懺悔


男はニヤつきながら、教会に入って来た。

年は30代後半で締まりの無い、二重顎のダブついた顔に、まばらな無精ひげをはやした、太鼓腹の肥満体で、美少女アニメの絵がプリントされた灰色のスウェット上下は着古して毛玉になってた。


男は、辺りをキョロキョロ見回し、教会に誰も居ない事を確認し、懺悔室に入った。


男は、テレビアニメか、何かで見て影響されたのか、ひざまずき両手を組み目を閉じて、懺悔を始めた『か…か、神様、昨日の晩に夜道を歩いていたら、美しい女性を見つけ、つい魔がさしてしまい、女性にいかがわしい妄想を抱き襲いかかったら、大騒ぎされたので、つい近くに落ちていた石で頭を 何回も何回も何回も殴り、女性の頭は腐ったトマトの様に潰れてしまい頭から何か出てきて死んでしまいました。どうか僕の罪をお許し下さい。』と神に許しを請うと、横の小窓がスーっと開き、神父の『あなたの罪は許されました、祈りなさい…』と言う優しい声が聞こえた。



次の瞬間に、小窓から錆びついた大鎌がスーっと出てきて、目を閉じている男の首を捕えギシギシ、ギシギシと、ゆっくり、ゆっくり、その錆びた刃を男の首に食い込ませていった…男は、口から泡の様な血を吹き出しながら、叫ぶ事も出来ずに、長い時間身悶えながら『どうして…』と言い残し絶命した…


懺悔室から出た神父は、ひざまずき、手を組み神に祈りを捧げながら、男の問いに答えるかのように呟いた。


『あなたが、昨夜殺めたのは、私の娘です。しかし、寛容な神はあなたの罪をお許しになりました。そして神は、私の今、犯した罪も、平等にお許し下さいました』と…

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