第9話 振り切り、断ち切る
薙斗とレキナは、輪倉彰に指定された場所へと向かっていた。事前にリーシャによる怪我や不調の類は取り除いてもらっていたから、体調は万全だ。彼らは二時間のタイムリミットを指定してきたが、研究所からなら徒歩でも三十分ほどでたどり着ける場所だった。元々研究所があるのも人通りのない廃墟ビルの群れの中だ。そこからさらに進んでいくと、大きく開けた土地に出た。廃墟ビルの近くだ。ここもまた、何かしらの建物の跡地だったのだろう。地面にはしっかりとコンクリートが舗装されている。整備自体はかなり昔にされたままのようだが、人がその上を通るに支障があるようには見られなかった。
「ここ、だな……」
薙斗は端末に表示された画像と照らし合わせながら、小さく呟いた。周囲に人影は見当たらなかった。約束の時間までまだ十五分ほどある。もちろん、その時間に遅れて研究所が襲われるなんてことになっては本末転倒だ。少し早いくらいでも問題はないだろう。
「もうすぐ、だね……」
レキナはゆっくり深呼吸をしたのち、そう呟く。レキナの言う通り、もうすぐ一年前のあの日の決着がつく可能性がある。あの時、薙斗は何もできなかった。レキナが暴走状態になっていたということを除いたとしても、レキナを止めることもできなければ、彼女を補佐するように立ち回ることもできなかった。だからこそ、今度は間違ってはいけない。あの日失った何もかもを比較したうえで、今度こそ、自分はまだ死んでいないと、負けてはいないのだと証明しなければならない。
――神童、狭霧薙斗は死んだ。
魔力特性のほとんどを失ったと知ったあの日、ベッドの上でフェアリアが言っていたことをふと思い出す。確かに、彼女の言ったことは間違ってはいない。かつて魔力制御学の世界において数多の表彰と評価を受け、ある意味では席巻してきた薙斗だったが、その当時と同じ評価を受けることはもうできない。
それでも、狭霧薙斗は生きている。
神童と呼ばれ、世間からもてはやされた時代はもう過去の話だ。それでも、薙斗はそれを引き換えにしても今の瞬間が大切だった。両親を救えなかった自分が、両親を守れなかった自分が、ひどく霞む。力を持っていても、それを為しえるだけの意志と意識なくして、為すことはできないのだと思い知った。自分がしたいと思ったことでも、それに向けて行動を示し続けなければ、意味がない。望んでいるだけでは、頼っているだけでは、自分のしたいことなどできない。したいように生きることも、できない。
「レキナ。俺は、お前を守りたい。それが、俺が、人生を、命を懸けてしたいことだ」
薙斗はきっぱりと言い切った。その目に迷いはない。あの日からずっと、この気持ちは変わらない。そして、きっと――。
「私も、マスターを守りたい。それが、私の命を懸けてしたいことだから」
二人の思いは、同じ方向を向いているのだから。
「ほぉ、時間前行動とは立派なことだ」
固く誓った二人の時間を壊すかのように男の声が響いた。薙斗とレキナは、ゆっくりとその声の方向を振り返る。当然のように、そこには輪倉とリゼルタが連れ立って歩いてきていた。
「輪倉……」
「まあ、時間には少し早いわけだが……俺もあまり我慢の利く性格じゃないものでな」
「……その前に、少しだけ聞いてもいいか」
薙斗は、静かなままに、口を開いた。輪倉は、そんな薙斗を見て、「なんだ?」と返す。薙斗は改めて輪倉へと向き直り、声を発した。
「俺のところにわざわざ現れて、挑発をした理由はなんだ?」
「なるほどな、確かに理由もなくやりあうってのは略奪や防衛の意識をもって戦ってた原始人以下の獣、いや、獣ですら捕食や保身の目的もあるからそれ未満。ごもっともだ」
輪倉の発言には大きな感情の動きを感じられる要素がなかった。だが、そんな薙斗の印象にも構わず、輪倉は続ける。
