第8首 カバ

山井やまゐかば

水漬みづなかばに

かば

されどいうなり

なほはかばかし


【現代語訳】


山の水場に行けば、水浴び真っ最中のカバさんがいたりして

そこで飽き飽きする話を聞かされたりすれば、私はそそくさと立ち去るんだけど、その時もいつも何か言ってるのが聞こえてきて……

そんなカバさんだけど本当は上品で心優しくて、やっぱり頼りになるフレンズなんだ


【解説】

「山井(やまゐ)」は山の中に雨水がたまって井戸になったもの。古語における「井」は掘り抜き井戸だけでなく、川や池から水を汲む場所も指す。

「ば」は接続助詞。「行く」の未然形「行か」に付いているので、順接の仮定条件を表す。「聞かば」も同様。

「漬く(つく)」は(水などに)浸かる。「水漬く(みづく)」で水に漬かる。

「半ば(なかば)」は半分、真ん中、真っただ中。

「に」は格助詞で、ここでは時、場合を表す。

「倦む(うむ)」は嫌になる、飽きる。


なお上の句は軍歌「海行かば」の元になった大伴家持の歌「海行かば 水漬く屍 山行かば……」の本歌取りである。


「されどいうなり」は掛詞で「去れど言うなり」および「然れど優なり」。

「去れど」の「ど」は接続助詞で、ここでは逆接の恒常条件「〜でも、いつも」。

「然れど(されど)」は接続詞で、けれども、しかし。

「言うなり(一般的な表記は『言ふなり』)」の「なり」は伝聞・推定の助動詞で、ここでは「(声・音が)する。聞こえる」という意味。

「優なり(いうなり)」は形容動詞で、立派だ、上品だ、健気だ、優しい等の意。

「尚(なほ)」は副詞で、やはり、依然として、それでもやはり。

「はかばかし」はしっかりしている、てきぱきしている、頼りになる等の意。

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