第2話 俺は普通に帰って寝たい。

その神社は、少なくとも冬期休暇よりは前に完成した。

冬の、白い雪に鳥居のによるべにいろが良く映えていたのを覚えている。

住宅街のその神社は、ちょうど俺の通う高校の通学路にも面していた。




だからこそ、俺は覗いてみようか、と一時思った。

のだが、すぐに止めた。

どうせこういう物に関わると碌な事にならない。

それに俺の“”は、ようやく治まってきた所だったからだ。




ただ、近くで急に神社が建ったということで、

俺を誘って肝試しやら、参拝をしたがるクラスメイトは増えた。


「よう、榊!」


「なんだ、お前か。ノートは貸さんぞ」


「そうじゃなくてさ、新しくできた神社の事!」


「……またか」


「お前の家の近くだったろう?案内してくれよ」


「どうせ、一緒に来いなんて言うんだろう?」


「あったりぃ!な?いいだろー?頼むよ!」


美人な巫女さんがいるって噂だし。

一体どこからそんな噂が出たのかは、一切見当もつかない。

が、恐らく近くというのもあり、顔見知りかなんかと思われているのだろう。




俺は丁寧に断って、帰路につくことにした。

大体放課後になると、決まったクラスメイトが寄ってきては誘ってくる。

正直俺は辟易へきえきしていた。

何度誘われても、俺はもうこういう様な事に関わるつもりはないのに。

それなのに繰り返してくる。




鬱陶しい……とため息をついた。

すると、丁度というべきか、神社の鳥居が視界に入った。

……見ていこうか、と一度思考を逡巡させたがやめた。

何があるかわからないし、親に我儘を言って部屋を決めたのだ。

問題は起こしたくないし、起きてほしくない。

俺はそのまま自宅に帰ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る