第2節 00と獣人化の研究所


目閉じている虎獣人・ダマハはとある跡地に行った。


そう、「とある実験場ラボ」の跡地だ。

そこには、かつて実験体―――「01」、「02」、「03」、そして―――「00」がいたというのを昔から聞いている。しかし、俺は彼らには会ったこともなく、面識がないので今のところ本当かどうか不明な状況である。


その跡地はとある都市―――「菰野こもの」の南部に位置する。「菰野」は自然があふれる街で、住民たちは自然というものを楽しんでいると聞く。俺は嫌いではないが……。


俺はその入り口を進み、階段を下りていくと、実験場のような雰囲気があふれている大きな部屋に出た。


やはり、かと俺はそう確信した。


そう、ここが―――獣人化の研究所チェンジアニマルラボの跡地。


ここでは、計画のために実験の「実行場所実施」として建てられたという。計画による被験者は100人に上った。その中でも人工誕生が50人……、とても酷い試験を受けられていったという歴史を持っていると聞く。


俺は部屋をキョロキョロしていると、気配がして、その方向に変えると、そこには患者が着るような服を着た青年がいた。


謎の被験者「やれやれ、お客様だと思ったらダマハ虎獣人か」


俺はその人の全てを見て、やはりと確信した。


ダマハ「………住んでたのか、『眠る男謎の被験者』よ」

謎の被験者「はじめまして。僕の名前は00と言います。ゼロと呼んでね‼」


俺は謎の被験者―――ゼロなのかどうかを確かめるために一撃を加えてみる。


しかし、俺が思っていたものが外された。そう、刀がゼロの体を透け抜けたのである!


