可哀想
会社の同僚の玲子は、『私って可哀想じゃない?』が口癖の俗に言う悲劇のヒロイン症候群だ。会社の休憩時間、ランチの時等、時と場所を選ばぬ玲子の不幸な自分語りに、私を含め皆飽き飽きしていた。
玲子は、不幸な自分語りだけならまだしも、先輩にイジメられているとの事で可哀想そうだと思い、親身に話しを聞いてあげれば、次の日には、その先輩に、私が悪口を言っていたと言う感じで告げ口するタチの悪さだ。
そんな玲子と帰りのバスが一緒になってしまった。私は席を別にしようと考え、下を向き、後方の席の隅に移動したが、玲子は、私に気づいていたらしく、案の定私の隣に座りまた、不幸な自分語りを始めた。『ね〜聞いて今日、仕事の書類ミスしたのを、全員の前で部長に怒られて、まるで晒し物だよ!私、可哀想じゃない?もー私死にたい!』と、また、ネガティヴ全開の自分語りを私に向けて話し始めた。私は、滅多な事も言えないので、下を向き、押し黙っていると、急に後ろの席からカスれた男の声がした。
『それは、可哀想だ!酷い!晒し者にされたなんて…恥ずかしくてもう生きていけ無いよね…ボクが救ってあげるよ…』と聞こえた次の瞬間、玲子は後ろから髪をワサッ!っと掴まれ、喉の辺りを鎌でザックリと切り裂かれた……その光景を目の当たりにし、私は初めて玲子の事を可哀想だと思えた…
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