第11話新聞記事

前回までのあらすじ︰修学旅行まであと5日。(月曜時点)


翌日、僕は例のファイルを見ていた。

1番新しい記事から。

理由は、なぜだか怖かったから。祐鶴ちゃんに何があったのかをちゃんと知ることが。

修学旅行は今週末の土、日、月曜日。火、水は振替休日となっている。

金曜日までには知りたいと思う。祐鶴ちゃんが修学旅行に行ってしまう前に。

僕は二つ目、去年のファイルを取り出した。


今日は、1日学校にいられることになった。

病院の先生に、今日までは車いすで行動するように、と言われている。

「おはよう」

私はいつもの待ち合わせ場所にいた。早めに行ったと思ったのに、巧磨も朔真もいるからびっくりだ。

「おはよう。二人とも早いね」

私が声をかけると、二人ともまぁなと言った。

「(今日は昼休み、新聞部の部室行ってみようかな・・・)」

もしかしたら、っていう期待がまだ自分の中にあった。


過去の新聞記事を眺めるのは楽しい。こんなことあったんだ、とか、そういえばあったなぁ、なんて考えられるから。

・・・ただ、読めば読むほどその時が近づいてくる。でも、理由は知らなきゃいけないと思う。祐鶴ちゃんが理由もなしに事故を仕組んだとは思えない。・・・いや、思いたくないんだ。


今日一日、いろいろやることが多くて結局部室には行けなかった。休み時間はこれまでの授業のノートを写したり、修学旅行の説明を聞いたり忙しかった。

忙しいということは、ずっと独りだった私にとっては、とても幸せに感じた。すごい充実していた。楽しかった。

それに、もう少しで修学旅行だ。


そんな充実した毎日が過ぎ、修学旅行は明日となった。


金曜日の朝。

私は巧磨と朔真と一緒に、歩いて登校していた。

明日は、待ちに待った修学旅行。いつも冷静な朔真でさえ、今日はちょっとそわそわしていた。巧磨は昨日から修学旅行の話しかしていなかった。

「じゃ、今日は部活ないから。また放課後」

「おう。またなー」

二人とわかれ、教室に入る。

教室でも、話題はどこも修学旅行だ。

キーンコーンカーンコーン

朝の会が始まるチャイムが鳴った。


僕は、そこに書いてある事実から目を背けていた。

昨日の夕方、ついにたどり着いてしまった9年前、4月16日の記事。

一瞬だけちらっと見て、これか、と思ったときには閉じていた。

それを信じたくなかった。

新聞記事をもう一度、今度はしっかり読む。

内容をざっくり要約すると、こんな感じ。


4月16日にさくら通り(あの通りの名)で事故があった。被害者は、白石祐鶴さん(14) 信号無視をした車にはねられた。車は逃亡。当時、近くの消防署の救急車は出動していて、すぐに手当てができず、そのまま亡くなった。


消防署に救急車がいなかった、ということ以外は、僕の事故と同じだった。

・・・それよりも、僕が信じたくなかったのは、祐鶴ちゃんの名字と写真。何で今まで気づかなかったんだ。

僕は、彼女のことを知っていた。・・・これを見て思い出した、というべきだろうか。


今から10年くらい前のことだ。


(つづく・・・)

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