第6話そうだ、病院行こう。

前回までのあらすじ︰祐鶴ちゃんの赤い眼も嫌いじゃないかも(なんて誰にも言えない)



※今回から、視点がバラバラになります。一人称で、誰の視点なのかを判断して下さい( *・ω・)*_ _))ペコリン



放課後。オレは、4組の前で朔真を待っていた。

母さんには、さっきメールで帰りがけに祐眞のお見舞いに行くことは告げたから、帰りが遅くなっても大丈夫だ。(※授業中以外の、携帯電話、スマートフォンの持ち込み、使用可。[校則より引用])

「巧」

スマホをいじっていたら、声をかけられた。いつの間にか帰りの会が終わっていたらしい。

「じゃあ、行くか」

ポケットにスマホを入れ、二人で廊下を歩き出す。

騒がしい廊下を抜け、昇降口を出て、いつもの帰り道からはずれて大通りに出る。

そして、祐眞が入院している、桜坂総合病院に向かう。

祐眞は、新学期が始まってから1週間くらいたった時に、交通事故に遭った。信号無視をした車にはねられた。その車はかなりのスピードだったらしい。

だから、事故現場がたまたま消防署の近くだったのも、総合病院の近くの大通りだった、というのも偶然であって、一命をとりとめたのも奇跡だったそうだ。

でも、なぜだかその事故が意図的だったんじゃないかと疑ってしまう。「たまたま」が多過ぎて。


トントン とドアをノックして、病室に入る。

「失礼します」

「失礼しまーす」

もちろん返事はない。

オレたちはいすを用意して、腰掛けた。

「確か、前に来たのは2週間前だっけ」

朔真が、ぼそっと呟いた。


私は今、祐眞の幽体を乗っとって、病院に向かっている。

「ついに、また生きられる!」

つい、声に出して言ってしまった。仕方ない、それくらい嬉しいことなんだから!

病室の壁をすり抜けて入ると、祐眞の幼なじみの三谷巧磨と暦朔真がいた。

二人を無視して、祐眞の体に入り込む。

馴染んでくると、体の感覚がわかるようになってくる。

「ん・・・」

そっと、まぶたを持ち上げる。


「祐?」

朔真がそう言ったので、オレは反射で顔をあげた。

「どうした?・・・祐眞!」

祐眞が目を覚ましていた。

ただ、まだ意識がぼんやりしているらしく、虚ろな目を空中に向けている。

「祐・・・聞こえる?」

何度か呼びかけると、

「た、く・・・?さ・・・く?」

祐眞が言った。

オレと朔真は顔を見合わせて大きく頷いた。

「オレ、先生呼んでくる」

「わかった」

病室を出て、ナースステーションまで急いで向かう。

向かう途中で、ナースコール使えばよかったなと後悔したが、もう来てしまったので仕方がない。

顔なじみになった看護師さんを呼ぶ。

「巧磨くん、どうしたの?」

「祐眞が、目を覚ましました!」

それを聞いた看護師さんは、オレに

「病室にいてあげて」

と言うと、すぐにどこかに連絡を入れ、後ろでいろいろ準備し始めた。

オレは病室に戻った。

「さく、いま、いつ?」

戻ると、祐眞が朔真に質問をしているところだった。

「今?今は、5月10日の水曜日だよ」

「じゃ、あ・・・しゅうがくりょこう、まに あうかな・・・?」

桜実中は6月の頭に修学旅行なので、祐眞の頑張り次第で行けるだろう。

「うん。祐が頑張れば、行けるよ」

と朔真が言ったら、祐眞は安心したような表情を見せた。


(つづく・・・)

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