きのこ狩り


彼女がにせがまれ、人里離れた山奥にきのこ狩りとやらに来た。彼女の話では、食べられるきのこは、人があまり立ち入らない山の方が、踏み荒らされていないし、採取し易いとの事だった。

山に入り1時間位歩いた頃、目の前にきのこが群生していた。彼女は『一郎、こっちに来て!松茸、松茸も生えてる!』と興奮気味で、私を呼んだ……【うっせーなブス、ヤレる女がいね〜から形だけ付き合ってるだけなのによ彼女ヅラしやがって…こんな所に松茸なんてあるわけないだろ?】と、思いながら彼女のもとへ行くと、本当に松茸がビッシリ生えていた…俺は、彼女の事などそっちのけで松茸狩りに没頭していたその時『バーン・バン・バーン』と銃声の様なモノが聞こえ、奥の草むらから、帽子を被った茶色い作業服の長靴を履いた男が、猟銃を持って現れた。俺は、この山の人の持ち物だと思い、すぐに彼女を自分のもとへ引っ張り頭をグイっと押さえ、自分も『すいません!こいつが、キノコ狩りに、いこうって言ったんで、俺はこの山が人の持ち物って知らなくて、本当にすいませんでした!』と謝った。


すると男は、なまった口調で、『な〜に言ってんだ、おめ?こーんな山おくで、なにやってんだぁ?今、うちから、家畜が一匹逃げたんだ、あぶねぇぞ!怪我すっといけね〜がら、はやぐ山さ、おりろ!』と私達に言った。俺は、なんだ農家のおっさんかと思い、少し小馬鹿にした口調で『わかりました〜すぐに帰りまーす。』と言い、下に向かって歩き始めた。


しばらくして、男の姿が見えなくなった所で、彼女に『おい、しばらく、ここに隠れてて、後でまた松茸取りに行くぞ、どうせ、家畜なんて豚か、なんかだろ?』と言うと、彼女はさっきの俺の態度にムカついたのか、ふてくされたまま『わかった…』と言った。


倒れた木にしばらく隠れていると、日も落ち辺りが暗くなり始めた。と、その時目の前の草むらがガサガサッと揺れた。そして、草むらから何かが飛び出して来た!『ぎゃぁ!』俺は、反射的に彼女を盾にし、顔を背けた。すると、彼女は震えた声で、『一郎、こ…これ、ひ、人だよ…多分…見て』と私の上着を引っ張った。私は恐る恐る、スマホのライトで照らすと、そこにいたのは、四つん這いで震える、肘から下と膝から下を切断された全裸の男性だった。傷口は、何かで縫合され、口をパクパクさせているが、どうやら、舌を切断されているらしく、言葉にはなっていなかった。


その異様な光景を目にし、恐怖が込み上げて来た次の瞬間『バーン』と銃声がし、彼女が前のめりに倒れ、動かなくなった…後ろの草むらから、さっきの猟銃を持った男が現れ『あーれおめら、まだいたんだ?帰れって言ったのに?あれま、女に当たっちまったか、だからあぶねぇって言ったべ?それじゃ、夕飯は、こっちにすんべか、よがっだなおめ、すごーし長生きできっぞ!それに、今日から、おめぇのお友達もできるしな?おめぇの事を見られちまったからよ……』と、笑顔で、手足の切断された男の頭を撫でながら言った……そしてしゃがみ込んでいる俺に、ゆっくり近づきニタァと微笑みながら、刃物を取り出した…

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