しかも、刀には血が付かないのである。まさか、とゼロの体を見ると、ジジジ…とまるで映像が乱れているようだった。


ゼロ「やれやれ……だからー今の僕は『夢の僕』だよ?」

ダマハ「『夢の僕』…?」

???「言い換えれば、『立体映像ホログラム』のことねえ」


その声に俺は気づき、確認すると、ヒデカズがいたのであった。


ダマハ「‼ヒデカズ……来てたのか!」

ヒデカズ「四日市をブラブラしたら、ここに来てしまいました……」


「立体映像」だとすれば……本体は一体どこにあるんだろうか?そう考えていると、ゼロが言った。


ゼロ「『実の僕』見せてあげよか?」


「実の僕」?俺は意味が分からぬまま、思考が止まってしまった。その時、ゼロの後ろの奥にある「ドア」がピッと開け始める。


その開けた先には、俺とヒデカズが驚くのである。


ダマハ「………!!!」

ヒデカズ「これは………まさに……」

ダマハ・ヒデカズ「実験体!?」

ゼロ「『彼』こそが『実の僕実験体』なのです」


彼が呼んでいる「実の僕」という実験体があった。その肉体は腕や足が拘束されていて、頭や首には何等かの「線」がつけられている。


……やはり、調べた情報が本当だったようだ。そう確信した俺は…


ダマハ「……やはり、お前は実験体『00』だったのか」

ゼロ「Yes. 僕はここにて実験されたんだ。これは悲惨だね」


「うむ」と、ゼロの言いたいことはなんとなく理解できる…。


ん?ヒデカズを見てみると、「実の僕」って言っていた実験体の周りにある機械を見て彼の瞳がキラキラと光っている。


……ヒデカズって、機械に興味津々なのか…。なるほどな、これはメモしておくか。


ヒデカズ「……うんうん。……これも使えるね。……あ、これも何か使えるそうだー……うーん……」

ゼロ「やれやれだね。こんなに見る人は他にはいないよ」


といい、ゼロは秀和の熱心っぶりに同感したようだ。


……ん?ゼロがなぜかゾクッとした。どうしたんだろうか…?気になる俺はゼロに聞いてみるとしたが、先にゼロが言う。


ゼロ「…。また会おう……」

ダマハ「き……消えた!?」


そう、ゼロはジジっとノイズのように消えてしまった。……立体映像だから、実体は……寝ているままだ。


ダマハ「これじゃ話せない!目覚めるかどうか……どうなったんだ!?」

ヒデカズ「ダマハ」


ヒデカズはダマハが慌てているのが珍しいかと思ったのか、落ち着けようと名前を呼んだ。


ヒデカズ「まもなく実験体ゼロが目覚めるよ」


ヒデカズがそういうと、その実験体の瞳がポチッと開け、拘束されていた腕や足が解放された。


そして、実験体―――ゼロは起き上がって、こちらへ歩いてきた。


ゼロ「やあ。君たちがヒデカズ=クロダとダマハ=サヴェルだね。

僕はこう見えて「病気」に患っていて、目を閉じてしまうと、長く眠りについてしまうんだ」


何、驚いたな……まさか覚えていたとは…当然か。あの機械は、立体映像を作り出す機械と実験体の脳を繋ぐための「情報化機械」ということか。


ダマハ「…眠る病気か…」

ゼロ「以前寝た期限は一日半かな」


長く眠ってしまう病気を患っていたとは知らなかったが。一日半とは……まぁ、それはゼロの体調によって寝ている期限が変わるか。


ゼロ「僕はもともと、『獣人武器化』計画のために生まれられ、肉体強化のために試練を受ける日々…。

でも、突然襲った『病気』によってボクの『武器化』は中止されたんだ」


なるほどな……ゼロにこんな過去があるんだな……少し可哀そうに思えた。


ゼロ「でも…外に出たいな…」


……そうか。ゼロはここから出たことないんだったな。


ヒデカズ「ゼロ!」


ゼロと俺はヒデカズのところに見ると、ヒデカズは未来みたいなスクリーンを操作しているようだ。


ヒデカズ「あなたの望み…出来るかもしれません!これ…借りても良いですか?」


そう聞いたら、ゼロはパパっと顔が明るくなり、こう答えた。


ゼロ「叶えてくれるの?サンキュー!機械すべては問題ないよ!」

ヒデカズ「ありがとうございます。任せてください!」


ゼロから了承をもらい、早速「情報化機械」をいじり始めた。


ゼロ「これで外に行けるぞー!」


嬉しすぎたかワイワイと騒いだすゼロ…全く、ゼロは楽観的なんだな。


ダマハ「ゼロ……さっきから気になってたんだが、この傷は何だ?」


ゼロは傷について言われると、その傷を見て、ああそっか、いうよって感じで答えた。


ゼロ「ああこれは、実験の『あと』だよ」

ダマハ「その『痕』は、何らかの装置を剥がしたときに出来たものなのか…?」

ゼロ「うん、そうみたいだね」


なるほど……ゼロは細胞成長の促進と肉体強化のために装置の中にいたんだから、当然か。以前調べたから知っている。


ヒデカズ「ゼロ!」


ゼロが声に応えてヒデカズのところに行く。どうやら、情報化機械いじりの作業が終わったようだ。


ヒデカズ「出来ました!これ、持って行ってください!」


そういうと、ヒデカズは出来たものを手の上に見せる。……これは肩こり解消のものと小さな球体があった。何だこれ…?


ゼロとダマハは不思議に思っていると、ヒデカズはてへっと、申し訳なさそうな顔で詳しく教えてくれた。


ヒデカズ「これは、『情報集中体ホログラム』を作り出す装置とつなぐための装置を極小化したよ。それと、球体の装置にも改造を加えたよ。これで外に行く準備ができるよ」


なるほど……肩こり解消のものは、脳とつなぐための『情報化機械』か。球体の装置は立体映像を作り出す装置だな。……こんなまで調べたのか、ヒデカズは。本当に、彼の発想力というか、創造力に驚かされる。


