お墓参り
初夏の暑さのなか、母と僕は父のお墓参りに出かけた。もう、こうして母と2人でお墓参りに行くようになって20年が経つ。
僕の父は、本当に死んだ訳では無く僕が子供の頃に失踪したのだ。大酒飲みで、酒乱で博打狂いの父が家をあける事は多々ある事だったが、いつもの様に大暴れして、出て行ってた父が、パッタリと帰って来なくなった。
母と僕は警察に行き失踪人の捜査を依頼した。それから7年が経ったが、父は戻らず【失踪宣告】により死亡とみなされた。その時に母が建てたお墓なので、当然、遺骨の入っていないお墓なのだが、毎年この時期になると母と2人でお墓参りに来るのが恒例行事になっていた。
しかし数年前から、母は痴呆気味なのか、お墓参りに来る度に、毎回違う他人のお墓に線香や花を供え、手を合わせているので、僕が花や線香を買い直して、母の手を引いて父のお墓へ、連れて行っている。
今年も例によって、全く違う人のお墓の前で、母はお参りをしている。さすがに、今年で6回も間違えて、違う人のお墓を、お参りしているので、僕は心配になり、母を諭すように優しく『母さん、ここは誰のお墓なの?良く見てよ…』と言った……
すると母は僕に微笑み、こう言った『ここで良いのよ、ここで最後なの……このお墓の下に、お父さんの頭を、埋めたのよ』と………
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