第1章
第1節 獣人の世界とマーシャアスラ
夏になった、水無月の時である。
俺、フムン=ジェンバラ=イン・シムラーはとある海岸―――
「フー……」
海は何処でも綺麗で、自然の恵みのものだと思わせるしかなかった。でも、「世界」とはどうなんだろう、色々な地域と国が集まって出来ているもので、みんなにはその「世界」とはどう思っているんだろうと、俺は時々想像する。俺にとって、「世界」とは良いものだと、思えたら良いんだけど。
そう考えながらコーヒーを飲んでいると、突如として健やかな声が聞えてきた。
「おーい、フムン!」
その声の方向に変えると、そこに楽観的な少年がいた。
フムン「お、ウェルか。どうしたんだ?」
俺は何で楽観的な少年ーーー「ウェルディ」がここに来たのか分からないため、聞いてみたところ、彼は四日市へ行かないかと言うことで、「四日市かぁ!ま、ウェルは分からないから楽しいスポットを教えてやるよ」と、言ったら、彼はやったーと、嬉しくて喜んだ。
フムン「まあ、俺はそこにバイトをやってるからな!」
ウェルディ「えっ、そうなんですかー!凄いなぁ、フムンは!」
フムン「まあな」
ウェルディ「Let's go to Yokkaichi!」
フムン「やれやれ、英語言うなよー」
ウェルディは時々英語で話してしまう癖がある。まぁ、彼は父がアメリカ人、母が日本人の、日本生まれのアメリカ系日本人であり、父の癖が引き継いでいるので、それくらい理解を取っている。
俺たち、フムンとウェルディは四日市へ行っていくのだった。
ふと思ったが、この世界は何処に行っても獣人しかない。「人類」と呼ばれる人種が見つからない。俺の推測なんだが、この世界は獣人の世界だと言うことだろう。
賑やかな産業都市・
ウェルディ「おーーー、都会みたいなところですね!」
フムン「そうだな、確かそっちだったか」
ウェルディ「ん?なんか看板に英語で書いてありますよ?」
ウェルディがその看板に指さすと、その看板には「LIMAZAL」と書かれていた。
フムン「あー、ここだな。ウェル、ここがカフェ『リマザル』だ」
ウェルディ「あー『リマザル』と読むんですか!」
フムン「まあな。入ってみようか?」
ウェルディ「はい!」
ということで、俺たちは少し洋風なカフェの入口のドアを開けて入った。
「「お邪魔しまーす」」
そういうと、オーナーらしき白いカッターシャツと黒いエプロンを着た男性がこちらへと近づいてきた。
オーナー「ようこそ、カフェの「リマザル」へ。ここでは、お客様のお好みに従って料理を提供するカフェだ。
にしても、フムン、ここへやってきたか。そちらは?」
フムン「ああ、こっちはウェルディというんだ。ウェル、ほら」
ウェルディ「
フムン「やれやれ、英語で言うなよー。オーナー困るんだろ?」
ウェルディ「あっ、すみません!ついつい話してしまうものでして……」
オーナー「ウェルディか。英語が上手いな。アメリカ系日本人かと思えるが…」
フムン「まぁ、それはおいといて、何が良い?俺が言ってやるから!というか、俺、ここでバイトしてるしな!」
ウェルディ「え!ここでバイトしてるんですか!スゲーな!
………じゃあ、コーヒーとサンドイッチを一つで!」
フムン「はいよ、コーヒーとサンドイッチを一つだな!かしこまりました!バイトしよっーと!」
オーナー「それでは、私は支度にかかる」
フムン「おう、オーナー!ウェル、ちょっと待っててな!」
凄いな……フムンはバリスタの経験者だと聞いていたけど、まさかここでバイトをしてるとは思わなかったな……と、そんなことを考えていた。まぁ、ここもよさそうな場所だし、私も気になるところかな。
少し時間がたったところ、オーナーが注文したものを持ってきた。
オーナー「お待たせ、コーヒーとサンドイッチだ」
ウェルディ「あ、ありがとう。えっと……オーナーの方って、名前なんていうの?」
近くにいたフムンはそれに答えた。
フムン「ああ……まだ教えてなかったか。この方はノヴァといって、根は良いやつだよ」
ノヴァ「私がノヴァと申す。普段は静寂だが、それも性格であることを理解して頂く。無駄はしないように!」
うー、理解しろと言っても、その雰囲気がなんとなく怖い。そのようなオーラがオーナーであるノヴァを覆っていたので、なんとなくそう思えた。
やれやれ、と私はため息をしたとき、鈴の音が響き渡った。ドアの左上に付いた鈴が振って鳴り、それと同様にドアが開いた。そこに、白き犬の獣人が二人いた。そのうちの人の首には、数字のような模様が描かれている。
「おう!パンとケーキを持ってきたぞー!!」
「はーい、失礼します♪」
そういうと、ノヴァが気付いて、感謝の気持ちを示した。
ノヴァ「毎度感謝する。今日も良いもの出来たか、ノギア」
そういうと、ノヴァから呼ばれた白き犬の獣人ーーー「ノギア」は「おう、出来たぜ!」と笑いながら答えた。
フムン「クロンも来たんかい!