ゼロはそれを聞いて「おおお…」とわぁぁぁ…って顔をしていた。それほど感激してたのか…。


ヒデカズ「じゃあ、これを肩に貼ってください」

ゼロ「こうか?」


ゼロはヒデカズに言われるまま肩こり解消のものみたいなもの情報化機械を肩に貼ってみた。すると、そのものがすんなりと透けていく。

……なるほど、みんなから見えないように工夫されてるんだな。


ヒデカズ「はい、これで外に行けますね!あと、球体のは持っておいてくださいね!」

ゼロ「外に行けるー!早く行こー!ワクワク」

ダマハ「ふっ。じゃ、まずは四日市だな」

ゼロ「四日市か!どんな所かなぁー?ワイワイ」


やれやれ、本当に楽観的だな、ゼロは。少年らしい性格だと思うが。


そのとき、誰かがみられていたことは知らなかったのであった―――。


カチ…カチ…カチ…。


これは、秒針の音……時間の力があるように見える……。「彼」は一体誰だろうか…。その正体はあとから明かされることになる―――。






四日市にて―――


四日市にある、バリスタの実力者が仕切るカフェ、「リマザルLIMAZAL」にはある人物がお客様として来ていた。


注文したものを受け取って、飲んでみると、いい顔をした。


???「ハァー、美味えな!」


黒と白の犬獣人はおいしそうに飲み物を飲んでいた。


そして、扉についている鈴が振り、鳴ったのをその人は気づいた。


丁度俺たち―――ダマハたちは「リマザル」に着いたのだ。


早速入って、オーナーが迎える。


ノヴァ「いらっしゃいませ!おや、ヒデカズとダマハじゃないか。…ヒデカズ、連れてきた人は?」


あぁ、ノヴァはゼロとは初対面だったな。ゼロも同様だけどな。


ヒデカズ「ああ、こっちはゼロっていうんだ」


そういって、ヒデカズの隣にいるゼロを紹介する。


わぁぁぁと顔を出しながら「よろしくお願いします!」と元気な声で言った。


ノヴァ「00ゼロか。ようこそ、カフェ「リマザル」へ。充分楽しんでおくれ」

ゼロ「はいっ!・・・・・・あれ?その人は?」


そういって、黒と白の犬獣人が座っているのを指す。それをみたヒデカズは驚いた。……?え?俺、知らないんだが、知り合いなのか?


???「よぉ」


そういって、黒と白の犬獣人はニヤッとした。

それがむかつくのか、ヒデカズは紙を折れたものを黒と白の犬獣人の頭に叩きまくった。


ヒデカズの心曰く

何してんだ、私。なんか突然来るからこうなるけど、なんかムカってきた。どうしてんだろ、私は。

…らしい。


黒と白の犬獣人「いててて……おいおい、ここで突っ込むなよー」


その様子を見たゼロはプッと吹きだし、アハハ!と笑っている。それをみた黒と白の犬獣人は「何笑ってんの!?」と突っ込んだ。


やれやれ、学生ってこれなのか…?


すると、鈴が鳴り、やってきたのはウェルディだった。


ウェルディ「失礼しまーす……あれ、賑やかですね!」


それに応えて、バイトのフムンが言う。


フムン「いらっしゃいませ、ウェルも来たか」


ヒデカズを見ると、黒と白の犬獣人はヒデカズの頭に手を当てる。「ひょ…」と言いながら、その人はニヤッとしているようだ…。


手を離すと、黒と白の犬獣人は俺たちに行ってきた。


黒と白の犬獣人「初めましてかな?俺はT.F.ティー・エフだ。今の名前な。「ティエフ」と呼んでくれよな!よろしく!」


T.F.か…。何かの略称だな。それに「今の名前な」ってところが気になるが…あとで調べてみるか。


ヒデカズ「やれやれ…」

ティエフ「なぁ、ヒデカズ。俺と旅館に行くか?」


といい、チケットらしきものがヒデカズにあげた。ヒデカズは少し悩んで、こう答えた。


ヒデカズ「え、あ、い、良いけど」


その答えを聞いて驚いたティエフだが、嬉しそうにしていた。


ティエフの心曰く

すぐ受け入れるかい!そんな人なかなかいないんだよな。

なんかうれしくなってきたぜ!

…らしい。


それに対して、ヒデカズはうーんと、ティエフについて気になっているようだ。


T.F.……あの動きと性格が「あの人」に似ているように見える……。一体何者だろうか……。


ノヴァ「あのスタバのもどうだ?」

ゼロ「良いね!じゃ、それで!」

ノヴァ「かしこまりました。任せろ」


こんなときにもう注文してたか…俺も何か注文しないとな…。


こうして、俺たちはこのあと楽しんでいったのであった……。



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