今日は土砂降りの雨こんな日には、子供の頃良く口ずさんでいたあの歌を思い出す。

♬あめ あめ降れ降れか〜あ〜さんが〜蛇の目のお迎え嬉しいな〜ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン♬ 誰もいない夜道だったせいか、私は年甲斐も無く、無意識のうちにその歌を口ずさんでいた…


すると前から、今時珍しい蛇の目傘をさした女性らしき人影が、こちらに向かって歩いてきた。私は、恥ずかしくなり、黙って下を向きすれ違おうとしたその時、女性は立ち止まり私に言った『お迎えにきたよ』と呟いた…


不気味に思い急ぎ足で歩こうと思い、右脚を前に出した瞬間、腹部に激痛が走り、薄明かりの街灯が照らす足元の水溜まりが、真っ赤に染まっていった。私の腹は、横一文字に裂け、傷口からは臓物が垂れ下がっていた。恐らく、すれ違いざまにあの女が何か鋭利な物で切りつけたのだ…


私は、最後の力を振り絞り、後ろを振り向く様に地面に倒れ込むと、女は私に傘をそっと差しかけ、優しく呟いた『さあ、帰ろう……』薄れゆく意識の中でおぼろげに見えた女の顔は、どこと無く私が子供の頃に行方をくらました母のようにも見えた…

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