記憶喪失

『イタッ!』激し頭痛で私は目覚めた、ゆっくりと目を開けると、病院のベッドの上で、左手には人の手の温もり。ゆっくりと横に目をやると、優しそうな美しい、女性が、『意識が戻ったのね!良かった…本当に良かった…』と私の手を、きつく握りしめ、泣き崩れた。頭を打ったのか、この女性は誰で、自分が誰なのかすら思い出せ無い………そんな矢先に、『花岡さーん検温でーす』と無愛想な看護師が、体温計計を私に突っ込んだ。

どうやら看護師の話では、私の財布に【花岡光鬼】と言う名前の免許証が入っていた事から、私の名が、花岡光鬼と言うのは間違い無いらしい…

職業はバスの運転手で、職務中に崖下にバスが転落して一命を取り留めたとの事だった。検温が済み、看護師が退室し、私は、泣き崩れている女性の頭に手をやり頭をそっと撫でた。すると、女性は、ゆっくり頭を上げ、この世の物とは思えぬ狂気に満ちた泣き笑いで、私に言った。


『アナタがが運転していた幼稚園バスには、私の子が乗っていたの……私の子は、真っ黒焦げになって死んだわ……でも、アナタが生きていて、本当に良かった……今からあの子の何倍も苦しんで死んでもらえるから…。』と言い、ベッドの下から、歯の錆びたノコギリを取り出し、きつく握りしめた、私の手首にあてて、ギシッ、ギシッっとゆっくりノコギリを引き始めた…

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