「理由は二つ。一つは私怨、一つは義」
対極に近いその二つの理由に関して、薙斗にはどちらの心当たりもなかった。だが、やはり輪倉は構わず続ける。
「俺には年は離れてるが今年十六になる弟がいる。うちは武道の家系でな。十六になる年に道場を継ぐという、なんとも古臭い風習が残っている。親父はフェアリーという得体の知れないものが気に食わないらしくてな、だが、道場の継手は必要。そして、俺も弟も、一際召喚系の魔力特性が優れていた。いわゆる才能ってやつだ。親父にとっては皮肉なもんだがな。当然、俺も弟も道場を継ぐという枷を嫌った。俺は十四の時に召喚士適合試験に合格し、召喚士となった。弟もまた、そのために努力していたが、中々機会には恵まれなかったが、十五の時、最終候補まで残り、希望を見出した」
そこまで聞いて、薙斗は記憶に引っかかりを覚えた。今年十六になる輪倉の弟が十五の年……つまりは、一年前。薙斗が召喚士となった試験の年だ。
「絶対評価においては、他の候補者たちよりも格段に優れた評価ではあった。だが、相対評価の項目によって、弟は落とされた。満点なんてレベルじゃない。寸分の狂いのない解答と魔力制御。それをあの場でやってのけたやつがいた」
あの年の試験、合格し、新たな召喚士となったのは一人だけだ。
「狭霧薙斗。お前だ。圧倒的な力の差。運が悪かったというには余りにも残酷だ。あるいはお前でなければ、弟は召喚士としてまっとうに生きられただろう。だが、それももう叶わない。これほど束縛されても父親は父親だ。育てられた恩もあるし、まだ飯を食わせてもらっていた身として、弟は道場を継ぐことを決めた。己の夢を捨ててな」
召喚士適合試験のシステムが、狭霧薙斗という当時の天才が、一人の人生を崩壊させた。
「このクソみたいな制度を、俺は壊すと決めた。弟にも頼まれた。どうせならば、この間違った世界を正してくれってな」
「それで行ったのが、『フェアリー・インパクト』か」
「その通り。だが、弟が夢を諦めなければならなくなった原因はこの制度だけじゃない」
「……」
「狭霧薙斗。お前がまだ残っている。だが、お前は試験当時の力をもっていない。だから少しでも力を蓄える時を待つことにした。わざわざそんなことをしたのは、俺の個人的な趣味だ。強いやつと戦う、それが俺にとっての生きがいなんだよ」
なんとも現代的な生きがいではなかった。魔力制御の発展によって、その力を悪用する者は当然のように現れたし、それを取り締まる者もまた、当然のように台頭した。魔力制御の系統に合わせたスポーツも生まれ、魔力制御の能力そのものを競うコンテストもまた、頻繁に開かれるようになった。だが、そんな中でわざわざ悪に走ってまで戦いを求める必要もあったのだろうか、と薙斗は思ってしまう。鍛錬こそあれ、戦うことそのものに関して、薙斗もまたいいことだとは思ってはいない。輪倉の言葉の通り、理由なき戦いは愚かなものだ。もちろん、理由があったからといってそれが単なる正当化に過ぎないこともある。だが、それを考慮した上でも、薙斗にとって戦いとは野蛮に行われるものではあってはいけない、そう考えていた。
「さて、もう一つの理由だが、先日、お前はうちの仲間に手を出してくれたみたいだな?」
「仲間、だと?」
薙斗が手を出した相手など数は少ない。思い当たるのは――。
「召喚士、峰岸雄一。フェアリー、ルティア。あいつらと俺たちは、雇われ先が同じなものでね。まぁ、俺はこの通り追われの身だから、指揮系統にあるわけじゃないがな……」
峰岸雄一、ルティア。彼らは先日、スピサを捕獲するために襲ってきた召喚士とフェアリーだった。薙斗とレキナは、スピサと協力し、確かに彼らと戦い、彼らを撤退させることに成功していた。だが、そうなると不可解な点が出てくる。