ノギアおじー!なんでクロンを連れてきた!?」
ノギア「悪い悪い、クロンがそういうからー。にしても「マーシャアスラ」は気になるなぁー」
マーシャアスラ……?聞いたことない名前だな……。マーシャアスラとはどんなものだろうかと、私が想像し始めたとき、突然「ドゴン!!」と音がし、みんなが驚いた。
ノヴァ「大きな音は何だ!?」
俺たちは慌てて店外に出たところ、丁度着地した少年がいたのだった。
ノヴァ「……!!」
その少年の周りには不可解なオーラが覆っており、その存在が俺たちをゾクッとさせる。
眼帯の少年「『マーシャアスラ』とは、創りし者の結晶。
『彼』によって創られたシリーズで、未知な能力を発揮するもの。世界にとって未確認であり、とても危険な存在と言われている」
そういうと、その少年の周りに電子スクリーンのようなものが現れ、回転し始めた。そして、顔を上げ、こう答えたのだった。
眼帯の少年「マーシャアスラNo.000、これより対象を破壊します」
すると、少年の周りに先が鋭いの「刃」が8枚も現れ、俺たちを消え去る気を持っていた……。
そのような不思議な現象を起こす「彼」は、俺たちは初め、アンドロイドだと思っていたのであった。
そして、そのうちの2枚の刃がこちらへ攻めてきた。だが、それを止めたのは―――
眼帯の少年「
その少年は冷たい顔でそう呟いた。
フムン「なんか怖え!」
ノヴァ「むぅ……どうしたもんかな……」
クロン「ち、ちょ、ノギアさん!何してんですか!?」
首に数字の模様を持つ白き獣人「クロン」は、ノギアがその少年に近づこうとする行動に不安を感じ、そう答えた。
ノギア「やれやれ、いつもこうだな、お前はよ」
眼帯の少年「―――っ!邪魔だっ!」
そう言いながら抵抗しても、ノギアは少年の腕を強く握り、動かなくなるようにする。それによって、少年は恐怖感が出来はじめる。
ノギア「このカギ……俺を怒らせんじゃねえよ!」
眼帯の少年「ぁあ……ア……」
ノギアの眼と少年の眼が合わせる。みんなはポカーンとしている。その時、少年の様子が変になっていく。そう、「止まった」のだ。少年が。
そして、何かの声を響き渡す。
《ウイルスを確認。動作様子を確認。身体状態を確認。「
その機械的な音声に、ノギアはおおーと眼がキラキラ光っている。
《アップデート完了。身体状態良好。「ヒデカズ=クロダ」を起動します。》
その声にふと、ウェルディは気になった。
「ヒデカズ=クロダ」って、何だろう?名前かな?うーん。。。
そのとき、少年は顔を上げ、こう答えた。
眼帯の少年「皆さん、私を助けて頂き、ありがとうございました。ニコッ」
と、彼は笑った。私はなんで笑えるんだろうと考えていた。
ノヴァ「さっきの音声は何だったんだ?」
ノヴァは疑問に思ったものを聞いた。
眼帯の少年「ああ、これはマーシャアスラの機械音声だから気にしないでね」
ノヴァはああそうかー、と理解した。
眼帯の少年「改めまして……私の名前はヒデカズ=クロダと申します。世界を旅する人です。
皆さん、ヨロシク!」
眼帯の少年ーーー「ヒデカズ」と名乗る彼の紹介に対して、ヨロシクという声が時々上げた。
そして、彼はノヴァに「スタバのあれ、お願いできますかね?」と聞き、ノヴァは「任せろ」と言ったのであった――――――。
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