第2話

部屋に入ったところで2人はそっと抱き合ってキスをした。

恋人同士と言ってよいようなキス。

少し強く唇を押し付け合って、お互いの感触を確かめるようなキス。

10秒か20秒くらいの、短くはないキス。


唇を離してあやかの背中をぎゅっと抱きしめた。

胸の中であやかが囁く


「みちくん。みちくんは今日、あやかのいうことをきくんですよ。

あやかはせんせーだから。みちくんは生徒。逆らったらせんせー、怒ります」


目を見て言えるセリフなんじゃないんだろう。身体に力を込めて言っていた。勇気を絞り出すように。


俺は、はい、とい返事をする代わりに、ジーパンの股の部分をあやかの腰に押し当てた

「せんせえ、、、」


あやかは俺の腕の中で身体を動かし、左手で俺の硬くなった部分を確かめるように触ると、顔を上げて、今度はまっすぐに俺の目を見つめて言った。

「おいで、、、」

臆病なあやかの眼の奥から、イタズラなせんせーが顔を出しながら、俺をソファへと誘った。




灰皿とライターとホテルの案内が乗った小さなガラステーブルを挟んで向かい合って座った。

あやかが2人用のソファへ。俺は一人がけのソファへ座るように言われた。


有線のクラシック音楽が小さく聞こえ、あやかはベッドまで行き部屋の明かりを少し暗くした。

コツリ、コツリ、と音が響く。

あやかは靴を脱いでいない。

俺はスリッパに履き替えていたが、2人の間にそれは大きな問題ではなかった。どちらかと言えば大切な問題であり、ただそれだけのことでも俺は、心拍数が2割ほど速くなっていた


2人がけのソファにあやかが戻って座る


「みちくん」

「はい」

「質問があります」


ぎこちない。


「はい。。。」


「あ。イヤだったら答えなくていいの。」


くすり、と俺は笑う。

せんせーがどこかへ隠れて、あやかが現れたのだ

気にしないようにして答える


「せんせーに質問されてそれに答えなければ、成績が悪くなるんでしょう?」

気弱なみちくんを呼び出した


「そ、そうです。だから、答えたくないなら、答えなくてもいいんですよ」

少し、落ち着いた瞳になった。


「は、はい、、、」

ひざを閉じ、両手を膝に置いて背筋を伸ばして先生の質問を待った


「えと、、、

一番最近したのは、

いつですか?」


「え。。な、なにをですか、、、?」


怯えた目をして答える

あやかはさらりと言った。


「オナニー。」


「えっ。。。」


「オナニーよ。してるでしょ?いつ?」


「いや、あの、、、え、、、」


あやかの鼻をため息が通ったのが見えた。

それくらいのこと、間髪入れずに答えてよ。と苛ついていたように見えた。

いらついたのはあやかだろうか、せんせいだろうか、はかりかねた俺は、怯えながら答える


「き、昨日です。。。」


「は?」


「え?あの、、、きの、う、です。。。」


「あー。そう。昨日、きのうね。」


デートの前の日なのにオナニーするんだ、溜めておくんじゃないんだ、とでも言いたそうだった。


「気持ちよかった?」


「あの、えと、、はい、、」


「そう。たくさんでた?」


「はい、いえ、いや、あの、ふつう?でした」


「ふうん。。。」


「エーブイとか見たの?」


「ええ、はい。」

これは嘘だ。ケータイの画面であやかの写真をめくりながら、お気に入りの写真の1枚でイッたのだ。

私服姿の、ミニスカートを履いた写真だった。エロ的要素のない写真だったが、だからこそリアルにあやかを想像できて、コーフンしたのだ

とはいえ、さすがにそれは言えなかった


「ふぅん、そう。やらしいんだね、きみは」


きみ。とよばれた。

ソファの上で閉じられた太ももの間、おちんちんがぴくり、と反応した。


「す、すみません」


「謝らなくていいよぉ。フツーするでしょ。でも、、、」


「、、、でも、、、?」


おそるおそる、聞いた


「どーやったのか教えて。」


「ど、、、、?」

質問にならなかった


再び先生が言った。

「どーやってオナニーしたのか、私に見せて教えて。」


いつの間にか先生は、肘掛けに右手の肘を置き、スラリと伸びた腕の先、手の甲に顎をのせ、身体をななめにもたれかけながら俺の方を見つめていた。

その口元には笑みはなかった

眼が、細く鋭い光を携えているように見えた。


先生の目から視線をそらすことなく、俺は無言でベルトを外し、ジーパンをその場に脱ぎ捨てた、


色気のないトランクスが膨らんでいた。脱ぎ捨てた


先生は顔色を変えず、まゆを動かすことなく、つまりは当然の成り行きを見守るように俺の下半身を眺めていた。

見つめてはいなかった。

ただ散漫と、俺がオナニーを始めるのを待っているように見えた。

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