リンゴの香がするとして

甘い香がただよってくる ああ

リンゴがあるのだな

瞼をひらき

その香の本源を見捉える

鈍く光を反射して

みずみずしい赤を発色している

かじれば と口中で思う

かじれば甘酸っぱい健康的な味がするだろう


一つの雲が二つに割れていく

とんでもない勘違いが素朴に信仰されているのではないか

現実は巧妙にそれを勘違いでないように演出して

私たちにひとつの連合態であるかのように見せかけながら

実態にはそんな連合はありはしないとしたら

とんでもない勘違いが破綻の機会を失って素朴な信仰を

壊される幸福の瞬間からとおざけられているのではないか


甘い香がただよってくるとして ああ

と嘆息をもらしたとして リンゴがあるのだな

と思いなして瞼をひらくとして

ただ香だけが独立してただよっていて

本源などなくただよっていて

リンゴなどなく香だけある事態が

あるはずもないとは言えない

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