05:魂を殺さずに

 僕らが僕らであるために、僕ができること、しなくてはいけないことがようやく分かってきた。ここ最近、彼女の心は6月の末の頃のようにひどく沈むことはなくなった。しかし、代わり映えのない景色と、型に嵌められた自分への演技に時折憂鬱は感じるようである。なにが、彼女を疲弊させるのか、長く続く悪癖の根源はどこにあるのか、僕は徹底して考えた。

 沈黙にあり、しかし、すべての沈黙がわるいとはいえない。擁護したい、明るい性格をのぞむなら彼女はますます演じることに執着してしまう。

 魂を殺しているに等しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る