ルティアの話によれば、彼女が指示を受けているのは魔力制御学研究所だ。それに、彼らには魔力制御やフェアリーの研究という大きな目的が存在している。そのためにも、召喚士やフェアリーの数を増やし、研究の前進を図るのが当然の動きのはずだ。薙斗が研究所の方針を決定するならば、まず間違いなくそうする。だが、輪倉は召喚士として大きな事件を引き起こした張本人だ。彼の起こした事件によって、召喚士やフェアリーに対する世論の反発が強まり、それ以降召喚士適合試験は半永久的な中止、召喚士の増加による研究促進の計画も凍結する。自分たちの研究を阻害する要因となった男を、わざわざ抱え込む意味が分からない。
「――で、だ。あいつらを退けた奴は、なんとあの狭霧薙斗だ。研究所の方でも要注意人物として扱われる事態だ。そこで、俺が名乗りを挙げた。研究所に恩も売れるし、自分の私怨もぶつけられる。こんな機会は、二度とないだろうと思ったからな」
僅かに笑みを零しながら、輪倉はそう告げた。薙斗にとっては、回りまわっての逆恨みでしかないこの男の行動は、理解するのは難しい。だが、それでも、過去の清算をしようというのは薙斗も同じだ。その一点においては、薙斗もまた、輪倉という指名手配犯と同じ穴のムジナ、というわけだ。
「――さぁて、随分と長く話をしてしまったな。だが、改めて口にすると、余計闘志が湧いてくる。あまりオカルトを信じているわけではないが、言霊ってやつかもしれんな、これは」
そう言いながら、輪倉は左手を覆っていた手袋を脱ぎ捨てる。甲に埋め込まれたサイファーに魔力が送り込まれ、淡く光を放っている。
「マスター」
「ああ。覚悟決めるぞ」
レキナの呼びかけに、薙斗は返事をしながら、自らもまた、左手の手袋を引き抜き、その甲に鈍く光っているサイファーへと魔力を送り込む。全身から一点へ。左手に送り込まれた魔力は、サイファーを通じて、レキナへと流れ込んでいく。そして、それと同時に、薙斗は右手にも魔力を流していく。右手の中に、魔力を原料に剣が形成されていく。その先端が完全に形成されるころには、レキナへの魔力供給も済んでいた。同様に、輪倉の方もまた、リゼルタへの魔力供給が完了していた。
静寂。遠くから吹き込んでくる風だけが、その場での音響の全てとなっていた。なんともタイイングが悪いが、天気は下り坂だ。可能ならば、雨の降る前に決着をつけねばならない。向こうがそうさせてくれるかどうかは、また別の問題だ。
薙斗は、左の拳を強く握りこんだ。
輪倉もまた、左拳を握りこむ。
それが、特にそう取り決めたわけでもない戦いの始まりの合図になる。
「リゼルタ!」
「レキナ!」
薙斗と輪倉が同時に叫ぶ。その指示を受けて、レキナとリゼルタが同時に飛び出す。レキナは両足から雷を発し、勢いよく接近する。対するリゼルタは、両足に稲妻のような青白い雷を纏って地面すれすれの低空を滑空するかのように接近していく。レキナとリゼルタの距離は一瞬にして縮まり、二人は両足を地につけて攻撃の体勢を取る。そして、相手を見据えて、雷によって腕に加速を乗せて、その電撃を纏った拳を叩き付ける。その一連の動作は、まさしく彼女達自身が雷に、稲妻になったが如く一瞬の出来事だった。レキナとリゼルタの拳が、魔力を乗せて衝突する。雷と稲光が両者の拳の間で炸裂する。
「ぐっ……!」
「なるほど、確かに怒りに任せたあの時よりもずっと成長している。手を出さずにいた甲斐はある……だが!!」
