第9話 鋼の城の秘密!最後から1.5番目の真実
翔馬が休憩を告げた後、僕は三号機のハッチから外に出た。ファイブスの胴と腰の接合部にあたる部分が、胴と腰の幅の違いの分だけ張りだしており、二メートルほどの「テラス」になっているのだった。
「高いところから、世の中を眺める気分はどうだ?」
不意に背後で声がした。振り向くと、翔馬が立っていた。
「最高だよ。自分が何百倍にもなった気がする」
「そうだろうな。俺もそうだ。同時に、世界から追い出されたような気にもなる」
「世界を救うために戦うリーダーなのに?」
「それは本部と博士が勝手に決めた事だ。俺の能力なんてたかが知れてる。……それよりもむしろ、重要なのはお前だ。このチームはお前がいなければ成立しない」
「なぜそう思うんだ?」
「お前が一番、能力が高いからだ。銃器やロボットの扱いにたけた人間はいくらでもいる。だが――」
「どんなに打たれても平気な人間は滅多にいない。……そうだろ?」
翔馬は口の両端を持ち上げ、ニヒルな笑みをこしらえた。
「そう皮肉るな。お前の言いたいことはわかる。チームと言っても他のメンバーと比べて自分だけダメージが大きいのは納得いかない、そうだろう?」
僕はかぶりを振った。確かにそうも言えるが、言いたいことは他にあった。
「それが耐えられないなら、とっくにやめてるさ。ダメージに格差があるってことは、最初のシュミレーションからわかっていた」
「不満はないのか?」
「たくさんあるよ。でもそれは僕の担当がつま先だからじゃない。もっと別の事だ」
「なんだ?」
僕は息を吸うと、翔馬の顔を見返した。
「このチームには、秘密がある」
一瞬、翔馬の目線が泳いだように思った。
「それが何かは、知らない。ただこういう嫌な事件が起きてしまった以上、互いに隠していることがあったら洗いざらい話してしまった方がいい。でないと――」
「でないと?」
「今度は全員が死ぬことになるかもしれない」
※
僕と翔馬がコックピットに戻ると、他の三人はすでにフロアの中央に集まっていた。
大造の身体はコンソール寄りの、シートの陰になる位置に動かされていた。僕はつくづく、異様な状況下での話し合いだなと思った。
「さて……俺も含めて、それぞれが隠していることをすべて話す時が来たな」
翔馬が言うと、全員が頷いた。その時、僕の頭の中ではある仮説が形を成しつつあった。
「じゃあ、俺から行こう。俺はさっきの話に付け加えることは何もない。最初から、何も隠してはいないからな」
翔馬が言うと、黎次郎が一呼吸おいて「俺もだ」と言った。静流も押し殺した声で「私もよ」と言った。これでは誰かが嘘を言っていない限り、犯人がいないことになってしまう。万事休すだ。
「啓介は?」
「僕も隠し事はない。……そして僕は、この中に犯人がいると思う」
思い切ってそう告げると、一同にざわめきが広がった。
「お前じゃないとすれば、お前はその「誰か」を指摘できるんだな?」
「たぶん。……僕の想像が当たっているとすればの話だけど」
〈第十話に続く〉
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