第5話 俺は恐れた、バケモノを

ソレバケモノは杉の木のてっぺんに降り立った。

俺はそれを、なんだ、カラスか。だとかくっだらねぇ事思ってた。

杉の木は当時の俺より数千倍高く、上があまり見えなかったからだと思う。




ソレバケモノが少し低いところの枝に降り替えた。

その数秒で俺は認識した。

カラスだと思っていた影が—————




————ソレバケモノであると、本能的に。

姿は今でもはっきりと覚えている。

背にカラスよりも、夜の空よりも黒い翼をはやしていた。

それは宵闇といってもいい。

足は鱗が生じており、カラスの鉤爪のようだった。

顔は上半分だけのカラスの顔の面をしていて、表情一つ分からない。




ソレバケモノが、こちらと同じく認識をした瞬間。

俺と目があった。面越しに、視線を感じた俺は——————




————ころされる。そう、思った。

これも、本能的にだ。

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