ファーストコンタクト。互いに初撃となった拳の衝突は、リゼルタの方が押していた。レキナは押し切られることを悟ると、押し込まれて体勢を崩される前に、右手を引き、それと同時に後方へと飛び退く。空中に飛び出したレキナは、両手を突き出し、雷を撃ち放つ。リゼルタはその電撃を後方へ飛びのいて回避し、反撃とばかりに左手を突き出し、その先から稲妻を撃ち出す。レキナはその挙動を確認すると、頭部に魔力を集中させる。レキナの髪一本一本が魔力を帯、上方に向けて電撃を撃ち放つ。それによってレキナの身体は急降下していき、リゼルタの稲妻を回避する。地上に降り立ったレキナに向かって、リゼルタが余っていた片手で稲妻を放つ。レキナは左足に魔力を込め、右方向へとローリングしながら回避を行う。足先に僅かに雷を纏わせることで、コンクリートの上をすべるように移動し、ローリング後の衝撃と隙を無くす。その目は、リゼルタからは離れていない。
「頭髪からの電撃、足先に雷を纏うことによる衝撃の緩和。なるほど、よくできた戦闘体術だ。発案したのは狭霧薙斗か?」
「そうだよ。マスターは私にいろんな戦い方を教えてくれた。だから、負けるわけにはいかないの!」
その顔は、笑っていた。薙斗に対する賞賛がうれしかったのか、自分に対する承認が心地よかったのかは、薙斗には分からなかったが、それでもレキナの調子は、過去最高レベルで高い状態で推移している。召喚士の薙斗にも、それは感じられた。
「いい、心がけだ。それでこそ、倒しがいがあるっ!!」
言うなり、リゼルタの姿が消える。いや、消えたのではない。消えたと錯覚するほどの速度でレキナに接近してきていたのだ。レキナは両腕を胸から顔にかけて覆い、ブロックの姿勢を取る。むろん、勢いを逃がすために精一杯の回避を行う。リゼルタはレキナに接近するまま、右手を突き出す。青白い雷を纏った一撃は、レキナを捉えるには至らなかったが、レキナの方はブロックを崩してまで反撃に出る余裕がなかった。それを見越してか、リゼルタが右手を引っ込めると同時に、左拳を突き出し、それに合わせて体重を乗せた打撃を打ち出す。打撃はブロックしていたレキナの左腕をかすめるようにヒットする。レキナの体勢が僅かに崩れる。その瞬間をリゼルタは見逃さなかった。左拳を引っ込めると、次いで両手を突き出す。次なる打撃をどうにか回避しようと、レキナが体重を移動させる。だが、打撃は飛んでこない。
(フェイント……!?)
完全に回避後の状態になったレキナには、回避のしようがなかった。ブロックの姿勢こそ取っていたが、レキナは至近距離で放たれたリゼルタの両手からの稲妻を諸に食らう。
「ぐぅぅっ!!」
同じ雷を扱う特性のおかげか、雷によるダメージはそこまで大きくないが、衝撃までは殺せない。レキナは大きく吹っ飛び、一度地面を跳ねながらも、両手両足に魔力を集め、勢いを殺していく。
「っはぁ……! はぁっ……!」
レキナが一度、大きく呼吸する。それでもまだ、その目は確実にリゼルタから離されることはない。
「いい防御だったが、詰めがあま――うっ!!」
評論をかましていたリゼルタが、呻き声を上げる。下半身から上ってくるように痛みが走っていく。レキナはにやりと笑みを浮かべた。レキナは吹っ飛ばされている間に、体勢を立て直すのと同時に、地面に向かって雷を這わせていた。地面を通過していく雷は、リゼルタの足元まで到達すると、対象を見つけたとばかりに、リゼルタへと這い上がるように攻撃を行ったのである。
「……なるほど、詰めが甘いのは私の方、というわけか」
この不意打ちはそう何度も通用するものではない。レキナ自身、どちらかと言えば、単純な攻撃の方が性に合っているし、得意分野だ。こうしたトリッキーな攻撃や魔力の扱い方は、かつての感覚や経験を元に薙斗から伝授されたものだ。レキナにとって重要な技の一つではあるが、練度に至ってはそう連発し続けられるものでもないだろう。おそらく、同じ攻撃が通じるのは多くて二度が限界だ。それ以上の攻撃は、恐らくリゼルタならば適切に対処してくるはずだ。
