第10首 ジャガー

無体むたいかは

能者のうじゃがあしらふ

よしかづき

からんはからん

せんせんらん


【現代語訳】

渡ることの出来そうにない川

困っている人を無視したりはできない

泳げる私が応対する手段を引き受けよう

川の流れを掻き分けて進んでしまうような取り計らいをしよう

さきがけの手段として、私がイカダを牽こう


【解説】

「無体」は無理、無茶、無視、ないがしろにすること。

「かは」は係助詞で反語を表す(ここでは係り結びが省略されている)

「むたいかは」は掛詞で

①無体川:(渡ることが)無理な川

②無体かは:無視することが出来るだろうか、いや出来ない

の二つの意味となる。

「能者(のうじゃ)」は才能がある人、物事に堪能な人。

「あしらふ」はもてなす、応対する。

「由(よし)」は多義語で、ここでは手段、方法の意味。

さらに2行目の「あし」から3行目「よし」に繋がることにより、「悪し」が「良し」になる、つまり事態が好転することを示唆する。

「被く(かづく)」は負担する、引き受ける。また「潜く」と書くと水に潜るの意味にもなる。

「分く(わく)」は押し分けて進む、切り開いて進む。

「らん(らむ)」は伝聞の助動詞「らむ」ではなく、完了の助動詞「り」の未然形+婉曲の助動詞「む」の連体形で「……しているようなもの、こと」の意(連体形から繋がる名詞が省略されている)。

「計る(はかる)」は機会をとらえる、見計らう。

「計らん」の「ん(む)」は意志の助動詞。「駆らん」も同様。

「先(せん)」は他に先んじて行うこと。さきがけ。

「詮(せん)」はなすべき方法、手段。

「吾(わ)」は一人称。

「駆る(かる)」は馬や車を駆けさせる、走らせる。

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