第5話真実

前回までのあらすじ︰担任に無視されてます((汗


昼休み、廊下で巧と朔が話しているところを見つけた。

「朔真さ、今日部活あるか?」

「今日は無いよ。水曜日課だし」

別に、普通の会話だった。聞かなくてもいいかな、とそばを通り過ぎようとした時だった。

「じゃあさ、病院行かない?」

巧がぽつりと言う。なんで・・・?何のために?

「・・・うん。いいよ。ここ最近祐のお見舞い行けてなかったもんね」

朔が答えた。

それを聞いた僕は、色んなことが頭の中を駆け巡って、軽いパニック状態に陥っていた。

「(僕の、お見舞い・・・?何言ってんだよ朔っ、僕は・・・、ここ、に・・・)」

否定したがる僕の感情とは裏腹に、脳は冷静に分析し続ける。

仮に、僕が幽体離脱的なことをしているのなら、先生が反応しないのも普通だ。幽体になったから祐鶴ちゃんが視えるようになった、というのも頷ける。

じゃあ、登下校中に巧や朔と話したのはなんだったんだ?夢なのか?それとも僕の妄想・・・?

もう訳が分らない。

頭の中は感情と思考がぐるぐるに入り交じって、深く考えられない。

・・・あれ、そもそも、登下校中に何話したんだっけ・・・。

これまでの記憶が、シャボン玉みたいに、はじけて消えていく。

「なんで・・・っ?なんで思い出せないっ?」

僕は廊下に膝をつき、泣きながら叫んでいた。

ここ最近の記憶が消えていくにつれ、進級してからの記憶が次第に鮮やかになってくる。

僕は泣きながら新聞部の部室に向かった。

全ての記憶が消えてしまう前に、祐鶴ちゃんの顔が見ておきたかった。

部室には、いつもの席でいつもどおり、学級日誌を書く祐鶴ちゃんがいた。

「祐鶴ちゃん」

僕が呼ぶと、いつもどおり、祐鶴ちゃんはゆっくり顔をあげ、いつもの笑顔で、

「どうしたんですか、祐眞くん」

と言った。

でもすべてがいつもどおりということではなかった。

祐鶴ちゃんは、目が赤かった。いつもは綺麗な夕日色なのに。

「あーあ。もうちょっとだったのにね。気づいちゃったか。・・・ま、別にいいかな」

急に口調を変えた祐鶴ちゃんが、立ち上がって近づいてくる。

「ち、祐鶴ちゃん・・・?」

うつむき、歩いてくる祐鶴ちゃんは、どんな顔をしているのか分からない。でも、赤く光る二つの眼はとても恐ろしかった。

「私が祐眞くんを幽体離脱させたんだ。目的は、もちろん――」

祐鶴ちゃんの手が、僕の胸に触れた。

瞬間、目の前が真っ黒に染まった。

「・・・乗っ取るためだよ?」

祐鶴ちゃんの声が遠くで聞こえたような気がした。


(つづく・・・)

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