「まだまだ、これからなんだから……!!」
そう言いつつ、レキナは片手で雷を撃ち出す。リゼルタも回避行動をとりながら、反撃の稲妻を放つ。
「そうこなくてはな!!」
両者の雷が、中心で炸裂した。
「見てるだけってのはつまらんものだからな。俺たちも始めようじゃないか」
そう言われるやいなや、一直線に走りこんできた輪倉に、薙斗は剣を振りぬいて障壁を展開する。それに対し、輪倉は思わず息を飲むほどにしなやかな体勢から拳を三度突き出し、障壁を破壊する。
「素手で壊すだと……!」
「話を聞いていたか? 俺は武道の家系に生まれているのだと!!」
輪倉がそう言いながら薙斗へと肉迫する。この距離では障壁を展開すべく振りぬく剣の方が先に輪倉と衝突する。薙斗の剣には斬撃と呼べるほどの能力はない。幼いころから極めてきているであろう素手による打撃に、なまくらな剣で対抗できるとは思えない。
「くっ!!」
それでも、何もしないわけにはいかない。薙斗は剣を振りぬいて輪倉を近づけまいとするが、輪倉はその攻撃を軽くいなしながら、薙斗の腹部へと拳をめり込ませる。
「ぐあっ……!!」
続く打撃を、身体をのけぞらせて紙一重で回避する。
「そうだよなぁ、サイファー壊されたら、何も出来ないからなぁ!!」
サイファーは召喚士にとっては生命線だ。これを破壊されれば、フェアリーへの魔力供給ができなくなり、フェアリーは消滅する。薙斗はそれを避けるために、左手を庇うような形で戦い続けているために、輪倉との戦いに不利を持ち込まれている。
「くっそ……!!」
輪倉に接近戦を挑まれれば薙斗にとっては不利だ。そうなる前に障壁で防いで時間を稼ぐしかない。
薙斗は大きく回転するような形で輪倉から距離を取りつつ、接近される前に障壁を展開する。眼前に現れた障壁に対し、輪倉は華麗な動きで正拳突きを繰り出し、障壁を破壊する。だが、その攻撃の間に僅かながら距離は取れている。再び輪倉が接近してくるのを見て、再度障壁を展開する。
(とにかく、これでしばらく持たせて耐え凌ぐしかない……!)
薙斗は限られた魔力特性を生かした鍛錬こそ積んできたが、肉弾戦における戦闘技術においては魔力制御のそれほど積み込んではいない。有利な戦い方を見つけるよりも、不利な戦い方を避けることの方が、今の薙斗にとっては重要なことなのだ。だからこそ、どんなに無様であっても、逃げに徹する。そうすることで、少しでも活路が見える瞬間を模索するのだ。
「どうした!! 逃げてばかりでは勝てんぞ!!」
輪倉の怒号は、拳と共に薙斗の障壁へと叩きつけられていく。だが、それでもこのスタイルを変えるわけにはいかない。幸い、レキナの方はリゼルタと互角の戦いを繰り広げている。扱う魔力の強力さはリゼルタの方が上であるが、レキナはそれを補う身体能力と魔力の扱いで対抗している。
レキナとリゼルタが、それぞれ両手から雷を撃ち放ち、両者の中央で炸裂する。それと同時に、炸裂点を中心に大きな衝撃が周囲に拡散していく。レキナとリゼルタは互いに吹っ飛び、その余波は薙斗と輪倉にも飛んでくる。薙斗は障壁を背にしてどうにか吹き飛ぶことなく耐えるが、輪倉はもろに衝撃を受けたらしく、大きく飛ばされる。
「まだまだ、ここから――」
威勢よく立ち上がったレキナの言葉はそこで途切れた。同時に、レキナの声が震えだす。
「あ……いや……駄目なのに……戦わなきゃ……いけないのに……!」
レキナの両足が崩れ落ちる。それと同時に、薙斗は駆け出す。
上空の大部分を覆っていた雲は、いつの間にか理不尽なまでに雨水を振り落としていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます