家族
宇田川は普段、風俗に沈めた自分の妻の収入をあてにし、いつも妻に前借りをさせ、その金を元手にギャンブルで食いつないでいる、今回、闇金業者からまわって来た、切り取り【債権回収業務】で、館山の別荘地に向かっていた。以前、債権回収で、何度かバッティングした業者からの依頼で、あまり仲は良くは無い業者だったが、今回の回収額は800万円と程よくデカく、宇田川の取り分は、折半なので400万円になる。上手く行けば一発回収可能な案件だったので、ガメツイい宇田川は、即決で引き受けた。
回収内容は、息子がギャンブルにハマり作った借金を資産家の親に立替払いしてもらう、勿論その親は、連帯保証人でも何でもない、といった違法案件である。宇田川は、こんなヤバい案件だから、ヤツ等、イモ引いて【ビビって】俺に回して来やがったんだなと考えたが、犯罪なんて御構い無しの宇田川にとっては、いわゆる朝飯前の案件だった。
館山に到着した宇田川は、書類の住所見ながら、債務者の親の別荘を探した。
しばらく山道を歩くと、少し古びては、いるものの、物凄く大きな豪邸が現れた。
宇田川は、『なぁ〜んだ、これで別荘?デカイなぁ〜!こりゃ案外楽勝だな?』と満面の笑みを浮かべ呟いた。
宇田川は、巨大な正門の横の小さな門が開いていたので、そこから、入り込むと勢い良くドアをノックし『すいませ〜ん、息子さんの件でお伺いしました〜誰かいますかね〜?』と、慇懃無礼な口調で騒ぎたてた。しばらくすると、身なりの良い白髪の老人が現れ、宇田川を中へ招き入れ、客間に通した。テーブルには、アイスコーヒーが用意されていた。
宇田川は、ソファーに腰を下ろすとすぐに、『早速で悪いんだが、アンタの息子さんの件なんだけどね?借金を800万円こさえて、どこかへ、行方を眩ませたんで、迷惑しているんですよね我々も…お父さんは、大層立派な暮らしぶりですが、息子さんにちゃんと、人に借りたものは、返しましょうねって教えてあげなかったんですかぁ?えぇ?お父さ〜ん?家族の責任は、家族がちゃんとケツ拭かなきゃ、一体誰がケツ拭くんだよ、あぁ?』と、じょうぜつに捲し立てた。
しばらく沈黙が続き、老人は口を開いた『しかたありませんね…あなたの、おっしゃる通りですね、家族の失態は、家族が責任を取るのが最良だと思います。少々お待ちを…』と、法的な事には一切触れずに老人は席を立ち、部屋を出ていった。
楽勝だったなと思い、宇田川は小さくガッツポーズをして、アイスコーヒーを一気に飲ほした。
『う…うっうん…』気がつくと宇田川は、真っ暗な部屋で何処かに寝かされていた、手足は何故か動かす事が出来ない…さっきアイスコーヒーに何か入っていたようだ…『な、何だ?ここ、何処だ?どうなってるんだ?おーい?何だこれ!ふざけたマネすると、ぶっ殺すぞ!おいっ!』と騒ぎ立てた。しばらくして【バチン】とライトがつき、眩しい光が宇田川にあてられた。周りを見渡すと手術室だった。
銀色の分厚い扉が開き、先程の老人が、今から手術をする医師の様な出で立ちで入ってきた。その後ろから、今回の切り取りの依頼主である、闇金業者が、嫌がる宇田川の妻の腕を引って入って来た。
宇田川は事態が飲み込めず『何だよこれは?何の冗談だ?』と喚き散らした。
老人は宇田川の耳元で、微笑みながら言った『冗談?いえ、本気ですよ。先程あなたのおっしゃった言葉に感銘を受け、私は息子の借金返済の代わりにと言われても、ずっと御断りし続けていた、この違法な臓器摘出手術を、本日お引き受けする事に致しました、親として、いや、家族としての責任を果たすために…そしてあなたも、奥様の借金返済の為に家族の責任を果たし、今回お金の代わりに、内臓全てを提供するのですよ…』と宇田川に丁寧にお辞儀し、麻酔で指一本動かす事の出来ない宇田川の腹部を切開し、丁寧に内臓を取り出し始めた……
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