02:彼女の疑心暗鬼

 彼女は時折、疑心暗鬼に取り憑かれる。ドラマチックな悲劇の妄想がお好きなようで、いっぺん現実と白昼夢がすり変わると抜けられなくなって神経を無駄にすり減らしてくれる。

 僕がどんなに合理的で納得のいく説明、もしくは論を用意してあげたって彼女の慰めにはならない。彼女はお菓子に手を伸ばすように、自ら好んで不安を掴み取ってしまうのだ。そうしないと気が落ち着かないとでも言うのか。まあ、不安に煽られたほうもどっちにしろ気が気でない状態になることに変わりはないのであるが。


***


 昨日は夜遅くまで残業をしていたために、書く時間が取れなかった。代わりに今日は定時より30分おいてから、すぐに退社してきた。が、早く帰ったは帰ったで彼女の心が落ち着かない、というざまである。

 また”正しさ”を求めている。

 正解を求めて、彼女はネットの検索に他愛もないキーワードを書き込んだ。自分の意識、考え、感じ方はおかしくないのか調べている。でも、僕は知っているよ。本当に探したい、見つけ出したいのは”世の正論”なんかじゃないってことをね。

「自分と同じ意識、同じ考え、同じ感じ方はないか」それを彼女は探している、ネットの他人が書いた文章のなかに。要は自分の主観に確信を得られないから、誰かに補ってほしくて、支えてほしくて、他社の言葉を求めているのだ。

 ああ、実に不毛なことだ。


***


 行動することは大切なことだ。

 僕が僕であるために、思考のままでとどめちゃいけない。形にし、外に吐き出す。その行動の積み重ねが、いつかきっと僕らの実になる日がくるに違いない。そう信じて、僕らはこの先も書き続けていきます。


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