってクリスがビシっ!と右手で指を指す!背後で「ビシっなのじゃ!」という丸文字がふよふよ浮かんでいる。なるほど、狙ってるな!超カワイイ!
すると、目の前にアニメやマンガなんかで出てくる、キノコの傘みたいな赤い丸ボタンが現れる....う~ん、良し。
「わ!何するのじゃ~離すのじゃ!」
両脇の下に手を入れてクリスを抱っこして、俺は叫ぶ!
「よし、クリス!君に決めた!」
戸惑っていたクリスだったが、俺が後ろで大声を出した事に驚いて、反射的に手を動かしてしまった。
「え?え?のじゃ~~~!」
ポフっと音がしそうなネコパンチでボタンが押されると、ダイスが空に飛びあがった。
「あ、あ~押してしまったのじゃ~、ユートぉ!良かったのかのう?」
「そんな申し訳なさそうな顔をするな。今回はクリスが俺の勝利の女神だっただけの事だ」
ボンッと効果音がなりそうな勢いでクリスがゆでタコになった。
(なにがでるかな~ なにがでるかな~ テレレレンレンテレレレン)
何か聞こえた気がするが気のせいだろう。
青は......9!、問題の赤は.....9!
「おおおおおおおおおおおおおっしゃぁぁぁああ!ファッタスティック!とっても良いね!」
「のじゃああああああ!!!!やぁったのじゃユート!」
思わず、クリスを抱っこしたままグルグル回ってしまったぜ!
ユート(天城 勇人) 20歳
種族 ヒューマン
LV 1 職業 なし
HP 250
MP 100
力 10
体力 10
敏捷 9
知力 9
魔力 10
運 99
さすがに都合良く100なんて事は無かったが、素晴らしい結果と言えるだろう、クリスGJと言わざるを得ない。
「運は増加アイテムが超希少な上に、一回だけしか使えないほとんど固定ステータスなのじゃ!ユートやったのじゃ」
つまり、俺は必然的に最後には100になるわけだ。やったぜクリス!
「俺の人生はクリスから始まったと言っても、過言では無くなったな!サンキュー♪」
「て、照れるのじゃ、にゃぅ~」
腰の辺りで服を握り締めながら、モジモジクネクネしている.....何あのカワイイ生き物、お持ち帰りしてもいいかなぁ?いいよねぇ?
「これで、ドロップアイテムの確率から、その他諸々色んな判定で有利になる事間違い無しだ。さて、クリスたんいつまでもモジモジしてないで、次に進もうぜ?」
「う、うむ、分かったのじゃ。それではチュートリアルを開始するかの?」
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