第3話締切り
前回までのあらすじ︰電気つけたのに幽霊は視えた。
「いってきまーす」
翌日、僕は、いつもじゃありえないほど早く家を出ていた。
前方に巧と朔が見えた。
「巧ー、朔ー、おはよー!」
走りながら呼ぶと、二人は振り返って会釈してくれた。
「今日、何かあんのか?」
巧が聞いてきた。
「・・・ん、あ、ああ。昨日さ、取りに行った原稿あるだろ?あれが終わんなくてさー、学校でやろうと思って!」
少し慌てていうと、朔が、
「違うでしょ?きっと誰かと約束してるんだよ、祐は」
と言った。・・・なんでわかるんだよ・・・。
質問攻めされるも、何とか祐鶴ちゃんの事を話さずに乗り切った僕は、活動場所に向かった二人と別れて教室に向かった。
自分の席にかばんを置いて、必要なものを取り出す。
新聞部の部室に行く。
扉を閉めて、電気をつけた。カーテンが閉まっていたので部屋の中が明るくなる。
「祐眞くん、おはようございます」
「・・・!祐鶴ちゃん、おはよう」
改めて祐鶴ちゃんを見ると、確かに透けていた。上の方は結構はっきりしてるけど、足元は床が見えるくらいは透明度が高い。やっぱ幽霊なんだ、と実感させられる。
僕は祐鶴ちゃんの前の席に原稿とかを置いて、いすを反対向きにして座った。
「今は何書いてたの?」
僕が聞くと、祐鶴ちゃんは、
「明日の新聞です」
と答えた。
僕はじゃまするのは悪いなと思いつつ、でも作業しているところが見ていたいと思ったので、机を向かい合わせにくっつけた。
昨日の夜に、文章のほうは仕上げてしまったので、あとは表紙と裏表紙だけだ。
これは巧と朔にも言っていない事だが、自分で言えるくらい、僕は絵がうまいと思っている。(きっと朔は知ってる)
先生はそのことを知っているので(というかバレたに近い)、今回、名前は出さないという条件付きで描いてと頼まれたのだ。
昨日のうちに大体の構図は決めてあるので、シャーペンで下書きをしていく。
「ええっと・・・モノクロコピーだから、薄いのか濃いのかをはっきりさせて・・・と」
下書きが完成してから、自分の絵を描くときのクセである独り言が出てしまっていたことに気づいた。遅い。
「ご、ごめん、祐鶴ちゃん。その、今のは、クセで・・・」
慌てて言い訳すると、祐鶴ちゃんはくすりと笑って、
「大丈夫だよ」
と言った。
「おわったあああぁぁ」
伸びをしながら言う。
ちょうど朝練も終わる時刻だった。
「じゃあ、また放課後」
「はい、またあとで」
職員室まで持ってかなきゃだと思いつつ、一度教室に戻ると、クラスメイト数名と先生(顧問)がいた。ラッキー。
かといって、ここで渡すといろいろカミングアウトすることになるので、先生を、1組の隣の授業準備室に呼ぶ。(今さらだけど、僕は1組、巧が2組、朔は4組で2学年は6組まである)
「終わりましたよ、先生」
渡して、先生にOKを貰って、教室に戻る。
このときはまだ、僕は自分の事が分かっていなかったんだ。
(つづく・・・)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます