第15話たとえそうだとしても

前回までのあらすじ︰朔のハイスペックさに感服。


「あれ?そういや祐と祐鶴さんってどういう関係?」

朔が聞いてきた。

「ちーちゃんの本名は白石祐鶴。で、僕のいとこ。9年前にあの大通りで事故に遭って亡くなってる。・・・僕が小さい頃いつも家に来てくれてたんだ。まぁ、そんな感じ?」

僕が言うと、朔はうーんとうなり出す。

「祐鶴さんが乗っとった理由はわかった。けどさ、それなら幽体でも行けるんじゃない?って思っちゃうんだよな。・・・それと、祐はいいの?祐にとっても最初で最後の中二の修学旅行だよ?」

「うん、わかってる。でもね、」

「でもね、じゃなくて、お前は行きたいのかどうかを聞いてんの」

朔が僕の言葉を遮る。

行きたい気持ちは無くはない。けれど、ちーちゃんはそれが心残りで9年もずっとひとりだった。もしそれが僕だったら、なんて考えるだけでも嫌だから。

だから、たとえ僕が行けなくても、ちーちゃんの心残りが無くなるのであれば。僕が我慢することでちーちゃんが笑顔になれるのなら。

だったら、僕は行かなくていい。

「僕は、別に、どっちでも構わないよ」

これを聞いて朔はまたうなった。

部屋に沈黙が訪れる。

この沈黙をやぶったのは、これまでずっと黙っていた巧だった。

「何話してんのか全然わかんねーけどさ。もうみんなで行っちゃえば良くね?それじゃダメな理由でもあんの?」

「いやまぁそうだけど、どっちが幽体で行くかって話。俺的には、やっぱり祐は祐の体で行くべきだと思うんだけど」

「ねぇ、ゆーくん。わ、私、やっぱ戻るよ。だから・・・ついていっても、いいかな・・・?」

ちーちゃんが小声で言った。

「・・・そっか。わかった。いいよ」

何やら言い争ってる巧と朔を無視して、僕は返事をする。

「じゃあ」

「ちーちゃんが、そういうなら」

「僕」が壁に寄りかかって目を閉じる。数秒後、僕の幽体が現れる。

「ごめんねゆーくん。ほんとに、ごめんね」

ちーちゃんは涙をこぼした。僕は、ちーちゃんをそっと抱きしめる。

触れることが出来るのはこれが最後かもしれない。

いつの間にか、僕の意識は「僕」の中にあった。

まぶたを持ち上げる。

「(自分の体って意外と重いんだな・・・)あっ」

つい声に出して驚いてしまった。

だって、ちーちゃんが視えるから。

「ちーちゃん?」

「ゆーくん、まだ視えてるの?」

どうやら僕はそういうのが視える体質になってしまったらしい。

「私、明日の準備、しにいくね」

「明日の朝5時、ここだから」

「うん」

ちーちゃんに手を振る。

「祐?」

「何?朔。・・・あ、腹へった?おかし食う?」

そう言って立ち上がる。・・・座る。

「どした?」

「筋肉痛やばい・・・ちーちゃんこんななのに僕の中に居ようとしたのか・・・さすがというべきか・・・」

この筋肉痛が修学旅行中も続くと考えると・・・・・・。やっぱ行かなくてもいいかもしれない。


(つづく・・・)

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