第14話やっぱり

前回までのあらすじ︰大切なひとのこと忘れてたってやばいよねw


私はうつむきながら廊下を歩いていた。涙をこらえるのが大変だ。涙を二人に見られる訳にはいかないから、昇降口に戻るまでにはなんとかしないと。

私自身、やってはいけないことをしたことくらい、わかっていた。ゆーくんにとっても最初で最後の中学校の修学旅行だ。行きたかったに決まってる。

「(なのに・・・どうして)」

どうして私を許すのか。なんで「行きたかった」の一言も言わなかったのか。なぜいつも自分の気持ちを殺すのか。

そんなこと考えるなら、強制的に体を返せばいいって考えるだろう。でも、本人にその気が全くなかったら、どうしようもない。それに、私に「いってらっしゃい」って言ってくれたから、その言葉に素直に従おうと思った。

「祐」

朔真たちが、昇降口で待っていた。

「お待たせ」

私は巧磨から手さげカバンを受け取ろうとした。すると巧磨が、

「いや、これくらい持つから」

と言うので、持ってもらうことにした。

「祐。ひとつだけ、変なこと聞いてもいい?」

朔真が、真面目な顔で聞いてきた。

「ん?なに?」

「いや、・・・俺の勘違いならすごく申し訳ないんだけどさ」

「うん」

「最近、祐が祐じゃない気がしてて・・・。俺の勘違いだよな?」

え・・・。いつ、ばれた?私は、しくじってないはず。

「なんで、そういうこと聞くの?」


ベランダに出て、帰る三人を眺めてたら、朔がとんでもないことを言い出した。昔から鋭いなって思うところはあったけど、まさか、ちーちゃんに気づくなんて。

「まじかよ・・・」

僕は部室からとびだした。


まずいことになった。

この状況を説明しても、きっと信じてもらえない。

私はどうしたら・・・

「ちーちゃん」

そう呼ぶ声が聞こえて、ばっと後ろを向く。

「私」が視えた。・・・さっきは、視えなかったのに。

「ひとつ、いいこと思いついたんだ。・・・そのためには、巧と朔にも話さなくちゃいけないんだけど・・・」

そう、ゆーくんは言った。

「・・・そうだね」

気づかれてしまった以上、もう隠し通せない。全部、説明しなくちゃ。

「全部、話すから・・・。あとで、僕の家に来てくれるかな」

「わかった」

朔真はそう言ったが、巧磨は何も理解していないようだった。


そう言えば飛び出して来ちゃったけど、あの部室に引き戻される、みたいなことはないらしい。

朔の鋭さにはお手上げだ。ていうか、さすがの観察眼と言うべきかも。

朔は霊感が強いから、僕のことが視えてなくても、感じてはいるはず。ていうか声は聞こえたのだろうか。

「祐は、なんで受け入れてるの?この状況」

おそらくちーちゃんに問いかけたであろう問いに、ダメ元で答えてみる。

「いやー・・・最初はびっくりしたけど・・・。理由知らないから怒れないっていうか、理由を知ってから考えようと思っただけ。・・・うん」

「・・・そっか」

ん?聞こえてたのかな??

それから家まで、誰も話さなかった。


僕の部屋に全員集まった。

巧には悪いけど、僕と朔とちーちゃんの三人で話を進める。

要点を整理するけど、祐の体を乗っ取るために祐鶴さんが事故を仕組み、幽体離脱させて、幽体の意識をとりかえっこして・・・あ、祐が祐鶴さんの幽体の中にいるのはイレギュラーなんだっけ?で、祐の幽体に入った祐鶴さんは病院にいた祐の体に戻り、それからは俺たちが知る通り、と」

「うん、そんな感じ」

僕が言うと、朔はため息をつき、

「やっぱりおかしいと思ってたんだよなあ」

と呟いた。やっぱり朔すごすぎる。


(つづく・・・)

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